平成23年度第6回定例会(平成24年2月7日古河病院)
胃瘻造設を決めた多系統委縮症(オリーブ橋小脳委縮症)の1ケース
福祉の森診療所 赤荻栄一
訪問看護ステーションたんぽぽ 小松依子、瀬下美智子
66歳女性 主介護者:夫
本人家族の希望・要望 本人:? 夫:家で見てやりたい
家族の状況 夫との二人暮らし
現病歴と経過(病名:多系統委縮症(オリーブ橋小脳委縮症:OPCA)、糖尿病)
平成10年頃から、足元のふらつきが出現。さらに言葉のもつれも加わったため、頭部CT撮影。小脳と橋の委縮を認めたため、神経内科へ紹介。オリーブ橋小脳委縮症と診断され、外来での経過観察となった。
平成20年、通院困難になり、訪問診療を目的に当院へ逆紹介。4月から訪問開始。訪問開始時、つかまり歩き可能で、排尿障害があったが、排泄は自力で行っていた。8月に入ると、歩行のみならず立位保持も困難となってきた。さらに、夫の介護疲れも見え、療養棟へ入院を希望。3か月の入院でバルーンカテ留置となり、退院。訪問再開。
寝たきりとなって体動も少なく、仙骨部に褥瘡出現。これは、エアーマットにして軽快。しかし、次第に四肢の筋硬縮が進み、関節も固縮傾向。そして、肩や手関節痛が増強した。
翌年、肺炎のため入院。3か月後退院したが、入院の間に仙骨部褥瘡が拡大し、ポケット形成。これを、切開し、訪問看護により洗浄を続けてもらい、6か月でやっと軽快。その間、バルーンカテの自然抜去や閉塞、出血や緑変などのトラブルが多発。これらは、膀胱洗浄の回数を増やすことでなんとか解決した。
さらに昨年の夏頃から、経口摂取が困難になり始めた。そして昨年末から、誤嚥性肺炎発症。抗生剤の経口投与でなんとか軽快したが、経口摂取はかなり困難になっており、肺炎の再発が懸念されることから、胃瘻造設を行うこととなった。現在、胃瘻造設後、夫が胃瘻管理の訓練中。
アセスメント結果または現在の問題点
・多系統委縮症のひとつであるオリーブ橋小脳委縮症は、治療法のない進行性の難病である。・したがって、生活支援と関節拘縮の予防、合併症の治療および対症療法が主体となる。
・排尿障害がこの疾患の一症状でもあるため、バルーンカテ留置となったが、そのトラブル対 策が必要であった。
・しばしば入院により褥瘡が悪化したため、主介護者はできるだけ入院はさせたくないと考え るようになった。
・嚥下障害が進むにつれ、食事の時間がかかるようになると同時に誤嚥による肺炎を起こすよ うになった。この肺炎の併発を機に、胃瘻造設となった。これは、介護者の負担を軽減すると同時に肺 炎発生の危険を減らすものである。