シュヴァルツシルト半径と宇宙


 ブラックホールの大きさを表す代表的指標として、シュヴァルツシルト半径があります。ブラックホールの中心からシュヴァルツシルト半径以内に ある全ての物は、光も含めて、シュヴァルツシルト半径より外側へは出ることが出来ません。このことから、シュヴァルツシルト半径の位置は、 事象の地平線と呼ばれています。

 このシュヴァルツシルト半径 rsは、次の式で計算できます。(注1)

 rs=2GM/c2

 ここで、G は重力定数、c は光速、 M は質量です。 シュヴァルツシルト半径

 例えば、地球全体が収縮してブラックホールになった場合、そのシュヴァルツシルト半径は、約9mmになります。また、太陽がブラックホールに なった場合のシュヴァルツシルト半径は、約3kmになります。そして、さまざまな天体のシュヴァルツシルト半径を計算すると、右の図のようになります。

 宇宙の観測可能な部分には、およそ1000億の銀河があると推測されています(注2)。これら全ての銀河が銀河系と 同程度の質量を持つと仮定すると、宇宙の観測可能な部分の質量は、およそ2.5×1034京トンになります (1京トン=1019kg)。そして、この質量に対するシュヴァルツシルト半径を計算すると、およそ3.7×1026m となります。

 ところで、137億年前に放射された宇宙背景輻射の発生源の位置は、現在、およそ450億光年の彼方にあると推測されています (注2)。450億光年とは、約4.3×1026mです(右図の一番上の点線)。すなわち、宇宙の観測 可能な部分の質量のシュヴァルツシルト半径と、ほぼ同じくらいの距離であることがわかります。

 また、宇宙背景輻射の発生源の位置は、137億年前には、およそ3.9×1023m(4100万光年)にあったと推測されています (右図の上から2つ目の点線)(注2)。この距離は、宇宙の観測可能な部分の質量のシュヴァルツシルト半径より3桁も 小さな値です。すなわち、137億年前の宇宙は、宇宙全体がブラックホールになってもおかしくないほど、高密度であったことがわかります。しかし、 宇宙全体の膨張する力は、重力をはるかに凌いでいたので、宇宙は、その後も膨張を続けて来ました。そして、現在に至り、宇宙は、ようやく、シュヴァル ツシルト半径と同じくらいの大きさになった、と考えられます。


(注1) 参考資料 : Wikipedia 『シュヴァルツシルトの解』
(注2) 参考資料 : Wikipedia 『宇宙』

トップへ戻る