大規模林道中止と藤前干潟埋め立て中止 

99/01/26


続編(下段に続き)

★ 朝日大規模林道中止
去る99年1月23日付け毎日新聞朝刊25面に「追跡-環境」で、大規模林道計画の中止(98/12決定)が掲載されました。
ここに至るまでには長い厳しい道のりがありました。地元に住む人々が、周囲から白い目で見られながら林道建設反対運動の気持ちを貫き通したことに対して、衷心より感謝申し上げます。
今でこそ各地で環境保護を唱え、各種の運動が盛り上がっていますが、この大規模林道建設反対を唱えだした頃は、今とは比べものにならない程、社会からの理解がありませんでした。(かくいう私もこのような運動が地元で起こされていることを全然知りませんでした)
この事へのこだわりを持ち続けられた地元「白鷹町の原敬一」さんはじめ、関係者に対して心よりお礼を申し上げます。
このような状況に至っても、地元の首長さん達は形を変えた林道建設事業誘致に奔走しているとの話もありますが、それは日本全国皆同じです。特に地元の首長さんがいけないことをしているとも言い切れません。地域活性化のため一生懸命なのです??
このような山間地まで入らない既成市街地(山里含む)で、もっと合理的な公共事業(補助事業)が出来れば、このようなことには成らないのですが……。
 今又、東京湾の三番瀬や名古屋のフジマエ干潟で同じ様な問題でたくさんの人達が悩んでいます。困ったことです。朝日と異なる点は都会に住む人たちが排出するゴミが直接の原因と言うことでしょうか。これは都会の人のエゴが試されることですので、どのように解決するかは見物です。言い換えれば「日本人の常識」が試されていると言っていいかもしれません。
トンチンカンに逸れた話をすれば……都会で大量の電気を消費していて電気は無くては成らないものです。そこで「安全な原子力発電所」を各地に建設してありますし、今後も必要に迫られて増設すると言います。本当に安全ならば東京湾の埋め立て地に建設してはどうか?特に東京都で赤字で悩んでいる、ゆりかもめが通う素敵な埋め立て地が最適です。安全だと言い張る学者や政治家の皆さん如何でしょう? 消費地で発電すれば送電線はほとんどいりませんので、さらに経済的でしょう。
そのようなことをしない出来ないのが都会に住む人たちの常識なのです。福島や新潟の田舎にも人は住んでいます。
どこかおかしいとは思いませんか?
 この度の林道中止は環境保護の立場からすればホッとすることですが、地域にとっては何も解決された訳ではないのです。世の中不景気のどん底で、田舎はなおのことです。
自然保護に熱心な皆様方も、もう一度この事を真剣に考えていただき、良いアイディアがあったらご教授願います。林道工事中止で、公共事業の無くなった田舎は何で生計を立てればいいのでしょうか?
そんなこと田舎で考えなさいですか? 中止運動にこれほど熱心に行動された反対運動活動家の皆さん、ここで一件落着などと言わずに、これから朝日の自然保護のため、地域の活性を図ることにどう関わっていくかが、真の自然保護活動ではないでしょうか?ご意見、アイディアお待ちしています。

★ 藤前干潟埋め立て計画名古屋市断念
 99/1/27付け毎日新聞25面に「追跡-社会」で「代替地」へ動いた省庁の見出しで名古屋の藤前干潟埋め立て中止を名古屋市が決めた旨の記事。
環境保護という面から見れば環境庁や運輸省、厚生省を動かした快挙といえます。しかし、名古屋市の悩みは全く解決していません。
干潟埋め立て反対を唱える人々が毎日出すゴミの処分はどうなっているのでしょうか?処理処分は行政にお任せしていればそれで済むのでしょうか?
私も家庭から出したゴミがどのようになっているかを真剣に考えたことはありません。それは毎日のように収集車が来て持っていってくれるので、それで終わり。その先は考えていませんでした。大多数の人はそうではないでしょうか。
日頃の生活で食べ残しの生ゴミ、何気なく捨てているポリエチレンやビニール袋の使い捨て。数え上げれば数知れないほど私たちはゴミを出しています。
行政はそれをセッセセッセと長いこと処理処分をしていました。夢の島などと言いながら東京湾も随分埋め立て地として利用してきました。
あるいは県境を越えてゴミ運搬車が地方へそのゴミを運搬してきました。ある時は耐えかねて青森県の人達からクレームを付けられました。当然のことです。
ダイオキシンを始め環境ホルモン放出ということで、ゴミ焼却炉は今改善しつつあります。しかしどこまで減らせば安全なのかは誰も解りません。それは現在の技術がどれだけ減らすことが可能かと言うこととコストで規制濃度が決められていると言った方が分かりやすい。
いろいろな人が言っていることですが、毎日家庭や地域からどれだけゴミの量を減らせるかが重要なのです。
それは自分自身の生活スタイルをどれだけ変えることが出来るかが問われていることでもあります。
買い物袋やバスケットを持ってスーパーに行、マイカーを止めて電車やバスで移動する。
買い物は出来てもマイカーはなかなか手放せません。
景気回復のカギは個人消費拡大」ということで大量消費を与野党区別無く唱えていますし、アメリカの外圧もあります。それは又大量廃棄につながります。それで良いのでしょうか??
大量消費が善だとすれば、それと同時にそれにより必ず発生する大量のゴミをどう処理するかを、商品製造の時点からセットで考えそして製造して欲しい。
規模の大小はありますが各地に藤前干潟はあるのです。
後世にこの貴重な藤前干潟を残すため、私たち一人びとりが生活をどう変えることが出来るかを考えましょう。自然保護だけを唱えていればいい時代ではないのです。
景気回復も喫緊の問題ですが、それに目がくらみ、気がついたら又いつか来た道にならないように今こそ国民全員で考えましょう。高度成長期に私たちは学習してきました。消費は美徳でないことを。特に学者や政治家は人気取りではなく、本音で勝負してください。政治屋はもう結構。


 自然保護運動成果と問題   99/02/01


下段(97/06/29)

 近ごろダム、河口堰、山岳道路(林道含む)、大規模埋め立て、産業廃棄物処分場等の建設に対して各地で軋轢を生じている。
一面的には建設、反対それぞれに最もらしい理由があるように思う。
しかし、それぞれの意見はほとんどの場合噛み合っていない。何故なのか。
この欄では、テーマを絞って皆さんと意見交換をしてみたい。それは日頃新聞、テレビを目にしていても、今一満たされた気持ちになれない。せめて此処では言いたいことを言い合い、憂さ晴らしでもして見ようではありませんか。気楽な気持ちで。
お互い言ったことにそれほど責任を持たず、お互いのモラルの範ちゅうで。


林道建設中断(山形県朝日連峰の場合)

平成 9年 4月 1日付け朝日新聞(俗にいう3面トップ記事)の要旨

70億円、林道の「破片」に

 効果計算せず着工、20年後「費用に見合わぬ」

  山形・朝日連峰 8割残し建設中止

山形県の朝日連峰で林野庁の特殊法人・森林開発公団が約二十年前から建設を進めてきた「大規模林道」が、二割しかできあがらないまま事実上中止された。国側はこれまで「木材生産や森林レクリェーションに役立つ」と説明しながら、実際にその費用と効果がどうなるかの計算をしていなかった。
結局、投資に見合う効果がないとされ、約70億円が費やされた総延長14kmの「道路の破片」だけが、山に残った。
休止の理由
 @世界遺産に登録された白神山地に匹敵するブナの原生林がある。
 Aルート周辺に絶滅が心配されているクマタカの営巣が確認され、環境アセスメントが必要になって工事が中断していた。
 B豪雪地帯で、雪解けの度(毎年)に崩落の補修費等に事業費がつぎ込まれ、道路工事本体がなかなか進まない。85年度はわずか4メートル。
 C平成8年度にできた農水省の公共工事の見直し検討委員会で、「事業効果の評価がされていなかった」と批判。全国31路線ある基幹林道のうち3路線の休止を決めた。その中で具体的な場所が示されたのは朝日ー小国だけである。

以上のような内容です。

このことについて、朝日連峰に限らず全国至る所で同種の工事が行われているので、このこと(大規模林道の是非)を今回テーマとします。


山さんの意見

 私はこの山域に10年余り足繁く通い、ハイキングや山歩きをしている。
朝日連峰は、かなり奥地まで林道も入っているしブナ林も伐っているが、全体として捉えるならばまだまだ良い方だと思っている。
周辺の町村は「自然と調和のとれた開発」を掲げているので、当面この状態が続きそうに思う。
現状は今迄に、今のように自然保護の声が大きくならないときに伐ってしまったものである。(戦後の復興期を引きずり)
今はどうかというと、各町村は残された「自然を活用した観光」を掲げ、政策立案をしている。従って今までのように、奥へ奥へと林道が延びていくとは思えない。
地元町村にとって林道やダムは、公共工事が起こせる唯一に近い手法なのである。「過疎対策」と言うことで中央とも地元でも一応のコンセンサスを得ているから。(もしかすると、公共工事は地場産業?)
今世の中に対して、そのことだけでは説明が出来なくなった。「高度成長期に失ってしまった自然を残したい」との思いから都会に住む人々が、地方に出張ってまで自然保護活動をしている。
しかし、私が山村に深く入って地域住人の方々と飲みながら話をして知ったことは、ここの人達は誰よりも山のことを知っている人達なのである。山の木を伐ってはいけないと言うことを、誰よりも熟知している人達なのである。高度成長期に都会へ都会へと人々が移動し、あっちでもこっちでも過疎になってしまった。その時にこの人達は地域に残り田畑を耕しながら、わずかばかりの現金収入を求め、近くの国有林で伐木や造林の仕事をした訳です。結果として全国至る所の自然林は、杉檜に植え替えられ、造林した杉檜が世の中から目の敵にされています。
此処では「林野庁の再建策」を論じようとは思いません。国の施策によって林道が延び自然林が消えたのであって、地域にすむ人達が必ずしも望んで伐木をしたのではありません。特にマタギと言われる山で先祖代々暮らしてきた人達は、世の中で一番山のことを知っている人達なのです。その人達は進んで木を伐りたいと思っている人は誰一人いません。不幸なことに山を熟知しているが故、地域に残って生活をしたい故に、結果として営林署に狩り出され木を伐る仕事をしてきました。
公共工事に対する財源のあり方が、土木工事と自然保護が噛み合わない元凶なのではないでしょうか。[補助事業システム」このことことが全国一律に不都合を起こしているのではないでしょうか。
地方では必ずしも林道やダム工事である必要はないのです。地域で考えたことに財源が使えるのであれば。
しかし補助事業である限り、採択基準なるものに合わせなくては、なかなかお金が出ないのです。従って全国一律と言われてもその手法しかないのです。
だからスーパー林道や大規模ダム、堰堤が奥へ奥へ延びていく訳です。
今回山形県(国)は林道建設を中断したと新聞から読んだのですが本当でしょうか。
確かに70億円は大きな額ですし、それを途中で止めることは逆の意見が叫ばれますし事業者は大変でしょう。
本当に中止したのであれば、今回の決定に驚きと、敬意を事業者に申し上げます。
金目川の中止点に行って見ると、削り取った土砂が渓川に堆積して、かつてのすばらしい渓が見るも無惨な姿になっているので「これ以上埋められずに済めば、本当に良いなあ」と思います。
地元の町村では特に林道建設でなければならないという、特別な理由はないと思います。とにかく何でも良いから「土木工事」の継続が必要なのです。(私の勝手な推測)
中止しても問題が全て解決したとは思えません。何故なら公共工事の続行を望む声は地元にも結構あるからです。
すでに人の住んでいる地域のインフラ設備の充実で、此処を切り抜けることは出来ないのでしょうかね。
そこで皆さんと、この現状をどう考えたらいいのか。この現状を脱却するのにはどうすれば良いのか。画面討論をしたいのです。[朝日連峰に限定したものではありません]。

よろしく!