在宅ケアネットワーク古河会報第8号(平成22年5月発行)

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T 平成22年度総会・研修会

 46日、福祉の森会館にて平成22年度総会と研修会を開催しました。

 平成21年度事業のまとめとして、6回の定例会での検討ケースの一覧が示され、各会の参加者数が報告されました。年間の延べ参加者数は178名で、昨年度が158名、一昨年度が102名でしたので、年を追う毎に増えていることが分かりました。
 決算の報告では、収入が繰入金を含め413,125円、支出は講演会の212,540円が最大で、合計219,460円でした。したがって、次年度への繰越金は193,665円となります。

(収入)                   (支出)
 年会費 個人会員 10,000円(1,000円×10)  郵便料       6,080
     施設会員 15,000円(5,000円×3)   講演会講師代   212,540
     賛助会員 60,000円(10,000円×6)  振込み手数料     840
     利子     197円          
        繰入金  327,928円          次年度繰越金   193,665
        計   413,125円           計      413,125

・研修会 「高齢者のフットケア」
  講師 小村平安子氏(当ネットワーク幹事、フットネイルセラピスト、認知症ケア専門士、保健師)
 爪の効用、皮膚の効用について話され、高齢者の自立支援のためにフットケアが重要であることが示されました。
 とくに、高齢者に多い巻き爪や爪白癬に対する具体的な処置法は、大変参考になるものでした。また、皮膚科医との連携が重要であるが、なかなか連携してくれる医師がみつからないことが問題とのことでした。しかし、巻き爪の処置に使うテープやワイヤは、だれでも問題なく購入できるとのことで、これも大変参考になりました。

・新役員
 平成223月の幹事会で、新年度の役員が次ページの通り決まりました。
 幹事には、定例会を開催する4病院のケースワーカーの代表の方々に加わっていただきました。
 監事は、転勤された友愛記念病院の三宅先生に代わり、同じく友愛記念病院の宮崎亨先生に引き継いでいただくことになりました。

「在宅ケアネットワーク古河」役員および特殊会員(平成224月現在)―五十音順―

(役員)
 代表(1)  赤荻栄一(古河福祉の森診療所)
 幹事(11)  緒方順治(緒方歯科医院)       小野寺宣夫(小野寺歯科医院)
         尾花久江(古河赤十字病院)      小村平安子
         坂口敏夫(ハンディクリニック)      鈴木冨士郎(まくらがの里)
         中島晃士郎(エイエスピー)              橋本正一(橋本歯科医院)
         松浦崇(古河病院)                       黒澤秀彰(総和中央病院)
         渡邉希代光(友愛記念病院)
 監事(2)  金子久子(古河市社会福祉協議会)     宮崎 亨(友愛記念病院)

(特殊会員)
  賛助会員(8)
       NPO法人エイエスピー福祉移送の会        緒方歯科医院
       小野寺歯科医院                              古河赤十字病院
       総和中央病院                                デイサービスセンターまくらがの里
       寺島薬局介護部古河事業所                  ヘルパーステーションまくらが
  施設会員(7)
       池田医院                                     県西在宅クリニック
       古河病院                                    デイサービスセンターゆうりん
       訪問看護ステーションたんぽぽ            友愛記念病院
       ライフケアクリニック希望(のぞみ)

U 在宅ケアネットワーク古河定例会での検討ケース(平成2112月〜222月)
                                   在宅ケアネットワーク古河 代表 赤荻栄一

1 平成21年度第5回定例会(平成21121日古河病院にて、参加者32名)
1)介護サービス導入により独居高齢者が在宅退院可能となったケースについて                                         古河病院 松浦 崇 74歳男性。パーキンソン病と頚椎症。自宅で倒れているところを知人に発見され、救急搬送。翌日には意識障害は軽快。しかし、小刻み歩行と震えがあり、パーキンソン病と診断。抗パーキンソン剤の服用開始し、しだいに症状軽減。在宅復帰目的の亜急性期病棟に転棟。この間に、在宅復帰のため居室の整備(長年の独居生活のため散らかし放題)。また、介護保険で要介護1の結果が出たのを確認後、必要な居宅サービスを考え、本人に納得させた上で、退院となった。亜急性期病棟は、90日間入院可能な病床を10床持ち、本ケースのような在宅復帰を目指す患者の退院前の準備などのために必要な日々を過ごすことのできる病棟で、在院日数を気にかけることなく在宅復帰支援のできる病棟である。

2)終末期の在宅支援への関わり
                                古河赤十字病院 青木裕美 87歳の女性。肝細胞癌、肝硬変、食道静脈瘤。大学病院から、肝臓癌と告知され、余命6か月と言われて、緩和ケアのため転院してきた。入院時、本人は「病院にいるのが安心」と。この時、本人のADLは自立。その後、3回の食道静脈瘤治療が行われて、食事が安心して食べられるようになったため、家族も退院を希望、主治医からも許可が出た。しかし、この頃から肝機能の低下が著明となり、肝性脳症が出現した。自宅での見取りを前提に退院。しかし、家族は患者の延命にこだわりがあり、在宅での点滴が困難になると、入院を希望。在宅16日で再入院した。その後、点滴治療が続けられ、再入院10日後に死亡。終末期の在宅へ向けた支援のタイミングの取り方について考えさせられたケースとの報告だった。

3)在宅酸素療法を続けながら在宅死した肺癌合併特発性肺線維症の1ケース                                   福祉の森診療所 赤荻栄一 76歳男性。風邪症状をきっかけに、肺線維症と診断。同年、住民健診で異常を指摘され、肺癌の合併と診断。低肺機能のため、手術と放射線治療は困難で、抗癌剤による治療しかないと言われ、本人と家族は緩和ケアを選択し、退院。在宅酸素療法の適応として、当院紹介。初診時、肺癌の最大径は2cm1年後、体力の衰えとともに義歯が合わなくなり、食欲低下。訪問歯科診療で抜歯後、なんとか食べられるようになった。しかし、呼吸困難が強まり、家族の不安が高まった。ここで、家族による入浴をやめ、訪問入浴を導入し、家族の負担の軽減を図った。その1ヵ月後、さらに呼吸状態が悪化。それまで強く在宅の継続を望んだ本人も「これ以上家にいるのは無理かな」と。そして血圧も低下してきた頃、家族も「もうこれ以上在宅は無理」と。しかし、「命は、あと数日」と告げると、「家族で検討する」と。その翌日訪問すると下顎呼吸状態。そのため「まもなく最期」と告げると同時に、家族は「このまま家で見ていく」と。その翌日、家族に見守られながら永眠。後日、家族は、「本人が『最期まで家にいられてよかった』と言っていた」と。「あの時、入院させなくて本当によかった」とも。

2 平成21年度第6回定例会(平成2222日福祉の森会館にて 参加者24名)
1)介護力不足と経済的問題を抱えながら自宅退院となったケース                                       古河赤十字病院 松崎 敦
 70歳男性。脳梗塞症、構音障害。寝たきりであり、誤嚥があるため、胃瘻造設。発語は困難だが、意思疎通は可能。妻との二人暮らしで、収入は年金のみ。この状態で、もう少しだが住宅ローンも残っているとのこと。前院の入院費の未納もある。在宅への話をしようとしても、妻とは連絡が取れない日が続いた。やっと連絡が取れて、退院の話をすると、妻は日々のお金のことを考えるだけで精一杯で、まったく退院のことなど考えられないと言う。しかし、長期の入院はできないこと、施設入所も困難なこと、在宅が経済的にも安上がりなことなどを説明して、やっと退院を了承。退院後の医療は、ヘルパー介助による通院とし、訪問系サービスを毎日導入することとした。しかし、退院後、褥瘡が悪化。訪問看護が導入されたが、それでもさらに悪化傾向にあるとのこと。このままでは、そのために再入院ということになる可能性もある、と。

2) 好きなお酒を飲み続け自宅で最期を迎えた独居膀胱癌の1ケース                                         福祉の森診療所 赤荻栄一
 76歳男性。肺転移と胸水貯留のある末期膀胱癌。癌は骨盤内に広がり、痛みと下肢のむくみが著明で寝たきり。臀部には褥瘡形成。褥瘡は訪問看護により包交。痛みはオキシコンチンとオキノームでコントロール。意識は清明。何よりも酒が好き。ヘルパーが朝夕に食事介助するが、それはほどほどにして、隣のコンビニからカップ酒を持ってきてもらい、毎日数本飲んでいる。しかし、訪問開始後1ヶ月で、全身状態の悪化とともに食欲低下。それでも酒は止めなかったが、その後血痰が増え、呼吸状態が悪化するとともに、好きな酒も飲めなくなり、訪問開始から1ヶ月半後、そのまま自宅で死亡した。

  

 次回の定例会は、8318時半から、総和中央病院で開催します