家族の希望で退院となり、そのまますぐに自宅で亡くなった認知症の1ケース

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ケース名:K.N.性:女性 年齢:83 要介護5 主介護者(続柄:姉妹 )

日常生活自立度(C2)認知症自立度( M )

歩行( 全介助 )  食事( 全介助 )   排泄( 全介助 )  入浴( 全介助 )

意思疎通( 不可 )

本人家族の希望・要望

家族:家で最期を迎えさせたい

家族の状況

独居:姉妹は二人とも結婚して別居

現病歴と経過(病名:アルツハイマー型認知症、脳出血後遺症、心筋梗塞

 平成277月に急性心筋梗塞のためステント挿入。8月に退院し、グループホーム入所。112日嘔吐して、意識低下。頭部CTで左脳出血と診断され、保存的治療。状態が安定した後、平成282月に転院し、リハビリを続けたが、誤嚥性肺炎をくり返したため、大腿静脈から中心静脈カテーテルを挿入。補液の種類により熱発したため、家族は次第に不安になって、自宅退院を希望。6月21日にケアマネジャーに連絡。28日に退院の予定となった。しかし熱発し退院延期。そのまま退院前カンファとなった。家族は1日でも早い退院を希望。そのため、カテーテルはそのままで、71日(金曜日)に退院となった。
 同日から訪問開始。訪問時、難聴もあり呼びかけにうなずく程度。体温37.4℃、血圧:102/60、脈拍:106/分、SpO2:95%(酸素2L吸入)。聴診では、ラ音聴取せず。しかし、呼吸音の増強があったため、利尿剤の投与を続け、吸入酸素量を2.5Lに増やして、様子を見ることにした。
 74日(月曜日)訪問入浴。本人は気持ちよさそうだったと。この日の訪問時、血圧:90/54、脈拍:110/分、SpO2:94%(酸素4L)で、触診で腹部に肝臓腫大を認め、眼球結膜に黄疸を認めた。聴診では、ラ音は聴取せず。7日から、在宅用に新しい注入ポンプに変更予定とした。
 しかし、5日容体が悪化。同日の1325分死亡確認。肝腫大と黄疸については、検査はしないこととしたため、詳細は不明。ただ、これほど早く死亡につながるものとは考えなかった。心不全だけではなく、何らかの肝臓病変があったのかもしれない。

振り返り
・在宅への家族の強い希望があり、それに応えた。
・すでに長い間入院を続けていたので、最期に少しの間でも家に帰してやりたいという思いだ った。
・金曜日に中心静脈カテーテルをつけたまま退院。土日はそのまま輸液を続け、月曜日に久し ぶりの入浴。そして、翌日に亡くなったため、短期間の自宅生活だったが、少なくとも自宅 で入浴でき、本人も喜んでいたことに家族は満足。
・確かに、もう少し退院が遅れると、自宅に帰ることはできなかったかもしれないと思われ、 終末期の見定めは難しいと改めて考えさせられた。
・ただし、このような認知症末期のケースでも在宅に戻り、そのまま最期を迎えることができ る。