平成26年度第4回定例会(12月2日)
病院での最期を選んだ2ケース
1)肺がんのケース
67歳女性。要介護4。主介護者:息子。家族の状況:息子と二人暮らし。息子は夜の仕事なので、夜間独居。
本人の希望:治療をしてもらいたい。治療しないなら家に帰りたい。
(現病歴と経過)
3月上旬から左半身のけいれんが出現。肺がんからの脳転移と診断。また、多発骨転移も判明。頭部に緊急の放射線照射を行ったが、半身まひが改善しないため抗がん剤投与は行わないことになり、退院した。
6月18日訪問開始。左半身のマヒとけいれんがあり、肺がんのためと思われる右肺の呼吸音の減弱を認めた。痛みは訴えなかったが、せき込みと不眠、そしてけいれんを訴えた。同時に訪問看護と訪問介護を開始。
6月末には右肺にラ音聴取。また骨転移による痛みが出現したため、鎮痛剤、そしてMSコンチン開始。また、痰の喀出が困難となり、息苦しさを訴えるようになる。
7月22日、本人が「呼吸が苦しいので入院したい」と訴えるため、緩和ケア病棟に連絡し入院。8月10日死亡。
(問題点)
・夜間独居となるため、東京から妹が来て介護に当たったが、その妹と息子の間で、意見の相違があった。妹は、自分に脳底動脈瘤があるためか姉を入院(入所)させたがる傾向があり、息子は少しでも長く家に置いてやりたいという具合だった。
・介護保険の認定が下りるまで2週間かかったため、その間のサービスが不十分で在宅での生活に困難を感じることになった。
・息子一人で介護していた時に、服薬のさせ方を誤ったことがあり、本人はそれを不安がっていた。薬剤師の協力を得るなどして、服薬指導をきちんとすべきだった。
・最終的に、緩和ケア病棟に入院させることで家族の意見が一致し、入院となった。
2)胆のうがんのケース
66歳男性。要介護2。独居。ときどき、娘夫婦が泊りがけで介護に来る。
本人の希望:できるだけ家にいたい。
(現病歴と経過)
4月初旬、心窩部痛を訴えた。腹部CTで肝臓に巨大な腫瘤を発見。自治医大で胆のうがんの肝転移と診断。ただちに抗がん剤治療が始められたが、食事が摂れなくなり、投与中止。本人が在宅を希望したため退院。この時、腫瘍の増大速度が極めて早いこと、および十二指腸を圧迫し始めていると説明があった。
7月8日初回訪問。痛みに対してフェンタニルテープとオキノームを使用。本人は、「痛みがひどくなった時に入院したい」と。
痛みはなんとか落ち着いていたが、食事を摂るとすぐに嘔吐するようになった。これは腫瘍が十二指腸を圧迫しているためと思われた。「夜、一人でいると不安」と本人から緩和ケア病棟への入院の希望が出されたため、7月30日に友愛記念病院に入院。
自治医大退院時から、友愛記念病院緩和ケア病棟には連絡があり、在宅で困難になった時には受け入れる準備ができていた。8月11日、せん妄が悪化、14日に死亡。
(問題点)
・経口摂取が困難になる中、独居での末期がんの在宅療養は困難だった。
・また、本人にはまだがんを治したいという気持ちが残っていた。