Q&A



  ・臨床心理士とは?
「臨床心理士」とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の”こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。
日本には心の問題に取り組む職種として、心理カウンセラー、サイコセラピスト、心理相談員などの名称で呼ばれる人々がいますが、それぞれに明確な資格があるわけではありません。
それに対して「臨床心理士」は、文部科学省の認可する財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる“心理専門職の証”となる資格です。
また、さらなる自らの心理臨床能力の向上と、研鑽に精進するために、「臨床心理士倫理綱領」の遵守、5年ごとの資格更新制度などが定められています。
(「日本臨床心理士資格認定協会HPより抜粋)

  ・カウンセリングの期間はどれくらいかかりますか?
1回の相談で納得される方もいらっしゃいますし、短い期間で良くなっていかれる方もおられます。また、10年以上通ってこられる方もおられ、人によって様々です。

  ・面接の頻度はどれくらいですか?
原則として週1回が理想的ですが、毎週が無理な場合は、2週に1回来ていただいています。ご事情によっては、3週に1回や月1回の場合もあります。

  ・カウンセリングの終わりはどのように決めるのですか?
症状はなくなっても心の作業は一生をかけて行うものです。来談者の方が納得されるまで続けることができます。
カウンセラーがいなくてもやっていけると思われた時が、終わるタイミングと言えるでしょう。
もちろん相性がありますので、合わないと思われたら遠慮なくおっしゃってください。

  ・医療機関に通いながら、カウンセリングを受けることはできますか?
もちろんできます。    

  ・カウンセリングを受けると必ず治りますか?
必ず治るとは言えませんが、続けて来ていただくと、以前より生きやすくなったり苦しみや症状と折り合いをつけることができるようになっていきます。

 ・ホームページに、夢について話し合うこともあると書いてあったので、ネットで夢分析について検索したところ、夢分析は長くかかると書いてあったので心配ですが、大丈夫でしょうか?
もっともなご心配だと思います。当カウンセリングスペース宝塚では、夢を大事にした面接を行っていますが、必ずしもすべての方に夢をお聴きしているわけではありません。
夢を見ないという方もおられますし、夢など非科学的だと思われる方ももちろんいらっしゃるでしょう。
夢についてお話いただけなくても面接は進んでまいりますので、どうかご安心ください。
また、期間のことですが、夢をお話しいただいた面接の中で最も短い期間で良くなられた例として、自殺未遂経験のある不登校の高校生の方で、週に1回の面接で5回で登校されるようになったケースがあります。
もちろん、夢についてお話しいただいた方が皆早く良くなられるわけではなく、長い期間来てくださっている方もおられます。私の経験では、面接の期間は夢をお話しいただくか否かということには左右されないと感じています。
   
 ・箱庭療法とは?
箱庭療法とは、砂の入った新聞紙を広げたくらいの大きさの箱の中に、木、花、人、動物、、マリア像、観音像、阿修羅像、お地蔵様、神社仏閣、教会等建物、家、乗り物、波、火山、虹、家具、シルバニア、レゴ等々のミニチュアを置き、何かを表現したり遊んだりすることを通して行う心理療法です。
この療法は、1929年、ロンドンの小児科医M.ローエンフェルトによって創始され、スイスのD.カルフがユング心理学の考え方を取り入れながら発展させました。
日本には、1965年、河合隼雄が導入し、その後急速に広がって、現在では教育センター、学校のカウンセリングルーム、病院、大学の心理相談室などで広く使われています。
箱庭療法は、当初は、主に子どもさん向けの治療法として用いられましたが、今では子どもさんからご高齢の方まで、幅広く行っていただいています。
箱庭療法が特に適しているのは「心身症」の方です。ストレスによって、様々な身体症状が出てしまうのですが、この方達は、ご自分が抱えているストレスに気づかれることが不得意で、さらに、それを言葉によって表現することも苦手とされていることが多いです。この方達が箱庭で何かを表現していくと、自然にご自分のストレスに気づき、改善していかれることが多いです。
心身症以外の方でも、「自分の本当の気持ちに気づくのが苦手」、「それを表現するのはもっと苦手」といった方に、箱庭療法は有効です。さらには病気でなくても、「本当の自分が分からない」「今の自分が本当の自分の人生を歩んでいない気がする」といった悩みがある方が、箱庭に取り組まれることにより、ご自分の歩んでいく道を見つけていかれています。
また、吃音がおありの方、不登校の方、ひきこもりの方(この呼び方は嫌いなので、私は雨宿りをしている方と名付けていますが)も、箱庭を置かれることにより、自己治癒力が活性化され、良くなっておられるのを多く経験しています。
また、発達障害の方の内的世界をこちらが理解させていただく手がかりとしてもとても役立っています。
一方で、重い病態の方に適した治療法ではなく、うつ病の方には薬物療法のほうが有効で、統合失調症の方には禁忌という考え方もあるようです。
しかし、私の経験では、幻覚、妄想、幻聴等陽性症状のある方に、「ここでの面接も盗聴されていたらいけないので、筆談で」と言われ、筆談での面接を長い期間続けた後、十分にクライエントの方と私との関係が樹立できたと思ったタイミングに、「これまで○○さんの外の世界で起こっていることを聴かせていただいたので、今度は、○○さんの心の中の世界も知りたいので、もしよろしければ箱庭を置いてもらえますか?」とお聞きしたら、「いいですよ」とおっしゃられ、その後は、毎回感動するほどの素晴らしい箱庭表現をされ、陽性症状は一切なくなったというケースがあります。精神科を一度も受診されていませんし、もちろん、お薬も一切飲まれていません。
お薬が効かないうつ病の方にも、箱庭療法はとても役に立っています。
箱庭療法で最も重要なことは、急いで解釈等しないで、クライエントと一緒に作品を味わう姿勢です。その際、見守るカウンセラーの存在が特に大切で、見守るカウンセラーによって、表現される内容も全く違ってくるのは当然のことでしょう。

・得意な分野は何ですか?
クライエントの方はお一人お一人違った個性を持っておられるので、得意な分野が何か等とは軽々しく言えないと思っていますがこれまで多くお会いしてきたのは、不登校の生徒さん、特に男子生徒さんとその保護者の方(お母様が圧倒的に多い)です。

また、雨宿りをしている方(世間では”引きこもり”と言われているようですが、私はその呼び方があまり好きではありませんので、このように呼ばせていただいています)ともお会いすることが多くなってきました。

発達障がいの方(私は”人間みな発達障がい”と思っていますので、どこで線引きするのか大変難しいですが)とも長期間お会いしています。発達障がいの方は治らないと言われたりしますが、”発達障がいは発達する”と、神田橋條治先生はおっしゃっています。また、発達障がいの方には、SST(ソーシャルスキルトレーニング)が推奨されているようですが、あまりマニュアル的な関わりをするのには私は抵抗を感じています。現に、『自閉症の僕が跳びはねる理由』等の著書で有名な東田直樹さんは、マニュアルで関わられるのは嫌だ、悩みながら関わってほしいというような主旨のことをどこかで語っておられ、意を強くした記憶があります。私自身、小2から18歳までお会いさせていただいたASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の方とSSTは一切しませんでしたが、かなりお話のやりとりができ、手ごたえを感じることができた経験があります。技法よりもクライエントの方とカウンセラー(セラピスト)との人間関係、信頼関係が治療的に働くのではないでしょうか

最近では、カサンドラ症候群(発達障がいのパートナーを持つ妻或いは夫)の方とお会いすることが増えてきています。

 

・ 心理療法(カウンセリング)とは?

私は、心理療法とはフラスコのような容器の中にクライエントの方とカウンセラー(セラピスト)が入って化学反応を起こすようなことと考えています。

 

心理療法とは、箱庭療法、夢分析、プレイセラピー、言葉を使った面接等を含みますが、カウンセリングというのは、言葉を使った面接と言えるでしょう。

人間に”こころ”があると想定して、心全体を円で表しますと、下の図のようになると考えます。

 

この図をご覧になってみなさんはどのようなことにお気づきでしょうか?

”こころ”全体を円として、意識の部分が小さくて、無意識の部分がとても大きいことに気づかれることでしょう。

すなわち、人間が自分のこころについて気づいていること、意識していることなどごくわずかなのです。

私は、「人のこころなんてわからない。」と思っているのに、分かったような顔をして無責任なことを言う”大人”や”専門家”がおられることにずっと違和感を抱いてきました。クライエントの方のことを分かったかのようにおっしゃったり、決めつけたり、この心理療法の目標は?とか聞いてこられたりすると、とても傷ついてしまう自分がいました。目標なんかセラピストの側が決めてしまっていいのだろうか?という思いがどうしてもあるからです。

そんな時、河合隼雄先生が「人の心はわからない。わからないということを分かっているのが専門家である」というようなことをおっしゃったり、本で書いておられたりするのに接すると、本当に心が救われる思いがしました。

また、河合隼雄先生の師であるC.G.ユングもやはり、「無知はたしかに奨励できるものではない。だがしばしば、最上の知識もまた充分とは言えない。したがって私は、心理療法家に次のように言う。すなわち、何も知らないのだからこれから学ぶ必要がある、と毎日謙虚に思い返さなければならない。」と述べています。また、ユングは、「絶望は、魂を呼び出す切り札である」とも言っています。

このことに関しては、14世ダライ・ラマ法王も「苦しみが慈悲の心を育てる。」とおっしゃっています。

私は常々、「クライエントの方はいい方、心の綺麗な方ばかりで、お会いしていると心が洗われる思いがする」と申しておりますが、クライエントの方は苦しんだり、絶望したりして心理療法を受けにに来られるのですから当然のことでしょう。症状や悩み、困ったことは、自分が自分になること、自分の歩んでいく道を見つけること、魂の旅への入り口なのです。

症状は言わば”無意識からのメッセージ”と考えますので、意識の部分だけでいわゆる”カウンセリング”をしていても、あまり良くならないと考えています。ですから、私は、無意識からのメッセージを感じ取ることができる夢、箱庭、遊び、言い間違い、聞き間違い、勘違い、偶然等をとても大事にしています。こころの一部に過ぎない意識だけで考えるのではなく、無意識を含めた心全体を探求していく方が心豊かな人生を生きることができるのではないでしょうか。

また、よくアドバイスをしてもらえるのかというご質問も受けるのですが、一人ひとり違っておられるのですから、どなたにもあてはまるアドバイスなどもちろんないわけで、先ほどの図のようにフラスコの中に入って心の交流をする中で、生まれてくる言葉…クライエントの方から気づきという形で生まれてくることもありますし、或いはセラピストの方から湧き上がってきて、それをお伝えする場合もあれば、敢えてお伝えしない場合もあります。芸術家の方などは、症状が創造の原動力になっておられる場合もありますので、症状を取り去ってしまうことに慎重にならなければならないことは言うまでもありません。症状があるのはしんどいことですが、魂を高めるためにはむしろあった方がいいものでもあるのです。

 

    ・どうも初めまして。
常々カウンセリングに興味があり、メールをさせてもらいました。

私は40代手前の主婦で、自分の生き方、考え方がいつも同じところでぐるぐるしているので、突破口になったらと希望をこめてカウンセリングを受けてみたいと思っております。

また、働きに行っていないので、有償のカウンセリングは本当に貴重なお金をすり減らして受けるので、できる限り一回一回の費用を無駄にはしたくないと思っています。

ただのお茶飲みにならないか心配です。あえて嫌な言い方をしてしまいすみません。でも本音でぶつかりたいと思っておりますので、どのようなことに悩んでいるのかや、家族構成等あらかじめメールさせてもらうことは可能ですか?


市の無償のカウンセリングには何回か通った事があります。
でも、自分の本質はなかなか変わらないし、環境も何も変わりません。
嘆くのではなく、次に進んで行けるように一緒にサポートしてもらいたいのです。
自分が少しでも前向きに変わって行ける事を期待してます。

乱雑乱筆申し訳ございません。
お忙しいかと思いますが、返信
どうぞよろしくお願いいたします。


私も、三人の娘の子育てに専念している時期、専業主婦をしていましたので、お気持ちとてもよくわかります。率直に書いてくださっているところにも好感を持てましたので、すぐにお返事しようと思いました。

しかし、よく考えるとこのクライエントの方にとってそれはよくないことだと気づきました。と言いますのは、家族構成等やどのようなことに悩んでおられるのかをあらかじめメールでいただくと、この文脈で言えば、費用を無駄にしたくないとのことですから、私もそのお気持ちにこたえてなるべく費用がかからないようにメールでお答えすることになるかと思います。この方は本音でぶつかりたいとのことですが、本音でぶつかるのは、やはり、フラスコの中でないとうまくいきません。自分の身がフラスコの中(心理療法を行う場=面接室)にないメールや電話でのやり取りは、そういう点で危険なのです。現に、私も以前親切心(?)からメールや電話でのやりとりをしたことがありますが、うまくいかず、結局心理療法をやめてしまわれるということになったことがあります。ですので、簡単にどのようなご相談か書いていただくのはもちろんいいのですが、それに対する回答は面接の中でさせていただくというスタンスで今後させていただくことにしました。

また、ただのお茶飲みにならないかご心配とのことですが、私のホームページを読んでいただいた上でそのように思われたとしましたら、私という存在を全く感じ取っていただけていないと感じました。おそらくあなたと私はタイプが違うので相性が合わないでしょう。ですので、もっとあなたが信頼できるカウンセラーのところへ行かれる方がいいと思います。貴方が本音でぶつかってきてくださったので、私も本音で答えさせていただきました。きつい言い方になってしまったかもしれません。申し訳ありませんでした。

 

   ・竹谷さんの臨床を支えているものは何ですか?

それにつきましては、迷いなく答えることができます。小学校教師新任の時と教育実習で出会った生徒さんたち、この方々は現在40代になられていますが、今も訪ねて来てくださり交流が続いています。まず、その方たちとの出会いがなければ今の臨床はなかったでしょう。

次に、私の三人の娘です。私は、山上憶良の「銀も金も玉も何せむに勝れる宝子に及かめやも」という歌が、何故か中学時代に教科書で出合ってから大好きで、その通りになったことをとても喜んでいます。

そして、これが一番大事なところなのですが、これまで出会ってきたクライエントの方々です。河合隼雄先生は、「クライエントから学ぶ」とよくおっしゃっていましたが、いつも学ばせていただいています。

そして、それを下から支えるものとして、河合隼雄先生とC.Gユングのご著書、河合隼雄先生との箱庭療法、夢分析、スーパーヴィジョン体験、そして、私自身のハードな生い立ち、おそらく波乱万丈の人生であることを記しておきます。