いろいろな級数
ここでは、いろいろな級数を紹介してみたいと思います。
1つ目は、無限和が円周率を4で割った値になる級数です。
1-1/3+1/5-1/7+1/9-1/11+・・・・=Σn=1〜∞ (-1)n-1/(2n-1)=π/4
(式1)
これは、1673年にライプニッツが発見した公式ですが、実際には、1400年ころ、マーダヴァ(インドの数学者)により、最初に
発見されています。
この(式1)は、次のようにして導くことが出来ます。
まず、tanθ=x とおくと、三角関数の公式などから、dθ/dx=1/(1+x2)=1-x2+x4-x6+x8-・・・・・
となります。そして、この式の両辺を x について不定積分すると、
θ=x-x3/3+x5/5-x7/7+x9/9-・・・・・と言う式になります。θ=π/4 の時、x=tan(π/4)=1 なので、
θ=π/4、x=1 をこの式に代入すると、(式1)が得られます。
2つ目は、無限和が円周率の2乗を6で割った値になる級数です。
1+1/22+1/32+1/42+・・・・・=Σn=1〜∞ 1/n2=π2/6
(式2)
これは、1689年にヤコブ・ベルヌーイが提示したバーゼル問題への解答として、1735年にオイラーが発見した有名な公式です。
この(式2)は、次のようにして導くことが出来ます。
まず、三角関数 sin x の級数展開の公式:sin x=x-x3/3!+x5/5!-x7/7!+・・・・・の両辺を、x で割って、
(sin x)/x=1-x2/3!+x4/5!-x6/7!+・・・・・ と言う式を作ります。
この式は、x=±π、±2π、±3π、
・・・ の時に、0 になります。このことから、右辺は、次のように因数分解できるはずです。
(sin x)/x=(1-x/π)(1+x/π)(1-x/(2π))(1+x/(2π))(1-x/(3π))(1+x/(3π))・・・・・ そして、この式の右辺を変形してゆくと、次のようになります。
(sin x)/x=(1-x2/π2)(1-x2/(22π2))(1-x2/(32π2))・・・・・
=1-(1/π2+1/(22π2)+1/(32π2)+・・・)x2+(・・・)x4-・・・・・
この式と因数分解前の式の x2 の係数どうしを比較すると、
1/3!=1/π2+1/(22π2)+1/(32π2)+・・・ なので、この式の両辺にπ2を掛ければ、
(式2)が得られます。
3つ目は、無限和が ln 2 になる級数です。(※ ln は、自然対数(ネイピア数 e(=2.718281828・・・)を底とする対数))
1-1/2+1/3-1/4+1/5-1/6+・・・・=Σn=1〜∞ (-1)n-1/n=ln 2
(式3)
これは、交代調和級数と呼ばれるものです。
この(式3)は、ln(1+x) から容易に求めることが出来ます。ln(1+x) をテイラー展開すると、ln(1+x)=Σn=1〜∞ (-1)n-1/n・xn
(発見者:1668年 ニコラス・メルカトル) となるので、
この式に x=1 を代入すれば、(式3)が得られます。
4つ目は、無限和がネイピア数 e(=2.718281828・・・)になる級数です。
1+1/1!+1/2!+1/3!+1/4!+1/5!+・・・・=Σn=0〜∞ 1/n!=e
(式4)
この(式4)は、ex のテイラー展開:ex=Σn=0〜∞ xn/n! に、x=1 を代入することで、
直ちに得られます。
5つ目は、自然数の逆数の無限和で、調和級数と呼ばれる級数です。
1+1/2+1/3+1/4+1/5+・・・・=Σn=1〜∞ 1/n
(式5)
この級数は、下記の(式6)に示す通り、∞に発散します。
Σn=1〜∞ 1/n>∫1∞1/x dx=[ln k]1∞=∞
(式6)
なお、(式5)の k項までの和と ln k の差: (1+1/2+1/3+1/4+1/5+・・・・1/k)−(ln k) は、
k→∞ において収束し、オイラー・マスケローニ定数 γ(=0.5772156649・・・)になります。
ところで、下記の(式7)の級数において、p=2 を代入すると(式2)、p=1 を代入すると(式5)が得られることがわかります。そして、
この級数は、p=2 :(式2)で収束し、p=1 :(式5)で発散しました。
1+1/2p+1/3p+1/4p+・・・・・=Σn=1〜∞ 1/np
(式7)
実は、p を正の実数とした場合、(式7)の級数は、p>1 で収束し、p≦1 で発散します。これは、次の不等式から導くことが出来ます。
∫1∞1/xp dx<Σn=1〜∞ 1/np<1+∫1∞1/xp dx
(式8)
まず、p>1 であれば、
∫1∞1/xp dx=[x-p+1/(-p+1)]1∞=0−1/(-p+1)=1/(p-1)
(式9)
となり、(式8)の右辺が p/(p-1) になって、(式7)の級数が収束することがわかります。次に、p<1 であれば、
∫1∞1/xp dx=[x-p+1/(-p+1)]1∞=∞−1/(-p+1)=∞
(式10)
となり、(式8)の左辺が ∞ になって、(式7)の級数が発散することがわかります。また、p=1 なら、(式7)=(式5)であるので、発散します。
従って、(式7)の級数は、p>1 で収束し、p≦1 で発散することがわかります。
6つ目の級数は、素数の逆数の無限和です。
1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・・=Σn=1〜∞ 1/pn
(式11)
ここで、pnは、n番目の素数を示します。また、この級数は、調和級数と同様に、∞に発散します。
7つ目は、フィボナッチ数の逆数の無限和で、reciprocal Fibonacci constant ψ(=3.35988566・・・)に収束する級数です。
1/1+1/1+1/2+1/3+1/5+1/8+1/13+・・・・=Σn=1〜∞ 1/Fn=ψ
(式12)
ここで、Fnは、n番目のフィボナッチ数を示します。また、reciprocal Fibonacci constant ψは、無理数であることが
証明済み(1989年)ですが、超越数かどうかは分っていません。
8つ目は、n番目のフィボナッチ数 Fn を m(m≧2)の n 乗で割った数の無限和で、m/(m2-m-1) に収束する級数です。
1/m+1/m2+2/m3+3/m4+5/m5+8/m6+13/m7+・・・・
=Σn=1〜∞ Fn/mn=m/(m2-m-1)
(式13)
この級数の和 m/(m2-m-1) は、例えば、m=2 のとき 2 、m=3 のとき 3/5 、m=4 のとき 4/11 、・・・、m=10 のとき 10/89 、
・・・ となります。
9つ目は、無限和がリウヴィル数の一つである 0.11000100000000000000000100・・・になる級数です。
1/101!+1/102!+1/103!+1/104!+・・・・=Σn=1〜∞ 10-k!=0.11000100000000000000000100・・・
(式14)
この級数の和 0.11000100000000000000000100・・・は、リウヴィル数の一つですが、1844年、リウヴィルによって、超越数であることが証明された最初の数でもあります。
なお、一般に、リウヴィル数とは、以下の様に定義された実数αのことで、全てのリウヴィル数は超越数であることがリウヴィルによって証明されています。
『 リウヴィル数 α は、任意の正整数 n に対して 0<|αーp/q|<1/qn を満たす有理数 p/q (q>1) が少なくとも1つ存在する様な実数 』
ただし、ほとんど全ての超越数は、リウヴィル数ではありません。
参考資料:・Wikipedia 『ライプニッツの公式』、『調和級数』、『自然対数』、『オイラーの定数』、『フィボナッチ数』、『リウヴィル数』
・下記の各URLに掲載のPDFファイル
http://www7a.biglobe.ne.jp/~watmas/dosukyo/circle-reports/infiniteseries.pdf#search='%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%BC+%E7%B4%9A%E6%95%B0'
http://subsite.icu.ac.jp/people/hsuzuki/science/class/calculus2/lecnote/cal2note2003-3.pdf#search='%E7%B4%9A%E6%95%B0+%E5%8F%8E%E6%9D%9F+1%2Fnp'