本年度第1回目の定例会は、4月7日福祉の森会館で総会に引き続き行われました。

1 血液透析を導入した視力障害を持つA氏の在宅への支援
                               古河赤十字病院  森田初美
 糖尿病による慢性腎不全の67歳男性。経度の知的障害のある次女との二人暮らし。尿毒症のため血液透析となった。網膜症のため視力障害もあり、右が0.02、左は光が分かる程度の状態。性格は頑固で乱暴。入院中は気に入らないことがあると暴言を吐き騒いだ。しかし、透析開始後は病状が安定するにつれて本人も次第に落ち着き、「自分で歩き、トイレ・入浴を自分でやりたい」と言うようになったので、ウマの合う次女との生活を自宅で送れるよう準備。すでに透析開始前に利用していた在宅福祉サービスの利用再開と、次女への栄養指導を行い、また送迎サービスを導入することによって、外来透析にスムーズに移行できた。在宅に向かうにはタイミングと周到な準備調整が必要であり、そのためには以前から利用していたサービスをうまく使うことが効果的という報告でした。

 在宅を希望しながら最期を病院で迎えた2ケース
                              福祉の森診療所  赤荻栄一
(1) 本人は在宅を希望していた末期癌の1ケース
 食道癌の86歳女性。認知症はない。4年前、のどのつかえ感で発症。年齢を考え手術は行わず、放射線治療のみ施行。その後一人暮らしで、しばらくは落ち着いていたが、昨年秋に再発し、胸痛と嚥下困難出現。それに伴い娘のいる古河に移ってきた。2月に訪問開始。その時点で、右の呼吸音は聞こえ難く、また左には著明なラ音を聴取。酸素飽和度は95%。本人は「苦しくはない。病院には入院したくない」と。翌週の訪問時、自覚症に特変はないが呼吸音が同様に悪いので、このままだと肺炎につながる可能性が高いこと、及び肺炎は命に関わることを娘に伝えた。その翌日、呼吸困難ということで入院し、1週間後にそのまま亡くなった。最後をどこでどう迎えるかを介護者を含めて最初に確認することの必要性とその確認のないまま予後不良の話をすることの問題を痛感しました。


(2) 介護者は自宅で看取ることを決めていた認知症の1ケース
 101歳の認知症。昨年末から食事を摂らなくなって寝たきりとなり、仙骨部と踵に褥創出現。ショートステイを利用し始めて食事を摂れるようになったが、褥創が悪化したため当院紹介となり訪問開始。次第に良好な肉芽が盛り上がってきたが、再び食べなくなり、ショート利用中に突然の血圧低下。救急入院となり、消化管出血及び脳梗塞と診断。そのまま特別な治療をせず点滴のみで様子をみることとして、1週後に死亡。認知症の高齢者の精密検査とショーステイ利用中の急変時の医療のあり方について課題を提起したケースと思われました。

平成21年度総会・第1回定例会〜4月7日福祉の森会館〜

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