『ゾンビ』

人は誰しも若返りたいと願う
そんな願いを込めて
ある科学者がある装置を造った
壁に備えつけられた白い箱だった
中を開くと人が1人入られるようになっている
入れると言っても体を小さく丸めなければならないが…
それでも、確実に若返りができると信じた者たちがいた
彼らは僕の目の前で次々に興味を示す
奥にはそんな好奇心で覆われた大勢の人がいる
僕はそんな人たちを見ていられなくなった
老いは誰しも勝てない
そんな言葉が飛んできそうだったからだ
ホールからテラスに出た
広いテラスで向こうは光の加減なのか白かった
いや、白という空間だけがそこにあって、
それ以外は何もなかったように思える
景色がないのだ
ここはそういう場所なのかもしれない
柵に行こうとしたとき、1人の男性が歩いていた
歩くというよりふらついていた
ボロボロの服を着ている
僕は後ろから眺めていたが前に回ってみると…
顔は青白く…
皮膚は赤から紫のような色で…
血管は剥き出しになり…
片目は落ち…
歯は牙のような鋭さになっていた…
僕は驚いた
まるでゾンビのような姿だったのだ
誰かに知らせないと…っと思い、ホールに戻る
戻った視線にはまた1人装置の中に入ろうとしている
僕はそこに近寄った
科学者たちが笑っている
声をかけようとするがどうしたことか声が出ない
あのゾンビの存在を知らせたいのに…
科学者たちは僕の存在に気づいていないのか
まったく無視している
老人が体を屈め、装置が幾重にも蓋がされる
蓋は自動的に閉まるようだ
入る意志がない者が入ったら、拷問になるだろうか…
出てくる人がどんな若返りをするのか興味が湧いた
それと同時に不安も感じた
科学者たちは自信に満ち溢れているのか笑みを浮かべている
けれども、その笑みは僕から見れば
本心から笑っていないように思えた
その答えがまもなく出た…
装置の扉が開かれる
体を屈めた老人はそのまま動かない
ふと視線をホールの奥に向けた瞬間、
僕は驚きと恐怖に覆われた
そこにいたのは全員老人ではなく、ゾンビだったからだ
あのテラスにいたゾンビとまったく同じ姿だったのだ
僕はそこから逃げ出したくなった
でも、足が動かない
科学者たちは尚も笑っている
明らかな意図を感じて…
そして、また1人、服がボロボロのゾンビが装置から出てきた
この装置は若返るどころかゾンビ精製装置だったのだ
科学者が僕のほうを振り向く
ようやく、存在に気づいたようだ
手を差し伸べながら言う
「さあ…、次は君の番だよ…」
そう言った瞬間、彼らもまたゾンビと化した
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――…」

そこで目覚めた…
そろそろ夜明けのようでわずかに明るかった
僕の心臓はバクバク鳴っていた…


夢を見続ける

夢から覚める


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