平成22年度第2回定例会 平成22年6月1日友愛記念病院
ケース検討
1 自宅で呼吸停止した慢性呼吸不全の2ケース
福祉の森診療所 赤荻栄一
1)もうこれ以上長生きしたくないと思えた気管支喘息の1ケース
78歳の女性。気管支喘息に対する長いステロイド投与によると思われる大腿骨骨頭壊死があり、寝たきり。また間質性肺炎を合併あり、在宅酸素療法と急性憎悪時のステイロイド大量療法を繰返してきた。最後の入院後、同様にステロイド大量投与を行ったが、低酸素血症が続くためリハビリも困難として在宅の方針となった。家族は可能な限り長生きをして欲しいという思い。ただし、本人は疲れた感じ。
初回訪問時、座位では腰痛がつらいとして寝たきり状態。呼吸困難時は気管支拡張剤の吸入で対処。娘が薬剤師のため、薬剤の管理は娘に任せることにした。ただ、実際の薬剤投与は家族が行った。初回訪問から2ヵ月半後、呼吸困難を訴えたため診察すると呼吸音に変化を認め、吸入ステロイド剤をを見ると、すでに薬が切れていた。直ちにステロイド剤を増量して吸入を再開したが、翌日急変し呼吸停止した。
薬剤管理は、家族に完全に任せるのでなく、定期的にチェックすることが必要と思われた。
2)まだ死にたくはないが家がいいと在宅を続けた荒廃肺の1ケース
76歳の男性。肺結核による荒廃肺。呼吸不全の悪化と喀血をくり返してきた。日中は酸素吸入、夜間は陽圧式人工呼吸(BIPAP)。訪問開始後、呼吸困難悪化のため二度再入院。いずれも、退院できたが、突然腰痛が出現し、痛みのため咳もできなくなった。腰痛に対して、局所ブロックと鎮痛剤投与を行ない様子を見ることとしたが、翌日、喀血を起こし緊急入院。しかし、その日に死亡した。
何度も再入院を繰り返してきたが、本人は家が一番よかった。最後は、腰痛のため咳ができなくなり、呼吸状態が悪化。そのまま最期を迎えることとなった。しかし、ここまで在宅生活が続けてこられたのは、妻の介護力と急変時の的確な入院治療の賜物を思われた。
2 塩酸モルヒネ持続静注で症状を緩和しながら自宅で最期を迎えた子宮体癌の症例
友愛記念病院 宮崎 亨
県西在宅クリニック 岩本将人
64歳女性。子宮体癌再発と肝転移、リンパ節転移、腹水貯留、閉塞性黄疸。閉塞性黄疸に対しては、PTCD施行中。下腹部痛と下肢の浮腫がある。この時点でも、本人と家族に「病気を治したい」という気持ちが強かったため、元の主治医の診察を受け、病状の詳しい説明を聞く。これによって、緩和医療を受け入れ、在宅を希望した。疼痛緩和にフェンタニルを用い、レスキューとして塩酸モルヒネ点滴を行っていたが、塩酸モルヒネが最も有効だったので、塩酸モルヒネの持続静注を行うことにした。県西在宅クリニックで、在宅での継続が可能とのことだったので、訪問看護と薬剤師を交えて退院前カンファを行い、機器の準備と薬局への塩酸モルヒネの納入が済んだところで退院した。
在宅用PCAポンプを使って持続静注を行い、突発痛に対しては夫の操作により1日1〜2回程度レスキュー静注を行った。PTCDチューブからの排液もトラブルなく続けられたが、在宅9日目頃から、呼吸困難が出現。在宅酸素の導入でやや緩和されたが、20日目から努力呼吸となり、22日目に在宅のまま永眠。最後の3日間は、夫が床をともにし、長男も休暇をとって最期の時間を過ごした。
塩酸モルヒネの持続静注を行うに当たり、家族を交えて退院前カンファを行うとともに、薬局にも迅速な対応をしてもらえたことで、スムーズに在宅への移行が可能であった。