『水のエイリアン』

地球は崩壊していた
地球外より飛来したエイリアンが生きるものを食い尽くし、
人々は恐怖に満ちた日々を送っていた
エイリアンの姿形は人型をしている
一つ違うのは全身が水で覆われていた
そう…、人々が恐れた死の水が彼らの血なのだ
しかし、攻撃は弱く、脆い体質をしている
では、なぜ恐怖かと言うとその水を浴びたり、触れたりすると
水によって感染して同じ体質になってしまう
最後はエイリアンとなって、人々を襲うのだ
俺は残り少なくなった人類の1人として戦っていた
獲物は棍棒のみ
彼らの皮膚は風船みたいに膨らんでいる
それを破ればあっという間に破裂してしまうため、
武器は大層なものでなくてもいいというわけだ
「また現れたぞ!」
暗雲に包まれた大地から声が聞こえる
彼らは雨が降るたびに復活する
これではキリがない
されど、放置しておけば人類は全滅する
俺は親友と一緒に一定の間合いを開けながら、
エイリアンを一体一体倒していく
恐怖など考えている余裕がなかった
親友が感染してしまうまでは…

ある日、俺は親友の妹と一緒にいた
白い壁の家の中だ
外は雨が降り続いている
もう1年も止むことがない死の雨だ
かといってどしゃ降りというわけではなく、
シトシトと降る程度の小雨だ
それでも、エイリアンにとっては十分な力水だった
栄養を蓄えた彼らは人類に総攻撃をかけた
俺たちと同じ方法で皆は戦い続ける
最後の砦を守っていた俺は前線に視線を送る
その眼前には親友が戦っていた
前後を守ることでエイリアンの力を分散する策に出たのだが
それが裏目となって返って来た
親友が一瞬の隙を突かれて死の水を浴びてしまったのだ
俺は思わず叫んだ
震えながら振り返る親友の双眼からは涙がこぼれ落ちる
「あとは頼む」
そう聞こえた
俺は妹に何も告げずに親友に近づく
親友は下半身から徐々に水化していく最中だった
何と声をかけたかは覚えていない
でも、水化を抑えることは不可能だった
せめて、太陽が大地を照らすことができれば
エイリアンの進撃も止まるだろうに…
「殺してくれ」
親友の最後の言葉だった
俺は涙を流しながら、棍棒で親友の体を打ち抜いた
その直後、親友は他のエイリアン同様、風船のように破裂して
大地を濡らしていった…

その後も俺は戦った、戦い続けた
結果は圧倒的に不利であっても、
残された親友の妹を守るべく戦った
そして…
「光だ!光が!?」
誰かが叫んだ
暗雲の隙間から光の筋が大地を照らし始めたのだ
太陽の光を浴びたエイリアンは体を蒸発させていく
終わった…
そう確信した
長い戦いはようやく終わったと確信したのだ
俺は全てを見届けることなく、砦に戻った
皆の顔が笑顔になっている
泣いている者さえいた
喜びを隠せないのだ
しかし、俺は喜ぶことができなかった
失ったものが多すぎたためだ
死んだ親友の妹も同じ気持ちだったのか、じっと天空を見つめている
俺は彼女に近づいた
そこで、ようやく緊張した表情から穏やかな表情に変わった
彼女から何か言葉が発せられるが聞き取りにくい
俺もまた何年ぶりかの太陽を全身に浴びた…

夜が明けた…
真夏なのに涼しく感じる
早朝とはそういうものだと初めて感じた
2日に渡って見た夢は俺に何かを与えた
そんな気がした…


夢を見続ける

夢から覚める


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