平成26年度第5回定例会(2月3日)
1 腸閉塞を起こしやすく小規模多機能と訪問看護で排便コントロールしている利用者
小規模多機能施設ポプリ 菅野雅子
97歳女性。認知症、脳梗塞。要介護5。主介護者:長女。家族の状況:息子と同居。長女が介護のために古河市へ転居。本人の希望:自宅にいたい
(経過)
脳梗塞後、脱水、腸閉塞、腎盂腎炎で、計4回入院。認知症のため、しばしば奇声を発したり泣き出したり、あるいは突然食事を拒否。介護の状況は、食事のみ半介助で、他は全介助。したがって、介護負担が大きく、週3日のショートステイの利用を開始。ショートステイ中に排便を促してなんとかなっていたが、そのうちに再度腸閉塞症を起こしたため、自宅にいる間にも訪問看護を利用し排便を促すようにして、腸閉塞症の再発はない。
(課題)
・このまま最期まで在宅?在宅での看取りについての理解は?
2 在宅で看取るまでの関わり
訪問看護ステーションはなもも 中澤由君子
93歳男性。膵頭部がん末期。要介護5。主介護者:長女。家族の状況:長女、長男と同居。長女の息子が障害者。本人の希望:家にいたい。家族の希望:できれば正月を家で迎えさせてやりたい。
(経過)
肝転移のある膵頭部がんと診断され、デュロテップパッチで疼痛コントロール。本人が退院を希望したため、10月22日退院。訪問看護開始。
デュロテップパッチを増量して、疼痛コントロールはまあまあ。しかし、幻覚やせん妄が出現したため、家族の不安が増強。これは医師からの説明で納得した。その後、がんの十二指腸への浸潤によると思われる嘔吐が出現し、食事が摂れなくなったため、点滴開始。
その後、栄養状態の悪化と本人の体位変換拒否により、褥瘡が出現。また、しだいに排痰が困難となり、正月を待たず、12月24日に死亡。
(課題)
・本人が娘からの介護を拒否したため、懸命な介護をしながら褥瘡をつくり、また正月を迎えさせてやることができなかった。
・介護者の負担軽減がうまくできなかった。
3 経口摂取困難があり、脱水をくりかえす事例
訪問看護ステーションはなもも 中澤由君子
90歳女性。脳梗塞。左半身まひ。要介護5。主介護者:長男の妻。家族の状況:長男夫婦、孫と同居。二人の娘も近くに住んでいる。1階が商店で住まいは2、3階。本人の希望:家にいたい。家族の希望:家にいさせたい。
(経過)
12月17日退院と同時に訪問看護開始。家族は、体位変換と食事の介助に不安があった。連日の訪問により指導をくりかえし、不安は聞かれなくなったが、介護者が交代するため、1日の総摂取量が不明だった。そのため、ノートを用意して記録。最低でも1日500mlの水分を与えるよう指示。
しかし、「もともと食事量が少なかった」と言って、十分な水分を与えないなどのことがあり、脱水をくり返す。医師からの説明でなんとか理解し、ヘルパーの連日利用で摂取量も増え、脱水を起こさずに済むようになった。
(課題)
・姑の介護歴5年の娘がいたため、「任せておけば大丈夫」という雰囲気が家族内にあって、なかなか介護サービスを入れなかった。
・尿量が減った時に連絡をよこすよう指示しても、連絡がなかった。
・主介護者は嫁だが、食事の世話は娘たちが交代でしていたため、食事に対する指示が伝わりにくかった。
4 娘一人で支え在宅で看取った悪性リンパ腫の1ケース
福祉の森診療所 赤荻栄一、武井聡子
91歳女性。要介護4。主介護者:娘。家族の状況:娘との二人暮らし。本人家族の希望:在宅を続けたい。
(経過)
平成24年8月、背腰部痛出現。近くの病院で骨粗鬆症と診断。エルシトニンの筋注と訪問リハビリを開始し、痛みは軽減したが、両下肢の筋力低下が悪化したため、MR検査を施行。それによって脊椎に転移のある悪性リンパ腫と診断。
仰臥位では痛みがないが、少しでも上半身を曲げると痛みが出現。また、しだいに下半身のマヒが進行したため、完全に寝たきりの床上生活となった。娘さんは絵を書くことが仕事だったが、どうしても仕事の手を話せない時などにショートステイを利用。また、経済的な理由から、介護保険のサービスは極力使わないようにしていた。
平成26年4月CTで腫瘍の状態を確認すると、左胸水があり、リンパ節の腫大は胸腔から頚部にも及んでいることが分かった。7月には、左の呼吸音が消失。8月には、右肺に痰のつまる音が聞こえるようになり、9月には発熱をくりかえすようになり、10月2日に死亡。
(課題)
・経済的な理由からサービス利用が不十分だったが、娘一人で最期まで懸命に介護した。
・高齢者の背腰部痛の原因には、悪性腫瘍の骨転移の可能性があることを忘れてはいけないことが改めて確認できた。