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在宅ケアネットワーク古河会報第2号(平成19年4月発行)

Ⅰ 在宅ケアネットワークの必要性 在宅ケアネットワーク古河 代表 赤荻栄一

 

 今、「在宅」が強く叫ばれています。なによりも国が、今後の医療の方向性を「在宅」に向かわせようとしています。これは、第一に総医療費抑制の観点から行われているわけですが、もちろん世論調査の結果から、在宅での生活を続けることを国民の多数が望んでいることを踏まえてのことでもあります。2004年の厚労省終末期医療に関する調査等委員会報告書によりますと、痛みを伴う終末期に希望する療養場所は、可能な限り自宅でという人が48%、最後まで自宅という人が11%で、両者を合わせた59%の人が痛みを伴うような状態であっても可能な限り自宅での療養を希望しているという結果でした。一方、実際に最後を自宅で迎えた人は、同じ2004年の人口動態統計の結果から、たった6%でしかありませんでした。93%の人が医療施設で亡くなっています。

これは、在宅を望む人が多くても、それに応える体制が十分ではないことを物語っているものと思います。あるいは、在宅が可能であることの情報が十分に伝わっていないことを示すと言い換えることができると思います。実際の在宅療養は病院からの退院後に始まることが多いと考えますが、退院時の主治医の頭に在宅医療という選択肢がないことが、在宅を希望しても在宅につながらないことに影響していると考えます。少なくとも、在宅医療が満足できる医療形態ではないと考える病院の医師が多いのではないかと思います。いずれにしても、在宅医療の正しい情報が、必要とする人たちに十分伝わっていないといえるのではないでしょうか。

在宅ケアのネットワークは、その情報発信のために必要と考えます。当ネットワークに参加する方々が情報の発信源となって、担当する利用者や患者に対してのみならず、勤務する施設の職員に対しても必要な情報を提供していくことが第一に重要だと思います。そのためには、在宅ケアや当ネットワークに関する情報を共有することが必要です。当ネットワークでは定期的な症例検討や研修会を行い、その情報共有化を図っています。また、ネットワークに参加する医療機関や施設についての情報も重要です。当ネットワークでは、会員の情報も公表していますが、今後、この会報を通して、それらの情報を提供することを考えて行きます。

今年度の事業計画の中に、当ネットワーク利用のためのフローチャート作成という目標を掲げました。これによって、利用の仕方だけではなく、ネットワークの会員がどこでどのように関わりを持っているかが明らかになると思います。それを見れば、どのように利用すればいいかがだれでもすぐに分かることになると思います。

Ⅱ 在宅ケアネットワークフローチャートの素案ついて

 

 在宅ケアサービス提供に関わるフローチャートを作成することによって在宅ケアネットワーク古河の機能を明らかにすると同時に、当ネットワークに関わる医療機関、事業所、施設、そして個人にいたるまで、どの段階でどのように関わることができるかを明らかにすることができると思われます。むしろ、各事業所や各人が、フローチャートのどの段階でどのように関わるかを明確にすることを目的とすると言うほうが適当かもしれません。そのようなことを目的としてフローチャートを作成したいと考えます。

 以下に素案を記します。

 

1 病院から在宅へ移行する場合

1)     退院前(入院中)

 患者・家族の意向を確認した上で、病院CW、ケアマネ、および在宅で関わる専門職との情報共有化を図った後に在宅診療開始。できれば、最後まで在宅を続けるか、最後は入院するかについて、その時点での患者・家族の気持ちを確認する。また特に、食べることに関する問題点について、歯科医からの情報の提供のあり方を検討する。

  <在宅診療医の選定>

在宅診療医については、次の三通りが考えられる。

(1) 病院医師が在宅診療を行う場合

(2) 元の主治医が在宅診療を行う場合

(3) 在宅診療医を新たに探す場合

 ・在宅ケアネットワーク古河へ連絡

・身近な在宅診療医と交渉

<情報の共有化>

  情報の共有化のための作業は、次の通りが考えられる。

(1) 退院前カンファによる場合

(2) 情報提供書による場合

(3)   情報提供のない場合┅┅緊急時もこれに当たる

 

2)     在宅診療開始後

  <患者の状態とニーズの再確認とその情報の共有化>

    患者の状態とニーズの変化に合わせて適宜行う。特に、最終末期の食の重要性を考え、この時期からの口腔ケアの在り方について検討する。

 

3)     看取り

  <最後の場所の確認>

    最期をどこで迎えるかを再確認する。しかし、それはいつでも変更可能であることを伝える。

  <最後の時期の口腔ケア>

    最後まで好きなものを食べられるような口腔ケアのあり方を検討する。

 

2 在宅から訪問診療の依頼のあった場合

    訪問・介護職等から、あるいは家族から依頼のあった場合、本人の意向を確認の上、情報提供の有無によって対応を分ける。

  <情報提供のある場合>

・「病院から在宅へ移行する場合」の、「在宅ケアネットワーク古河へ連絡」、および

「情報提供書による場合」と同じ。

  <情報提供のない場合>

・「病院から在宅へ移行する場合」の、「在宅ケアネットワーク古河へ連絡」、および「情報提供のない場合」と同じ。

 以上です。会員のみなさまのご意見をお待ちします。