ピックアップトラック その余生
アプローチは標高430mからとなる。
3月中旬、植生も疎らな時期を狙ってアタックする。
しばらく進むとピックアップトラックの廃車体がある。
ダットラ620系を改造した巻上機だ。
巻上機(ウインチ)は本来、専用の電動機・減速機・ドラムで構成される。
しかしここでは、ピックアップトラックのエンジンを動力源として
荷物・資材を斜面上げするための簡易巻上機として使ったと推定できる。
つまり「車のエンジン → 回転 → ドラムを回す」という構造に魔改造した訳だ。
ピックアップトラックは“PTOが取れない車種”である可能性が高い。
ダットサントラック(Datsun Truck)は小型商用車でFR(後輪駆動)、
シンプルなプロペラシャフト構造で、トランスミッションにPTO(Power Take-Off)を装備していない。
PTOとは車両のエンジン回転を外部機器へ取り出すための動力取り出し装置のこと。
ダンプやクレーン車などにはミッション側面にPTOポートがあり、
ギアで動力を取り出して外部機器を駆動する。
しかしダットラは一般商用車であり、PTOポートを持たない。
つまり純正のPTOを使った巻上機化は不可能である。
PTOがない車を巻上機にする場合、
この車両では後輪ハブにドラムを取り付ける(簡易ウインチ方式)が採用されたようだ。
後輪を外し、ハブにドラムを固定、ギアを入れるとドラムが回る。
いわゆる自作ウインチのような形式で、
本来は後輪を回すべき回転を、後輪の代わりに取り付けたドラムを回すことでワイヤーを巻き取る構造。
サニートラックはFRなので、エンジン → ミッション → プロペラシャフト → デフ → 後軸 → ドラムという“
純正の駆動系”をそのまま巻上機に転用している形だ。
巻上機としての操作系、運転席はほぼそのまま残り、
キーON → ギア選択(1速固定またはバックギヤ) → アクセル操作で巻上速度を調整。
サイドブレーキは巻上停止時の補助として使われた可能性が高い。
減速機や小型の巻上機も散乱する。
木材を集め、積み上げる作業(椪積=はいずみ)か
集材用の機械の可能性もある。
付近には架台のような部材もある。
恐らくドラムから出たワイヤーを方向転換させるための、
滑車(シーブ)を装備する機構かキャブスタンの台座かもしれない。
マウスon 椪積
巻上機には単胴と複胴の2種類がある。
単胴式はドラムが1つ、モーター→減速機→ドラムが直結しており、
荷物は上下動のみで、構造的に軽量・簡易で林業・土木の単純作業向けとなる。
複胴式はドラムが2つ(主巻・補巻)で、原動機→クラッチ→2ドラムへ動力分配される。
主巻は荷の巻上げを行い、補巻はブーム角度調整などを司る。
デリッククレーンや台船など、複合動作が必要な現場向けの機械となる。
少し下ると別の車両が朽ちている。
こちらも巻上機のようで、
サニートラック(GB120型)のようだ。
こちらはプロペラシャフトにドラムを直結するタイプのようだ。
後輪駆動のプロペラシャフトを外し、そこに自作のドラムを接続。
車をジャッキアップして後輪を浮かせ、ギアを入れるとドラムが回る。
後輪駆動のプロペラシャフトを途中で切断し、
デフ側ではなくミッション側のフランジに
自作ドラムを接続しているのかもしれない。
またはエンジン後端(フライホイールハウジング付近)に補助プーリーを設置、
またはミッション出力軸(プロペラシャフト接続部)に小径プーリーを追加し、
ここからVベルトまたは平ベルトで巻上ドラム側の大径プーリーへ
動力を伝達している可能性もある。
「簡易巻上機」として使うために、
ここまで走行してきたうえで、山中で簡易ウインチに改造し、
荷揚げに使った可能性が高いと思われる。
サニートラックはPTOを持たない。
ギア比が高すぎてトルク不足、ドラム回転が速すぎることから、
間に減速機を用いたのかもしれない。
車体はほぼ固定され、動かない“据え置き機械”扱いのようだ。
前輪・後輪ともに一部ジャッキアップされ、
ワイヤーで地盤や樹木にアンカー固定している可能性が高い。
巻上機は、「回転によって荷を動かす」という単純な原理から出発し、
林業・土木・鉱山の現場で形を変えながら発展してきた。
この山中の装置はその系譜の中で、
林業的発想と鉱山的技術が交差した貴重な遺構である。
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