5項間漸化式で定まる数列


ここでは、5項間漸化式で定まる数列について、その一般項の式を求める方法を考えてみたいと思います。

まず、5項間漸化式とは、数列 {an} における連続する5つの項 an〜an+4 に関する漸化式で、次の様な式のことです。 なお、次式において、p、q、r、s は定数とします。

  an+4=p an+3+q an+2+r an+1+s an    (式1)

また、数列 {an} の最初の4項 a1〜a4 は、予め定められているとします。
すると、(式1)より、次の特性方程式が得られます。

  x4ーp x3ーq x2ーr xーs=0    (式2)

また、(式2)の4つの解が α、β、γ、δ とすると、次式が成り立ちます。

  (xーα)(xーβ)(xーγ)(xーδ)=0    (式3)

このとき、(式1)で定まる数列 {an} の一般項 an は、以下の様になり、以下の各式の中の A、B、C、D は定数になります。

  ・α、β、γ、δ が全て重解でないとき        :  an=Aαn+Bβn+Cγn+Dδn          (式4ー1)
  ・α、β が重解であり、γ、δ が重解でないとき   :  an=(A+Bn)αn+Cγn+Dδn         (式4−2)
  ・α、β が1つ目の重解、γ、δ が2つ目の重解のとき:  an=(A+Bn)αn+(C+Dn)γn          (式4ー3)
  ・α、β、γ が三重解であり、δ が重解でないとき  :  an=(A+Bn+Cn2n+Dδn         (式4ー4)
  ・α、β、γ、δ が四重解のとき           :  an=(A+Bn+Cn2+Dn3n         (式4−5)

ここで、(式4ー1)〜(式4−5)のいずれかの式において、 n=1、2、3、4 と a1〜a4 の各値を代入すると、A、B、C、D を未知数とする連立1次方程式が 得られるから、その連立1次方程式を解くことにより、A、B、C、D は求められることがわかります。


つぎに、a1〜a4 および(式1)における p、q、r、s が整数であり、(式4−1)〜(式4−5)における A、B、C、D が有理数である場合 (注1)に限定して、以下、考察することにします。

まず、この考察のための準備として、(式2)を(2次式)×(2次式)の形に因数分解したときの各(2次式)が、有理数 t、u を係数とする式: x2+t x+u の形に なる場合を考えてみます。このとき、x2+t x+u=0 の解 ε、ζ は、{ーt±√(t2ー4u)}/2 となります。ここで、√(t2ー4u) が虚数となる場合は、 (ε、ζ)=ーt±vi(v は有理数または2乗すると有理数となる無理数、i は虚数単位)となり、√(t2ー4u) が2乗すると有理数となる無理数となる場合は、(ε、ζ)=ーt±w (w は2乗すると有理数となる無理数)となります。よって、いずれの場合も、ε+ζ(=ー2t)は、虚数部分や無理数部分が消去されるから、有理数となり、さらに、 εn+ζn もまた、虚数部分や無理数部分が消去されるから、有理数となります。ここで、このような ε、ζ の解の組を「共役対(きょうやくつい)」と呼ぶことにします。

以上のことを踏まえると、a1〜a4 および(式1)における p、q、r、s が整数であり、(式4−1)〜(式4−5)における A、B、C、D が有理数である場合には、 (式4ー1)〜(式4ー5)は、さらに細分化されて、以下の様になります。

  ・α、β、γ、δ が全て重解ではなく、共役対もないとき             :  an=Aαn+Bβn+Cγn+Dδn        (式5ー1)
  ・α、β が共役対であり、γ、δ が重解でも共役対でもないとき         :  an=A(αn+βn)+Cγn+Dδn         (式5ー2)
  ・α、β が1つ目の共役対、γ、δ が2つ目の共役対であるとき         :  an=A(αn+βn)+C(γn+δn)        (式5ー3)
  ・α、β が重解であり、γ、δ が重解でも共役対でもないとき          :  an=(A+Bn)αn+Cγn+Dδn        (式5−4)
  ・α、β が重解であり、γ、δ が共役対であるとき               :  an=(A+Bn)αn+C(γn+δn)        (式5−5)
  ・α、β が1つ目の重解、γ、δ が2つ目の重解であり、α、γ が共役対でないとき:  an=(A+Bn)αn+(C+Dn)γn       (式5ー6)
  ・α、β が1つ目の重解、γ、δ が2つ目の重解であり、α、γ が共役対であるとき:  an=A(αn+γn)+Bn(αn+γn)        (式5ー7)
  ・α、β、γ が三重解であり、δ が重解でないとき               :  an=(A+Bn+Cn2n+Dδn         (式5ー8)
  ・α、β、γ、δ が四重解のとき                        :  an=(A+Bn+Cn2+Dn3n         (式5−9)

ここで、(式5ー1)〜(式5−9)のいずれかの式において、 n=1、2、3、4 と a1〜a4 の各値を代入すると、A、B、C、D を未知数とする連立1次方程式が 得られるから、その連立1次方程式を解くことにより、A、B、C、D は求められることがわかります。なお、この連立1次方程式の係数は全て有理数であるから、A、B、C、D も全て有理数となります。

(注1)
直感的には、a1〜a4 および(式1)における p、q、r、s が整数であれば、(式4−1)〜(式4−5)における A、B、C、D は有理数になりそうですが、 a1〜a4 の値に依り、A、B、C、D は有理数にも無理数にも成り得ます。この点について、3項間漸化式で定まる数列を例に取って考えてみます。 例えば、フィボナッチ数列とリュカ数列を比べると、漸化式は、いずれも an+2=an+1+an ですが、a0〜a1 の値は、 フィボナッチ数列:a0=0、a1=1 に対し、リュカ数列:a0=2、a1=1 と異なります。その結果、数列の一般項は、 フィボナッチ数列では an=1/√5 {((1+√5)/2)nー((1ー√5)/2)n} となり、 リュカ数列では an=((1+√5)/2)n+((1ー√5)/2)n となります。すなわち、一般項の係数((式4−1)の A、B に対応する定数)は、 フィボナッチ数列では A=1/√5、B=ー1/√5(ともに無理数)になり、リュカ数列では A=1、B=1(ともに有理数)になります。



それでは、以上の結果を具体的に確認するため、以下に示す2つの問題を解いてみましょう。なお、問題1は(式5−3)、問題2は(式5−5)をそれぞれ利用した問題となっています。


【 問題1】

数列 {an} において、a1=3、a2=5、a3=9、a4=27、 an+4=4an+3ー6an+2+4an+1+3an が成り立つとき、一般項 an を表す式を求めなさい。

【 解答 】

与えられた5項間漸化式に関する特性方程式は、

  x4ー4x3+6x2ー4xー3=0 ---@

となる。まず、@を満たす整数解の有無について、少し調べてみると、整数解は無さそうである。そこで、@式の左辺は(2次式)×(2次式)となると仮定してみる。すなわち、

  x4ー4x3+6x2ー4xー3=(x2ーpxー1)(x2ーqx+3) ---A

と仮定したとき、Aの右辺は、

  (x2ーpxー1)(x2ーqx+3)=x4ー(p+q)x3+(2+pq)x2ー(3p-q)xー3 ---B

となり、Aの左辺とBの右辺の各係数を比較すると、p+q=4、2+pq=6、3pーq=4 となる。よって、この連立一次方程式を解くと、p=2、q=2 となるから、Aは

  x4ー4x3+6x2ー4xー3=(x2ー2xー1)(x2ー2x+3) ---C

となり、Cの右辺を1次式の積に分解して@に代入すると、

  x4ー4x3+6x2ー4xー3={xー(1+√2)}{xー(1ー√2)}{xー(1+i√2)}{xー(1ーi√2)}=0 ---D

を得る。したがって、Dより、特性方程式の4つの解は2組の共役対となるから、一般項 an の式の形は(式5−3)であるとわかる。 すなわち、Dと(式5−3)より、an は、

  an=A{(1+√2)n+(1ー√2)n}+C{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ---E

となる。よって、a1=3、a2=5、a3=9、a4=27、(1+√2)2=3+2√2、(1ー√2)2=3ー2√2、 (1+√2)3=7+5√2、(1ー√2)3=7ー5√2、(1+√2)4=17+12√2、(1ー√2)4=17ー12√2、 (1+i√2)2=ー1+2i√2、(1ーi√2)2=ー1ー2i√2、(1+i√2)3=ー5+i√2、(1ーi√2)3=ー5ーi√2、 (1+i√2)4=ー7ー4i√2、(1ーi√2)4=ー7+4i√2 とEより、以下の各式が成り立つ。

  a1=A{(1+√2)+(1ー√2)}+C{(1+i√2)+(1ーi√2)}=3         → 2A+2C=3    ---F
  a2=A{(3+2√2)+(3ー2√2)}+C{(ー1+2i√2)+(ー1ー2i√2)}=5    → 6Aー2C=5    ---G
  a3=A{(7+5√2)+(7ー5√2)}+C{(ー5+i√2)+(ー5ーi√2)}=9      → 14Aー10C=9  ---H
  a4=A{(17+12√2)+(17ー12√2)}+C{(ー7ー4i√2)+(ー7+4i√2)}=27 → 34Aー14C=27  ---I

よって、F、Gの連立1次方程式を解くと、A=1、C=1/2 となるが、これらをH、Iの左辺に代入すると、それぞれ 9、27 となって、H、Iも満たす。すなわち、A=1、C=1/2 は、 F〜Iを満たす。したがって、A=1、C=1/2 をEに代入すると、

  an=(1+√2)n+(1ー√2)n+1/2{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ---J

となり、Jが求める式である。

このJ式が正しいことを確認するため、問題文にある漸化式と最初の4項の値、J式のそれぞれを用いて、a5 を計算してみる。まず、漸化式と最初の4項の値からは、

  a5=4a4ー6a3+4a2+3a1=4・27ー6・9+4・5+3・3=108ー54+20+9=83

となる。また、J式からは、

  a5=(1+√2)5+(1ー√2)5+1/2{(1+i√2)5+(1ーi√2)5} =41+29√2+41ー29√2+1/2(1ー11i√2+1+11i√2)=82+1/2・2=83

となる。よって、確かに両者は一致している。

   (答) an=(1+√2)n+(1ー√2)n+1/2{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ( i は虚数単位)


【 問題2】

数列 {an} において、a1=3、a2=4、a3=7、a4=21、 an+4=6an+3ー15an+2+20an+1ー12an が成り立つとき、一般項 an を表す式を求めなさい。

【 解答 】

与えられた5項間漸化式に関する特性方程式は、

  x4ー6x3+15x2ー20x+12=0 ---@

となる。まず、@を満たす整数解の有無を調べてみると、@の左辺は、x=2 を代入すると 0 になるから、xー2 で割り切れる。よって、

  x4ー6x3+15x2ー20x+12=(xー2)(x3ー4x2+7xー6) ---A

となるが、x3ー4x2+7xー6 は、x=2 を代入すると 0 になるから、xー2 で割り切れる。したがって、Aは、

  x4ー6x3+15x2ー20x+12=(xー2)2(x2ー2x+3) ---B

となり、Bの右辺を1次式の積に分解して@に代入すると、

  x4ー6x3+15x2ー20x+12=(x-2)2{xー(1+i√2)}{xー(1ーi√2)}=0 ---C

を得る。したがって、Cより、特性方程式の4つの解は1つの重解と1組の共役対となるから、一般項 an の式の形は(式5−5)であるとわかる。(A, B)=(3/4, 1/4) すなわち、Cと(式5−5)より、an は、

  an=(A+Bn)2n+C{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ---D

となる。よって、a1=3、a2=4、a3=7、a4=21、 (1+i√2)2=ー1+2i√2、(1ーi√2)2=ー1ー2i√2、(1+i√2)3=ー5+i√2、(1ーi√2)3=ー5ーi√2、 (1+i√2)4=ー7ー4i√2、(1ーi√2)4=ー7+4i√2 とDより、以下の各式が成り立つ。

  a1=(A+B)・2+C{(1+i√2)+(1ーi√2)}=3      → 2A+2B+2C=3    ---E
  a2=(A+2B)・4+C{(ー1+2i√2)+(ー1ー2i√2)}=4   → 4A+8Bー2C=4     ---F
  a3=(A+3B)・8+C{(ー5+i√2)+(ー5ーi√2)}=7     → 8A+24Bー10C=7   ---G
  a4=(A+4B)・16+C{(ー7ー4i√2)+(ー7+4i√2)}=21 → 16A+64Bー14C=21  ---H

よって、E+Fより、6A+10B=7 ---I、E×5+Gより、18A+34B=22 → 9A+17B=11 ---J となり、J×2ーI×3 より、4B=1 → B=1/4 となり、これをIに代入すると、 6A+10/4=7 → A=3/4 となる。よって、(A, B)=(3/4, 1/4) をEに代入すると、2・3/4+2・1/4+2C=3 → C=1/2 となるから、(A, B, C)=(3/4, 1/4, 1/2) であり、 これらをHの左辺に代入すると、21 となって、Hも満たす。すなわち、(A, B, C)=(3/4, 1/4, 1/2) は、E〜Hを満たす。したがって、(A, B, C)=(3/4, 1/4, 1/2) をDに代入すると、

  an=(3/4+1/4・n)2n+1/2{(1+i√2)n+(1ーi√2)n}=(3+n)2n-2+1/2{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ---K

となり、Kが求める式である。

このK式が正しいことを確認するため、問題文にある漸化式と最初の4項の値、K式のそれぞれを用いて、a5 を計算してみる。まず、漸化式と最初の4項の値からは、

  a5=6a4ー15a3+20a2ー12a1=6・21ー15・7+20・4ー12・3=126ー105+80ー36=65

となる。また、K式からは、

  a5=(3+5)23+1/2{(1+i√2)5+(1ーi√2)5} =64+1/2(1ー11i√2+1+11i√2)=64+1=65

となる。よって、確かに両者は一致している。

   (答) an=(3+n)2n-2+1/2{(1+i√2)n+(1ーi√2)n} ( i は虚数単位)


参考資料:
・Wikipedia 『漸化式』、『フィボナッチ数』
・下記URL
  https://manabitimes.jp/math/697( 三項間漸化式の3通りの解き方 - 高校数学の美しい物語 - )


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