・遍歴
 1980年に「DISCOVER JAPAN」スタンプ10周年となるにあたり、新形式のスタンプ置き換えることとなり、「大きさは約7cmとする」、「今までのスタンプのように駅名と絵だけではなく、形状・色彩のパターン化によりゲーム性を付加し、コレクション興味を付加する」、「設置時期は10月1日」、「9月よりスタンプノートを発売する」とする企画がされた。 (つまり、スタンプを押すことが主体の企画)
 10月16日に「わたしの旅」スタンプの全国741駅の設置をプレス発表し、11月1日より「わたしの旅」スタンプが登場した(四国総局のみ8月など、一部は先行登場)。
同時に『「わたしの旅」スタンプ設置駅一覧』が日本交通公社の時刻表1980年11月号より1984年3月号まで掲載された。
また、弘済出版社のスタンプノートは、1ページに2駅分を押すことができるサイズの「わたしの旅」スタンプノートとして生まれ変わり、「Stamp Map」が改訂初版(昭和56年3月1日発行)から第24版(平成2年5月20日発行)まで掲載された。
スタンプ自体は廃止、紛失、更新が続く中でJR移行後の現在も活躍中のもある。また、人気があるのか後にこの形式を模したスタンプも数多く出ている。

・定義
1. スタンプの形は円形、四角形、五角形、六角形の四種類からなる。
2. スタンプのインクの色は黒、の三種類である。
3. スタンプの形と色の組み合わせにより、計12種類のスタンプに分類され、それぞれに意味を持つ。
4. スタンプは2本の枠があり、細い内枠の中に図柄が描かれ、内枠と太い外枠の間には、上にはシンボルフレーズ、下に路線名と駅名が記されており、その間を記号が埋めている。

・標準形式の特徴
I. シンボルフレーズ
 シンボルフレーズとはスタンプ上部に位置する図柄のテーマ及び説明にあたる。時刻表'80.11によると「駅や市町村が名乗った駅や町のシンボルフレーズ」とされている。主に○○の駅、○○のある駅というように『駅』という言葉で結ぶものが用いられる。駅に次いで多いのが『まち(街、町)』で結ぶもので、他に『地』、『ふるさと』などというのもある。
 書体は主に縦が太めの明朝体が使用されているが、一部例外もある。

II. 図柄
 特別、記述することは無いが、全国一括にデザインされたものでなく、各地(管理局ごと)様々なデザインが存在する。

III. 記号
 左右対称に上のシンボルフレーズと下の路線名・駅名の間を埋める記号で、主に★が使用されており、左右共に外側・上に傾いている。これも一部例外がある。

VI. 路線名・駅名
 スタンプ下部に記されている文字で、書体は丸ゴシック体である。丸ゴシック体と言っても全てが同一ではなく、更新時に微妙に異なるものもある。そして路線名は国鉄(現JR)の正式名称が付記されている。尚、路線名と駅名の間には「・」が入る。これらにも一部例外がある。

V. 形状と色と意味
 前述の通り、わたしの旅形式のスタンプには4つの形状と3つの色の組み合わせにより、計12種類のシンボルフレーズに適った意味を持つ。以下にまとめる。
形 状スタンプの意味
円 形自然の景色
円 形動物・植物
円 形温泉
四角形史跡、文化財
四角形近代的建造物、文化施設
四角形伝統工芸、特産品
形 状スタンプの意味
五角形詩歌、文学、伝統、作家
五角形風俗、祭、行事
五角形味覚
六角形国鉄No.1
六角形レジャー、スポーツ
六角形産業

・独自形式について(形式名は仮称)

a 釧路鉄道管理局形式
 釧路鉄道管理局館内であった根室本線の富良野駅以外の全駅と釧網本線。池北線(現北海道ちほく高原鉄道)。士幌線、広尾線、標津線(既に廃止)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体である明朝体が若干細く、記号の★が十字形をしていることとシンボルフレーズに句点が見られるが多いことが挙げられる。
斜里駅

b 青函船舶鉄道管理局形式
 青函船舶鉄道管理局内であった長万部以南の函館本線、江差線。松前線、瀬棚線(既に廃止)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が路線名等と同じ細丸ゴシック体で、図柄の一部が内枠を飛び出ており(そうでないのもある)、記号の★が若干小さいことが挙げられる。
江差駅

c 秋田鉄道管理局形式
 秋田鉄道管理局内であった奥羽本線、長井線(現山形鉄道)、田沢湖線、男鹿線、五能線、そして羽越本線の象潟と羽後本荘。矢島線(現由利高原鉄道)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が細めの特殊な明朝体で、路線名等も特殊な丸ゴシック体であること。図柄はシンプルな線画中心の物でベタとなるようなところが見られないということ挙げられる。
長井駅

d 仙台鉄道管理局形式
 仙台鉄道管理局内であった東北本線二本松駅から石越駅、磐越西線喜多方駅と会津若松駅、仙山線、仙石線、石巻線石巻駅、陸羽東線古川駅に設置。
 特徴としてはシンボルフレーズの書体である明朝体が若干細く、路線名等がゴシック体であることが挙げられる。
会津若松駅

e 千葉鉄道管理局形式
 千葉鉄道管理局館内であった馬喰町駅を除く総武本線、内房線、外房線、成田線、鹿島線に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が路線名等の書体と同じ丸ゴシック体であることが挙げられる。
旭駅

f 東京西鉄道管理局形式
 中央本線の東京西鉄道管理局内であった御茶ノ水駅から竜王駅に設置。
 特徴は路線名が正式名称の中央本線ではなく、中央線と表記されていることが挙げられる。
相模湖駅

g 静岡鉄道管理局形式
 静岡鉄道管理局内であった東海道本線三島駅から豊橋駅、御殿場線、身延線、飯田線に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が楷書体、路線名が隷書体?、駅名が標準とは若干異なる丸ゴシック体で、下の文字が両横の枠間から外向きに記されていること。また、★は初期は手書き調であった。図柄は線や絵の感じが奥羽方式に似ているが、こちらはベタや手の込んだところが見られることが挙げられる。
豊川駅

h 長野鉄道管理局形式
 長野鉄道管理局内であった中央本線小淵沢駅(これは東京西鉄道管理局管内)から南木曾駅、信越本線(一部、現しなの鉄道)小諸駅から黒姫駅、篠ノ井線、大糸線、飯山線に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が路線名等と同じ丸ゴシック体で、下の文字が両横の枠間から記されていること。しかし千葉方式と異なり全て下向きである。また、長野駅、松本駅、十日町駅のものは★の代わりに●であることが挙げられる。
十日町駅

i 金沢鉄道管理局形式
 金沢鉄道管理局内であった北陸本線、小浜線、越美北線、七尾線(一部、現のと鉄道七尾線)。能登線(現のと鉄道能登線)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が奥羽方式に似たの明朝体、路線名等が特殊な丸ゴシック体で、図柄は切れがちな線を主体としたシンプルなものであること。また、記号が★ではなく、例えば長浜駅では魚、金沢駅では前田家の家紋のように何かに因んだ記号であることが挙げられる。
長浜駅

j 天王寺鉄道管理局形式
 天王寺鉄道管理局内であった関西本線亀山駅から湊町駅、奈良線、桜井線、和歌山線、阪和線、紀勢本線、参宮線に設置。
 特徴として図柄の線に特徴があることで、いずれの絵も雰囲気が似ていることが挙げられる。
笠置駅
 JR移行直後、JR西日本の元天王寺鉄道管理局内の主要駅では、図柄がJRマークのみのものが登場した。 串本駅

k 福知山鉄道管理局形式
 福知山鉄道管理局内であった福知山線相野駅から福知山駅、山陰本線亀岡駅から浜坂駅、舞鶴線、宮津線(現北近畿タンゴ鉄道)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が太めの特殊な明朝体、図柄は太い線で描かれていることが挙げられる。
東舞鶴駅
 JR後は同管理局の流れを汲むJR西日本福知山支社が'90年よりほとんどのスタンプがインク台不要の浸透式方式と化し、小型化された。 東舞鶴駅(浸透式方式)

l 門司鉄道管理局形式
 門司鉄道管理局(後の九州総局本局)内であった鹿児島本線門司港駅から久留米駅、香椎線、篠栗線、長崎本線、唐津線、筑肥線、佐世保線、日田彦山線、筑豊本線。松浦線(現松浦鉄道)に設置。
 特徴として図柄がコントラストの大きい(陰の部分がベタである)ことが挙げられる。
博多駅

m 大分鉄道管理局形式
 大分鉄道管理局内であった日豊本線宇島駅から高鍋駅、久大本線天ヶ瀬駅から湯平駅。高千穂線(現高千穂鉄道)に設置。
 特徴として路線名と駅名の間に「・」が無いことが挙げられる。
高千穂駅

n 熊本鉄道管理局形式
  熊本鉄道管理局内であった鹿児島本線羽犬塚駅から水俣駅、三角線、肥薩線大坂間(現球泉洞)駅から真幸駅、豊肥本線水前寺駅から波野駅。高森線(現南阿蘇高原鉄道)、黒木線(既に廃止)に設置。
 特徴として福知山形式と同様に図柄の線が太く豪快で、水や陰は右上からの細い斜め線で描かれていることが挙げられる。
熊本駅

o 鹿児島鉄道管理局形式
 鹿児島鉄道管理局内であった鹿児島本線出水駅から鹿児島駅、肥薩線霧島西口駅、指宿枕崎線、日豊本線佐土原駅から加治木駅、日南線、吉都線。山野線、宮之城線、妻線、大隅線(既に廃止)に設置。
 特徴としてシンボルフレーズが細明朝体で、図柄が繊細でトーンのような模様を多用していることが挙げられる。
京町駅


p JR化後の独自形式

α JR北海道形式
 JR北海道内、道東・道南形式以外のほとんどの駅に設置。
 特徴としてシンボルフレーズの書体が道東形式と同じような細い明朝体であるということと一部であるが路線名等の書体が微妙に異なることが挙げられる。
 このように分類するほどのものではないのだが、一応紹介しておく。
留萠駅

β 盛岡支社(LOOK EAST)形式
 JR東日本盛岡支社管内に設置。
 特徴として図柄に「LOOK EAST → JR」のロゴマークが入っていることが挙げられる。それに伴い図柄が変更または一部変更されているものもある。これらはLOOK EASTのキャンペーンが行われていた'89年に設置された。
 キャンペーン終了後はLOOK EASTの文字かロゴマークそのものを削り取られている。
陸中山田駅

γ アーバンネットワーク形式
 アーバンネットワーク内の愛称路線名付き路線の幾つかの駅にに設置。
 特徴として路線名のところが上段に愛称路線名、下段に()つきで路線名が記されていることが挙げられる。'92年3月より設置された。
天王寺駅


δ 広島支社(駅から散歩)形式
 JR西日本広島支社管内の幾つかの駅に設置。
 特徴としてシンボルフレーズ及び路線名等の文字の大きさが小さめで、記号と路線名の間に「駅から散歩」のロゴマークが入っていることと、図柄が少々リアル(?)になってることが挙げられる。'96年6月頃より設置された模様。一覧
呉駅

ε JR四国形式
  JR四国管内に設置。
 特徴としてスタンプの大きさが従来のものより小さくなっており、絵が少々雑になっていること、路線名は現在JR四国が採用している「○○線」というように本線というものが無くなっていること、そしてスタンプの下方には「JR四国 年 月 日」と丸ゴシック体で記されていることが挙げられる。'92年より設置。'93には予讃線の電化完成時にスタンプラリーを行った。
土佐山田駅

ζ 鹿児島支社形式
 JR九州鹿児島支社管内のほとんどの駅に設置。
 特徴として路線名・駅名が丸ゴシック体からゴシック体となっていることが挙げられる。
 これもJR北海道方式同様分類するほどのものではないのだが、一応紹介しておく。
西都城駅

・類似スタンプについて
 時刻表の『「わたしの旅」スタンプ設置駅一覧』及びスタンプノートのStamp Mapに挙げられていないもので、一見「わたしの旅」スタンプと思えるような物がかなりある。大別すると、定義に一致するものと一致しない(判別困難)ものと二つに分かれる。
また、類似スタンプでもJR化後の独自形式による変更を受けたものもある。

i.定義に一致するもの
 例えば、上越線・沼田駅の「天狗で名高い迦葉山」。四角形・黒の史跡・文化財に見事に当てはまる。
 これのタイプは「わたしの旅」スタンプ設定当初からある。また、紀勢本線一身田駅など天王寺鉄道管理局のいくつかは独自で作成したものの国鉄本社が認定しなかたため設置駅一覧に挙げられなかったものもある。
沼田駅

ii.定義に一致しないもの
 例えば、和歌山線・岩出駅の「かつらぎ連峰と山麓古寺めぐりの駅」。円形のスタンプ。シンボルフレーズと図柄を見る限りでは四角形・黒の史跡、文化財と見なせるのだが、円形のスタンプでは定義に外れる。このようなタイプはシンボルフレーズ・図柄から察する意味と、スタンプの形状と色による意味が一致しないことが多い。
岩出駅

 但し、個人的には上に挙げた類似スタンプは「わたしの旅」スタンプではなく、あくまで類似スタンプとの認識のため、別項を作り紹介する。ただ、管理局などが一括して定義に一致・不一致を問わず作ったというものは数多くある。そのため類似スタンプを「わたしの旅」スタンプとして扱っている人もいると思うが、それは人それぞれの見方があるので本HPは参考としていただきたい。

・スタンプ台とスタンプノート
 「わたしの旅」スタンプが設置された駅には、「わたしの旅スタンプ台」なる木製の専用スタンプ台も設置された。大まかな仕様はてっぺんがログハウスの三角屋根のような形で、その下に「わたしの旅スタンプ台」のプレートが張り付けてあり、その下にスタンプの見本を記したプレートが張り付けてある。というものである。現在ではスタンプと同様、そのまま設置してあったり、他のスタンプ台と変わってしまったり、撤去されたり、廃駅後も台として残っていたり、駅の事情によりさまざまである。

 そしてスタンプ採取に便利なのが「わたしの旅スタンプノート」。前身の「国鉄監修 スタンプノート」初版が昭和46年2月1日で、以降形を変えつつも今もなお販売されているロングセラーである。また、「わたしの旅スタンプノート」として生まれ変わった昭和56年3月1日発行の改訂初版から、平成2年5月20日発行の第24版までの間「Stamp Map」として路線図上に「わたしの旅」スタンプ設置駅が掲載されていたが、現在は路線図しか掲載されていない。
スタンプ台

参考資料
・初期情報を知るには?
 交通公社の時刻表 1980.11号、1980.12号
・唐津駅以降に設置された物とバス以外の全スタンプを見てみたいときは?
 小学館ビッグコロタンシリーズ2・3
  国鉄全駅ものしりガイド 東日本編・西日本編
 小学館ビッグコロタンシリーズ19・20
  JR全駅ものしりガイド 東日本編・西日本編
・時刻表('80.11号~'84.3号)及びスタンプノート(S56.3.1 改訂初版~H2.5.20 改訂第24版)
・【'85.3.19の時点】の資料
 鉄道ジャーナル社 旅と鉄道 別冊・1鉄道趣味チャレンジ&コレクション '85.6.28発行
・その他
 小学館(コロタン文庫 75) 国鉄わたしの旅スタンプ全(オール)百科  '82.4発行
*注 コロタンシリーズ/コロタン文庫のスタンプ画像の一部は、企画段階の資料が引用されたためか、記号や書体が違うなどの間違いがあります。


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