定負曲率の二つ穴トーラス


二つ穴トーラス  「平坦トーラス」と同様、「定負曲率の二つ穴トーラス」について考えてみたいと思います。

 まず、右図のように、対向する辺の対A、B、C、Dをもつ八角形を考えます。AとA、CとCを接続すると、一つ穴トーラスから菱形(B、Dの 各2辺から成る菱形)を刳り抜いた曲面となります。つぎに、BとB、DとDを接続すると、二つ穴トーラスが出来ます。なお、この過程で、八角形の 8つの頂点Pは一つにまとまり、二つ穴トーラス上の或る点Pとなります。また、以上の操作は、3次元ユークリッド空間内で行うことができます。




 ところで、ホイットニーの埋め込み定理(Whitney embedding theorem)を用いると、任意のm次元可微分多様体(m次元C級多様体)は、 2m次元ユークリッド空間の中に等長的に埋め込むことができます。よって、任意の2次元可微分多様体(2次元C級多様体)は、4次元 ユークリッド空間の中に等長的に埋め込むことができます。また、1階導関数が連続なら、ガウス曲率が定義できるので、一定のガウス曲率をもつ様な 多様体は、可微分(C級)多様体です。したがって、定負曲率の二つ穴トーラスは、4次元ユークリッド空間の中に等長的に埋め込むことが できます。そして、このことを具体的に説明すると、以下の様になります。

定負曲率の八角形

 まず、曲面上のあらゆる場所におけるガウス曲率が−1となる様な定負曲率曲面は、或る等角写像により、円板に射影することができます。これを ポアンカレ円板模型(Poincare disk model)と呼びますが、右図の様なポアンカレ円板模型上の八角形を考え、対向する辺の対A、B、C、Dを同一視すると、 閉じた定負曲率曲面となります。

 なお、この八角形は、右図からわかる様に、π/8、π/3、π/2 を内角とする三角形96個から構成でき、この様に96個の三角形から成る定負曲率曲面の ことを、ボルツァ面(Bolza Surface)と呼びます。ここで、π/8+π/3+π/2=23π/24<π となるので、この三角形は、定負曲率曲面上に存在するもの であり、この三角形の各辺は、定負曲率曲面上の測地線(平面上の直線に相当)であることがわかります。












定負曲率の二つ穴トーラス

 右上図の八角形において、定負曲率を保ちながら、AとA、CとC、BとB、DとDを接続すると、定負曲率の二つ穴トーラスとなります。ここで、 この様な操作は、3次元ユークリッド空間内では実行できませんが、4次元ユークリッド空間内であれば、実行できます。すなわち、定負曲率の二つ穴 トーラスは、4次元(以上の)ユークリッド空間において実現できます。右図は、そのイメージ図です。右上図における八角形の8つの頂点Pは、右図に おいては、一つにまとまり、定負曲率の二つ穴トーラス上の或る点Pになります。

 以上の様に、定負曲率の二つ穴トーラスは、4次元ユークリッド空間内で実現することが出来ます。よって、4次元ユークリッド空間を表す4つの 座標軸 x, y, z, w を変数とする或る関数によって、定負曲率の二つ穴トーラスは表せそうな気がします。しかしながら、代数関数、三角関数、指数関数、 双曲線関数などの既知の関数を用いて、定負曲率の二つ穴トーラスを表すことは難しい様です。


参考資料: ・Wikipedia 『可微分多様体』、『Whitney embedding theorem』、『ガウス曲率』、
             『ポワンカレの円板モデル』、『Bolza surface』


【 追記 】

 ところで、定負曲率の二つ穴トーラスとは少し異なりますが、定負曲率の曲面(双曲面)であれば、6次元ユークリッド空間内で、既知の関数を用いて 実現することができます。具体的には、以下の通りです。

 まず、例えば、u をパラメータとして、以下のように関数や定数を定義します。

双曲面関連の数式1

すると、以下の u v をパラメータとする x i (i=1〜6) で表される曲面は、ガウス曲率がどこでも −1である定負曲率の曲面(双曲面)となります。

ここで、x i (i=1〜6) は、6次元ユークリッド空間における互いに直交する6つの座標軸です。

双曲面関連の数式2

参考資料:・https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN362162050_0059?tify={"pages":[225],"view":"info"}

トップへ戻る