宇宙の大きさと時間


宇宙の大きさの時間変化(発散型宇宙モデルの場合)  今までの観測結果によると、百数十億年前に起きたビッグバン以来、宇宙は膨張を続けているそうです。
 すると、宇宙の大きさの時間変化は、右図の青い線のようになるはずです。

 宇宙が永久に膨張を続ける場合(発散型宇宙モデルの場合)を考えてみましょう。
 私たちが生きている現在の時点が右図のa点(注1)とすると、私たちは、無限に長い宇宙の歴史のほんの最初の時期にいることになります。 これは、確率的に考えて極めて稀なこと(ほとんど有り得ないこと)ではないか? と思えたりします。しかし、私たちが、右図の a点、b点、あるいは、どこにいたとしても、ビッグバンから現在までの時間は有限で、現在から将来に伸びる時間は無限ですから、 私たちがどの時点にいてもおかしくない、と考えることができます。

 ただ、この宇宙において、無限の時間が在り得るのでしょうか?
 それとも、時間は有限である、すなわち、遠い未来において時間が停止するのでしょうか?

 ところで、現在の私たちは、ビッグバンから百数十億年しか経っていない、宇宙の初期にいることになります。しかし、ビッグバン後に できた最初の星々では、水素やヘリウムを始めとする、原子番号の小さな原子だけでできていたので、生命を誕生させるような複雑な分子は うまれ難かったと思われます。
 ちなみに、人間の体に必要な原子のうち、鉄よりも原子番号の大きな原子には、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、沃素など(注2)がありますが、これらの原子は、星の終焉に起きる超新星爆発の際に初めてできます。超新星爆発の後、やがて、その星間ガスなどが 収縮して、再び、星々ができますが、この第2世代の星々(或いはそれ以降の世代の星々)で、人間のような高等生物が生まれたのではないか、 と考えられています。
 また、時間が有限かどうかはさておいて、今後、宇宙の膨張が続くとすると、やがて、非常に長い時間が経過した後、全宇宙の陽子や 中性子が崩壊し尽くすため、星も生命も全く存在できなくなるでしょう。

 以上のようなことから、ビッグバンから百数十億年経った現在は、もしかすると、人間のような生物が存在する確率が最も高くなる 時期なのかもしれません。もし、そうであるなら、時間が有限であってもなくても、どちらでもおかしくないような気がしてきます。

 ちなみに、2002年に出版された『宇宙のエンドゲーム』(注3)では、宇宙は以下の5つの時代を 経過するであろう、と推測しています。

1.原始の時代      (宇宙の始まりから、およそ 10-50年から 105年までの間)
2.星たちが輝く時代   (宇宙の始まりから、およそ 106年から 1014年までの間)
3.縮退の時代      (宇宙の始まりから、およそ 1015年から 1039年までの間) (※)1039年は、陽子崩壊により、バリオンが消滅し尽くす時期
4.ブラックホールの時代(宇宙の始まりから、およそ 1040年から 10100年までの間) (※)10100年は、ホーキング放射により、ブラックホールが蒸発し尽くす時期
5.暗黒の時代      (宇宙の始まりから、およそ 10101年以降)


(注1) 右図では、宇宙膨張の大まかなイメージとして、『上に凸』の形(減速膨張)の曲線で表現しました。
     しかし、近年の宇宙観測結果に依れば、約50〜60億年前から現在(右図のa点)に至る期間において、宇宙は加速膨張しているそうです。
     従って、a点の約50〜60億年前からa点付近までの曲線を正しく描くなら、『下に凸』の形(加速膨張)にならなければなりません。

(注2) 人間の体に必要な元素は、原子番号順に
        水素(H)、硼素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、弗素(F)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、燐(P)、
        硫黄(S)、塩素(Cl)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、
        銅(Cu)、亜鉛(Zn)、砒素(As)、セレン(Se)、臭素(Br)、モリブデン(Mo)、沃素(I)

     の28種類である、と言われています (※ 参考資料 : Wikipedia 『必須元素』)。なお、各元素の原子番号などについては、『周期表』をご参照願います。

(注3) 『宇宙のエンドゲーム』 フレッド・アダムズ+グレッグ・ラフリン 著 竹内薫 訳 徳間書店 2002年
     (原書:The Five Ages of the Universe by Fred C. Adams and Gregory Laughlin 1999年)



宇宙の大きさの時間変化(振動型宇宙モデルの場合)  今度は、宇宙が膨張と収縮を繰り返す場合(振動型宇宙モデルの場合)を考えてみましょう。
 私たちが生きている現在の時点が右図のa点とすると、私たちは、振動型宇宙の膨張期にいることになります。
 なぜ、私たちは、ピーク期(b点)や収縮期(c点)にいないのでしょうか? 確率的に考えれば、どの時点にいてもおかしくない ような気がします。
 考えられる可能性として、人間のような高等生物が生存できる時期は、膨張期に限られるのかもしれません。
 また、振動型宇宙モデルでは、収縮期はビッグクランチで終わり、その直後、ビッグバンが起こって膨張期が始まることになりますが、 ビッグクランチとビッグバンの間では、時間が断絶してしまう(時間が存在しない状態を挟む)ような気がします。

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