菊の種蒔き

−  菊 および 野菊 −

(イエギク ノジギクなど)



「イラスト工房ユニ」の園芸

種まきは多くの方々がさまざまな草花ですでに十分経験されていることと思いますが あまり自信のない 方々のために  種まきの方法の一例  を簡単に記載します。

種まきの時期はある程度限定され15-20℃の範囲なので  地域により違いますがおおむね4月中下旬ー5月中旬あたり で それ以外では発芽が難しいのでご注意ください。
ただし冬季に簡単に発芽させる方法もあります。   ページ最後方で記します。

枯れた菊の花には多くの種子が宿っています。  
左図の ”筒状花” と言われるものの下部に種子があり そっと花をすりつぶします。    枯れた筒状花の下の端に種子が ついています。
拡大鏡でもよく見えないほど小さいので くっつきあった頭状花を指先でほぐして拡げて 頭状花のついたままカンで散らすように蒔くことになります。
健全に枯れた花なら10個以上は発芽可能な種子があるはずです。  
(繁殖のメカニズムについて当ページ下に <註> あり)
なお外側の花としての見栄えを作っていた ”舌状花” の下には種子はついていません。
インターネットなどで購入したものなら 種子以外の余分なものは入っていない場合が多いと思われるので迷うことはありません。  
いずれにしろ非常に小さなものです。

野菊 栽培菊(園芸菊)ともに発芽適温は15−20℃です。   
ノジギクなど野菊の場合は適当な山野の土でも十分ですが 栽培菊は市販の「 種まき用土 」を使用するのが無難です。

下図は土を入れた苗床の例です。 

左は育苗用ビニールポットに土を入れたものです。 
右はお皿に白いテイッシュペーパーを細かく千切ったものを入れたものです。  発芽状況がよく観察できます。
どちらにするにも 十分に湿らせます。 
1ポット当たり枯れた花一つ が適量でしょうか。    種子をこわさないように丁寧にすりつぶしたものを全体に散らせるよう に播きます。
購入した種子の場合は適量。     (種子業者からは育苗ポットあたり 2−3粒 と推奨されているようです)



湿り気を欠かさないように毎日丁寧に水を与えてください。  7−10日間で下記のようにたくさん発芽してきます。  



芽が少し育ってきたらゆったりした所へ植え替えることになります。   あまり早すぎると芽がつぶれるおそれがあるので 発芽後20−40日くらいが妥当です。   
この段階では 芽はまだとても小さく弱いものですから つぶれたり切れたりしないように特別な注意が必要です。 
つまようじ 等で芽の周囲をそっとほぐしてから 箸などで 根のあたり をそっとつまみ ゆったりとした場所に移植します。    スプーン を使って移植するのも良いかもしれません。      下図参照。
なるべく少しはもとの土のついたままんします。
もし出来れば指でそっとつかんで移植することも方法です。
(このあたりは各自の判断によります)

水やりは新芽が絶対に倒れないように注意深く行ってください。  手やスプーンですくって行うかスプレーで吹きかけるのが安全です。
とりあえずはビニールポットに仮植えして 或る程度育ってから本格的な所に本植えする方法が無難です。   この場合 1ポット 当たり一輪とするほうが移植する際に便利です。 
 

数日たって安定してきたら  液体肥料のとても薄くしたものをごく少量与えると成長を早めることができます。    (ハイポネックスの場合なら 800-1000倍液をごく少量)
この場合 液肥が濃い過ぎるとせっかくの新芽が枯れてしまいますので十分注意してください。

当初の成長はじれったいばかりに遅いのですが・・・
或る段階まで育った後は急速に成長し 同じ頃にさし芽をしたものを軽々と追い抜いて しまいます。  (さし芽は失敗の少ない良い方法ですが成長が遅いのが欠点です)
さし芽のものより ”バランスの取れた美しい姿” の株に育ちますので 種まきを推奨します。
種から育てるとまるで自分の子供のように愛着が深まるというものです。

本植えする時は育ったポットの中の土ごと移植するのが無難です。  一ポット一輪で育てるのはこの理由によります。

<註> 種子についてのご注意
種まきには

十分な日光を浴びて健全に育った花のもので
しかも自然の状態で枯れたもの

を使用してください。
日光の少ない場所で育った花のもの
開花中の花を切って乾燥させたもの
などは発芽しない場合があります。

種子の入手
菊は非常に人気の高い花卉にもかかわらず 最近は種子は園芸店で販売されていることが少ないようです。
栽培している方から枯れた花を頂くか ネット通販で購入するしかないようです。    ネット通販では多くの業者が良い 種子を販売しているようです。
( 発芽率が悪いのであまり推奨できませんが  花店で生け花用か仏花用として売られている ”切り花” で気にいった 花を購入し 丁寧に枯れさせたうえで種子をとるのも一つの方法かもしれません。  成功率はかなり低いのですが試してみられては 如何でしょうか )

購入した種子の場合 1ポット当たり3粒ほど蒔き 芽生えてきたら元気なもの一つを残して間引く方法が良いと推奨されて いるようです。   しかしせっかく芽生えたものを間引くのはもったいないので ここは各人の判断により適宜に対処 してください。   

<註2> 種まきの期間について
種子は気温が20℃をかなり超えた場合には発芽しないことがあります。
気温が15℃以下の場合も発芽が難しいので 種まき期間はある程度制約されることにご注意ください。  ただし・・・ ↓

<註> 冬季に種まきはできないのか?
特別な装置は無くても 居間など長時間 20℃ほどに暖房がなされている部屋に種まき床を置くと 種子は春と 間違えて発芽してきます。
簡単なことですね。   ぜひお試しください。
(ただし暖房が切れる夜間の温度が極端に下がる寒冷地では発芽が難しい場合があります)
春が近くなり屋外の最低気温が12−13℃を上回るようになったら 屋外の日当たりのよい場所においてください。   成長の ためには日光をあびることがとても重要です。


<註>  菊の花の繁殖について
キクの花は多くの小花の集まりなのです。  それぞれ多くの小花を持つ 舌状花と筒状花 の2種によって構成されます。      こうした 小さな花の集まりが一個の花に見えるものを  ”頭状花序”  といいます。  略して 頭花。

繁殖は真中にある ”筒状花” によって行われ花としての見栄えの中心である外側の ”舌状花” は繁殖には関係しません。 
筒状花にオシベとメシベがあります。  メシベの下方に子房があり受粉した花粉が下ってきて子房の中の胚珠にある卵細胞と出会って 受精します。
受精卵は 胚 と呼ばれ胚を包んだ 胚珠 といものが種子になります。

菊は野菊を含めて 見れば見るほどその精密な構造には驚かされますね。
最も分化し進化した植物といわれています。




菊は気品が高く美しい花です。   愛情をもって育てていただきたいものです。
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<註>
種まきの方法を述べてきましたが・・・
種子の成熟が悪く発芽しないケースが少なくないので 繁殖のためには種まきよりも 挿し木 のほうが確実です。


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