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胸腹水貯留を乗り切り年余の在宅介護を精神疾患の息子が続けた認知症のケース

報告者名:@赤荻栄一A岡安静枝 報告者所属@福祉の森診療所Aウェルシア介護事業部

ケース名:H.A.性:女年齢:90(訪問開始時)
主介護者(続柄:三男 年齢:62 職業:なし)
介護保険認定:要介護 5 


日常生活自立度:C2
  認知症自立度:I

歩行:全介助 食事:全介助 
排泄:全介助 入浴:全介助

意思疎通:やや困難

本人家族の希望・要望

このまま在宅を続けたい

家族の状況

三男と同居

現病歴と経過(病名:慢性心不全、アルツハイマー型認知症

 平成247月、腹部が膨満し歩けなくなったとのことで訪問開始。血中のCA125(卵巣癌マーカー)が500を超え、その後胸水も貯留しSpO280%近くまで低下してきたため、卵巣癌末期として、利尿剤投与以外、積極的な治療を行わない方針として、訪問診療と訪問看護で診て行くこととした。
 主介護者の三男は統合失調症だが、服薬により安定していた。その三男が、嚥下できなくなっていた母親に誤嚥させずに飲み込ませる方法を見つけ出し、少しづつエンシュアを飲ませているうち胸腹水が減少し、血圧も体液貯留も改善した。
 その後訪問介護を導入、一時的に褥瘡ができることはあったが、おおむね安定。平成261月からは、デイサービスを開始。この時、CA12560まで低下していた。
 本人の状態は安定していたが、三男の介護疲れが見られはじめたため、在宅サービスを増やそうとしたが三男の不安が強く、なかなか導入できずに時間が経過。
 平成274月になって、やっとショートステイ開始。しかし、その後認知症が進行し誤嚥が頻発するようになる。12月になり誤嚥の増加を認め、17日発熱。誤嚥性肺炎を起こしたと考えられた。21日夜、三男が介護する中、その胸の中で息を引き取った。卵巣癌末期として訪問診療を開始してから35か月が経っていた。

アセスメント結果または現在の問題点
・卵巣癌末期の診断は正しかった?単なる心不全だったのか?
・主介護者の注意深い摂食介護によって適量の摂食ができ、循環動態が改善して、胸腹水も減少した。
・その後、全身状態は安定したが、主介護者の精神状態が不安定化し、訪問看護も、ケアマネジャーも、その対応に四苦八苦することになった。
・主介護者が、自分の腕の中で看取ることになったが、それが主介護者のトラウマになって、統合失調症は悪化。しかし現在、服薬量を増やして、安定しつつある。