−プロローグ-
EARTH&MOON
『殲滅の記憶』(since:2005/02)
 
 ―序章― 


 裂ける音。
 それは耳障りな音。
 前兆を感じる前に小さく裂ける。
 亀裂は、いつも気づかないうちに走っている事が多い。小さなひび割れの時に気づけば大事には至らないが、大抵の人々は動いてから、はじめて気づく。
 知り尽くしていると思い込んでいる日常。
 その中の小さな、とても小さな変化。
 日常の中に埋没する傷が、ゆっくりと長さと深さを増していき、いつのまにか形を変えてしまう。
 やがて、すっかり変化の中の一部と化してしまう。
 日常の生活に埋没している間も、日常は常に、うねり続けている。
 変化は良いことばかりではなく、どちらかというと大抵は悪いことである。
 悪いことは嫌で、悪いことは排除したい。
 しかし抗ってみても、僅かな抵抗に過ぎないのが現実だ。
 それでも、そうと分かっていても、抗うために戦う者は必ず居るだろう。
 そして、そのうち気づいてしまう。
 抗う行為に意味を求めるのが虚しいことに。
 だって。
 だって、あなたが気づいた時には、たぶん死を迎えているから。


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