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平成22年度第3回定例会(8月3日総和中央病院にて)

<ケース検討>
(1)介護者が揺らぎながらも在宅で最期を迎えた脳梗塞後廃用性障害の1ケース
                                                  福祉の森診療所 赤荻栄一
 骨粗鬆症による脊椎多発圧迫骨折、糖尿病および高血圧のある脳梗塞症の86歳男性。85歳の奥さんと二人暮らし。二人の息子があるが、いずれも独立。本人は、もう絶対に入院したくないという気持ちが強い。奥さんも、その気持ちに沿いたいが、体の具合が悪くなった場合には入院治療を受けさせたいという気持ちがある。
 脊椎多発骨折のため背部と腰部に痛みがあり、寝たきりとなった。糖尿病の悪化により右足に壊疽が出現。奥さんは入院治療を希望したが、希望の病院から入院を拒否された。しかし、息子たちに「本人は、もう入院したくないと言っているんだから、このまま在宅でできるだけのことをやってもらうのがいい」と説得され、納得。その後3カ月間は壊疽部の感染を起こさず安定していたが、とうとう嫌気性菌感染を起こしてしまう。洗浄を続け感染の拡大は防げたが、誤嚥が見られるようになり、ときどき発熱するようになった。そのうちに、とうとう肺炎を起こし、足の壊疽発生から6か月後に自宅で永眠した。主介護者の奥さんは、腰痛の持病があったたため、夫の介護には直接手を出すことはできず、寄り添いと声掛けに終始。そのことが、なにもしてやれないという気持ちにつながり、なにかしてやらなければという焦りの気持ちを起こさせることになっていたかもしれない。奥さんにとって6カ月は長いつらい時間だったのは違いないことだが、夫の死後、「最期まで自宅で夫の傍にいることができたのは幸せだった」と言っていた。

(2)認知症の夫を自宅で看取った妻
                                        訪問看護ステーションたんぽぽ 瀬下美智子
 二人暮らしの夫は80歳。認知症になる前から「自分の最期は家で」と言い続けていた。認知症による問題行動が出てきたため、入院を余儀なくされた。入院中、心不全を起こし、余命1、2か月と言われたため、これ以上入院をさせておくわけにはいかないと、退院させた。仙骨部に大きな褥瘡形成。食事がとれないため、点滴を希望。そのため、訪問看護は褥瘡の処置と毎日の点滴を担当。末梢静脈確保が困難になってきたところで、中心静脈からの持続点滴の話が出されても、奥さんは「そこまでは必要ない」と。結局、末梢静脈からの点滴は、静脈確保が極めて困難になったところで中止となった。その後、しだいに全身状態は悪化し、3カ月間の在宅生活の後、自宅で永眠。奥さんは、「1、2か月の命と言われた後、家にもどり、3か月も家にいられた」と満足していた。
 「なにか心配なことがあったらいつでも連絡していい」と話したが、実際に呼吸状態が悪くなった時には「息がとまった」と真夜中に連絡があった。そのつど訪問して状態を確認。必要と思われた時には主治医にも確認した。これによって奥さんは「いつでも連絡していいと言われると本当に安心です」と。