平成26年度研修会「地域で支える認知症」
〜茨城県ケアマネジャー協会古河地区会との共催〜
       (11月16日古河福祉の森会館)

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T特別講演 「認知症の理解と援助〜認知症になっても暮らし続けられる街づくり〜
                                                川崎幸クリニック院長 杉山孝博
1.認知症とは
 一度獲得した知的機能(記憶、認識、判断、学習など)の低下により、自己や周囲の状況把握・判断が不正確になり、自立した生活が困難になっている人の状態。つまり、「知的機能の低下によってもたらされる生活障害」

2.認知症をよく理解するための9大法則・1原則
 認知症の介護において最大の問題は、症状の理解の難しさにある。それを理解しやすくし、上手な対応が可能になるように工夫したもの。

1)第1法則:記憶障害に関する法則
・記銘力低下:話したことも見たことも行ったことも、直後に忘れてしまうひどい物忘れ。このため同じことをくりかえす。
・全体記憶の障害:体験したことの全体を忘れる。一部分だけは、通常の物忘れ。
・記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れて行くのが特徴。昔のことはよく覚えている。

2)第2法則:症状の出現強度に関する法則
 より身近な者に対して認知症の症状が強く出る。子ども帰りの症状。他人の言うことは聞く。

3)第3法則:自己有利の法則
 自分にとって不利なことは認めない

4)第4法則:まだら症状の法則
 正常な部分と認知症として理解すべき部分が混在する。

5)第5法則:感情残像の法則(感情の鋭敏化)
 言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れるが、感情は残像のように残る。理性が失われ、感情の世界に。
 ほめる、感謝する、同情する、共感する、誤る、上手に演技をするなどの対応が必要。

6)第6法則:こだわりの法則
 ひとつのことにいつまでもこだわり続ける。説得や否定はこだわりを強めるのみ。本人が安心できるように持っていくことが大切。割り切ることが大切と言える。
 @こだわりの原因をみつけて対応、A自然のまま、そのままにしておく、B第三者に登場してもらう(とくに社会的地位のある人)、C関心を別に向ける(食べ物は切り札)、D地域の協力理解を得る E一手だけ先手を打つ、
F本人の過去を知る、G長期間には続かないと割り切る

7)第7法則:作用・反作用の法則
 強く対応すると強い反応が返ってくる。「押してだめなら引いてみる」第5法則を思い出してうまく対応を!

8)第8法則:認知症症状の了解可能性に関する法則
 老年期の知的機能低下の特性から、すべての認知症の症状が理解説明できる

9)第9法則:衰弱の進行に関する法則
 認知症の人の老化のスピードは非常に速い。正常の2〜3倍。認知症の高齢者の4年後の死亡率は83%。

10)介護に関する1原則
 認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実にギャップを感じさせないようにする。

U指定発言「認知症を支える現場の声」
1.伊藤さん
 義母が認知症。初めは本人はもとより自分も認知症とは思えず、そのまま時間が過ぎた。ただ、今までやっていたことができなくなったことを、家族以外から指摘されて、診察を受ける気持ちになり、診断された。最近は、自分にはできないことのあることが分かるようになってきた。お姉さんがデイサービスを利用しているので、「きょうはおばさんと約束があるわよ」などとごまかしてデイサービスに行かせたりしている。いろいろな工夫と、うまいごまかしでなんとか介護を続けている。

2.篠崎さん
 母親が認知症。現在は、ほぼ寝たきり。最初はひとの世話になることを拒否していたが、からだが言うことを聞かなくなった最近では、介護保険のサービスを受けている。テレビが好きで、もともとはサスペンスものが好きだったが、いまではアンパンマン。子ども返りしている。大事なことは笑いを絶やさないこと。できるだけ母親の笑いを誘うようなこと考えてやっている。そうすると母は満足そうに笑っている。これを続けるつもりだ。

3.杉山先生の評
 どちらも認知症の親の気持ちを理解して、工夫をこらしうまく介護していると思う。