平成22年度第6回定例会(友愛記念病院「県西緩和ケアフォーラム」)
講師:自治医大緩和医療講座 岡島美朗 先生
「サイコオンコロジーの世界」

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1.がん患者の精神障害
 47%に精神障害が認められ、そのうち主に不安と抑うつを伴う適応障害が最多で69%。さらに、うつ病性障害、不安性障害と続く。また、末期がん患者では、せん妄が最多で認知症、適応障害と続く。そして、せん妄を呈した末期がん患者は、そうでない患者と比べて、余命が短かった。

2.うつ病・適応障害
(1)適応障害

 はっきりと確認できるストレス因子に反応して、通常予測されるよりもはるかに超えた苦痛が出現。生活機能の著しい障害を起こす。しかし、そのストレス因子がなくなると、その症状は6か月を超えて続くことはない。
(2)うつ病
<うつ病のスクリーニング=2質問法>
 @抑うつ気分=「気分が沈んだり、憂鬱な気持ちになったりしたことがよくありましたか?」
           「悲しくなったり、落ち込んだりすることがありますか?」
 A興味または喜びの喪失=
           「どうしても物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくありましたか?」

           「以前は楽しかった友達と会ってもおもしろくない」
           「好きだった運動や音楽に熱中できない、感動しない」
           「スポーツやドラマを見ても感動しない」
(3)気持ちのつらさの治療
 精神的サポートを基盤に、原因への対応と抗不安薬・抗うつ薬を中心とする薬物療法が基本。

3.せん妄
(1)診断基準(以下のすべてを満たす)
 @意識障害=ボーっとしていて周囲の状況が分からない
 A認知機能・知覚機能異常=見当識障害、幻覚・妄想など
 B日内変動=一日の中で症状にむらがある。とくに夜間に悪化する
 C原因=薬物やなんらかの身体要因がある
(2)せん妄の三大特徴
 @急性の発症
 A日内・日間変動
 B可逆性
(3)せん妄の治療
 @原因の治療
 A抗精神病薬の服用=睡眠リズムの回復が目標

 Bせん妄の治療戦略=意識レベルを上げるため、睡眠・覚醒リズムの確保が最大の目標
                抗精神薬のみならず、どうしても眠れなければ、抗不安剤を使ってでも眠らせる!