北アルプストイレ事情考

2002.11


トイレ事情の新しい本

 今年、2002.7 信濃毎日新聞社編の「北アルプストイレ事情」という一冊の本が出版された。
内容は北アルプスを中心に新聞記者達が現地調査(山小屋)をし、取材をし、アンケートを採りまとめたものだ。
以前から私達が山で悩んでいたことを文屋らがうまくまとめた。 発行所は 株)みすず書房である。興味のある方は一読を。本の大部分は現在までの山小屋のトイレ事情を紹介している。
これを読むと山に登りトイレを利用することは「罪悪な事をしているのではないか」と自分自身を責めたくなる。私が長年山のトイレを使用する度に感じていたことが如実に書いてある。あの悪臭と暗い狭い空間。

 当HPで「2000 この夏の富士山トイレ事情」で私心を述べているが、同じようなことを考えている人が数多く居たということに心を強くした次第だ。
今年も多くの人が山に登った。その人達の糞尿はどうなったのであろうか? 出してしまえば後は知らない。後々のことを心配した人がどのくらいいるだろうか? その辺のこともこの本には良く書いてある。
この本の後半で最近の山小屋の取り組みが紹介されている。それによると徐々にではあるがエコトイレに取り組む山小屋と、それを支援する行政の試行錯誤が紹介されている。
かつて私が補助制度を提案したが、行政もやっとそのような方向を模索し始めたようだ。この芽をどんどん成長させたい。本でも一寸紹介しているが、既に朝日連峰の稜線の小屋ではエコトイレが主役だ。これは山形県や麓の市町村の熱意の現れと私は高く評価している。

トイレのない山のトイレ事情

 山に入った時、急に尿意や大便をしたくなったらどうします?
小便であればためらずに木陰で済ませるでしょう。それを咎める人も少ないと思う。大便はどうです?
私は山に入る前に麓のトイレで十分に済ませて登ることを心掛けています。それも半日ぐらいであれば山でしなくても済むかも知れません。
一日の山では一度もしないわけにはいかないでしょう。

マタギのトイレ
 私が教えを受けている老マタギが山で大便をする時には、ティッシュペーパーなどのチリ紙は使わない。どうするかと言えば落ち葉を足でかき分け、少し窪んだ穴で用を済ませる。落とし紙の代わりに落ち葉や草の葉(柔らかそうなフキや幅広の葉)で綺麗に拭き取る。済んだらかき分けた落ち葉などを元に戻し軽く踏んづけて終わり。
私もこれを踏襲するように心掛けている。場所を選定するときは沢の傍を避け、なるべく平らな広い所を選ぶ。もちろん落ち葉の多いところ。
こうすれば時間を掛け、土壌細菌が分解してくれる。そして分解後は草木の肥料に。大腸菌のその後がどうなるのかは私は分かりません。今度仲間内で詳しい者が居るので聞いてみたい。勿論これが完璧とは思っていないが、山に人が入る以上出る物は出るのです。それをどう始末するかは、一人一人がよく考えてほしい。

登山道でするヤツ

 登山道を歩いていて時々「良くもまぁ、こんな所で!」。登山道の真ん中に大盛りの残骸がある。
どうしてこのようなことが出来るのでしょう。よく堂々とこんな所でやれるのか理解に苦しむ。いくらせっぱ詰まっていても、道を外れることくらいはエチケットだと思うが。
また、チリ紙が目立つ。落ち葉をかき分けて、済んだら落ち葉を被せておけば目立たなくて、他の人達も気持ち良く歩ける。
さらにはジュースの空き缶やペットボトルを物陰や石の下に置いていく不届き者。

山に入る者、どうすることが良いのか

 山のトイレはどれがベターなのか議論の分かれるところ。
今回この信濃毎日新聞社編の「北アルプストイレ事情」を読んで、改めて山に入る者の排便を深く考えさせられている。
今私のしている排便方法が一番良いとは言いませんが、山に入る者全てがどうあるべきかを考えて行動することが必要なことだと考える。
諸兄のお考えを聞かせていただきたい。「私のトイレ事情」を!!
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