配置転換は拒否できる?
 (平成21年6月14日)


昨年からの不況による企業の苦しい状況は、まだまだ続いています。

そんな中、なんとか業務を効率よく回そうと、
職場内での異動、職場外での異動(転勤)、企業間の異動(出向)
などを検討している企業も多いでしょう。

今回は、「職場内の異動」についてお話します。

「転勤」についてはこちらをご覧ください。


そもそも、配置転換をする目的はなんでしょう?
・従業員を適材適所に配置し、業務の効率を良くする
・いろいろな業務を経験させ、従業員の能力を向上させる
・人を定期的に動かし、組織を活性化させる
・不正を防止する             

・・などでしょうか。
これらがうまく回ることで、事業も円滑に運営されます。

では、このような配置転換を、会社は自由に出来るのか?

原則、会社の裁量で出来ます。(東亜ペイント事件 最高裁 S61.7)

しかし配転には、労働条件の変更が伴う場合があるので、
あらかじめ就業規則や雇用契約書に
「必要な場合は、人事異動を命ずることがある」
などの規定を盛り込み、明示しておく必要があります。

そうすることで、配転への同意を、入社時に包括的に得たことになり、
そうなると、従業員も配転命令を拒否できません。(原則)

拒否すると、業務命令違反として、就業規則の規定に基づき、
懲戒処分を受けるかもしれません。

逆に言えば、

入社の際に、職務の内容を限定する労働契約をしていれば、
配転を拒否することは出来ます。
その場合、会社側も、個別の同意を取る必要が出てきます。


以上をまとめると、

会社は、会社の裁量で、従業員の配置転換をすることが出来る。
そして、入社時に包括同意を得ていれば、個別同意は不要となる。
しかし、職種限定採用の場合は、個別の同意が必要。

ということです。

しかし、いくら会社に裁量権があるからと言って、
何でもかんでも、会社の意のままに、
一方的に配転命令が出来るわけではありません。
会社の人事権の濫用となれば、その配転命令は無効になります。


たとえば、

◆その配転命令に業務上の必要性があったとしても、
 その目的が、その対象者を自主退職に追い込むため、 などの不当な目的がある。

◆その配転のために、職務手当が変わる、所定労働時間が短くなる、など、
 基本給が著しく低下するような著しい不利益を被らせる。

◆法令や公序良俗に反する。
 たとえば、国籍が違う、会社の法違反を通報した、労働組合員だから、
 女性だから、育休や介休を取ったから、・・などによる配転命令は、
 人事権の濫用となり認められない場合があります。

また、不当な配転命令は、今後の仕事に影響します。
やる気を無くさせます。


そもそも配置転換には、

会社には、組織活性化、効率化というメリットが、
従業員には、能力開発、人的ネットワークの構築、というメリットがあるはずです。
その相乗効果で、会社の業績が向上する。

ですから、たとえ不当な配転命令ではなくても、
個人の経験や希望などを全く考慮しない、会社の一方的な命令は、
従業員のモチベーションを下げることになり、配転をする意味がありません。

配転命令をする際は、
配転をする合理的な理由や必要性、なぜ「あなたなのか」という説明を、
誠意をもって行い、納得性を持たせることが大事です。


会社での労務管理は、労働基準法をはじめとする
たくさんの法律に縛られていますが、

結局は人間同士のことなので、トラブルになるならないは、
そのコミュニケーション次第だと思います。

会社が誠意を持って対応すれば、たとえ今は従業員に不満があっても、
いずれ気持ちよく働いてもらえるのではないかと思います。
また、無用なトラブルを避けることにも繋がるでしょう。


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