平成21年度第4回定例会〜10月6日古河赤十字病院にて〜

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<ケース検討>
(1)高齢者の意思決定を支える取り組み〜肺癌末期における在宅医療の可能性をめぐって〜
                                               古河赤十字病院 中山玲子

 75歳の男性。脳卒中の既往があり左半身不全麻痺。食欲低下と咳のため受診。精査によってW期肺癌と診断。有効な治療法はない状態と考えられた。緩和ケアの対象と考えられ、本人も在宅療養を希望したが、家族との確執があり、誰もが関わりを拒否。兄が一人いるが、高齢のため、やはり関われないとのこと。呼吸困難が出現してきており、在宅酸素を使ったとしても独居では在宅は困難と考えられ、入院を継続することで本人も納得し、そのまま病院で死亡した。
 その時点では入院を続けるとすることで仕方がないと考えられたが、外泊などの一時的な在宅を試してみること、あるいは高齢者賃貸住宅等の自宅以外の在宅の可能性を考えてみることなど、いくつか試してみることが必要だったと考えられた。

(2)不安におののきながらも入院したくない一心で在宅を全うした呼吸不全ケース
                                               福祉の森診療所 赤荻栄一

 74歳の女性。肺非結核性抗酸菌症による慢性呼吸不全。以前、肺結核で入院治療を受けたことがあり、その時のトラウマで、絶対に余計な治療は受けない、特に入院治療は絶対に受けない、という気持ちが強くなっていた。最低限の外来治療を受けるため当院を受診し、それを続けていた。最後は在宅酸素を受け入れたが、呼吸困難が強くなった当初はそれも拒否。夜、苦しくなり「病院に連れてって」とうわごとを言う状態になって、家族は不安を感じたが、その時に受けた訪問看護の迅速な対応に安心するとともに、意識が戻ってはっきりしてくると絶対に入院はしないと言う本人の姿を見て、家族は在宅を続けることを決意。訪問看護開始から2週間後に在宅のまま亡くなった。在宅には24時間対応の訪問看護が重要であることを再確認させられたケースだった。