1.(1)夜明け前


ここは、ある金融機関の不動産セクションです。

ある先輩が同じチームの若手3人相手にクイズ感覚で問題を出しました。

送信者: 山田  日付: 2009/12/28 11:56 AM
宛先:  Aさん Bさん Cさん
cc:
bcc: Dさん F先輩 G先輩
件名: (等身大ガンダムの値段に続く)問題第二問


 等身大ガンダムの値段は3億円前後のようです。

 正解はCさんですね。


 それでは第二問。

 「当事者意識」という言葉があります。

 この言葉の定義と身近な実例を挙げてください。


 この問題は、Bさんを回答責任者とします。

 回答に際して、AさんとCさんに相談してください。

 回答期限は2010年1月8日夜です。


 
この部署では、ベテラン社員と若手社員がペアを組んでいます。

私=山田(仮名)はBさん、bccにでてくるF先輩はAさん、G先輩はCさんとペアです。

Dさんはつい最近まで私とペアを組んでいました。

[なお、等身大ガンダムの値段は想像です。確証はありません。]


お正月休みを挟んで送られてきた回答は、いかにも「やっつけ」で書いた文章でした。


送信者: Bさん  日付: 2010/01/12 08:07 AM
宛先:  山田
cc:
bcc: 
件名:  当事者意識


 山田さん

 おはようございます。

 金曜日に時間外のためメールできず、

 本日のご連絡になりましたことをお許しください。

 また、恥ずかしながらAさん、Cさんとも話ができておりませんので

 時間を見つけて話をいたします。

 [回答]

 当事者意識とは?

 →「仕事に主体性を持って、全て自分のことだと思って取り組む意識」であり、「主役意識」

 ※反対語としては、「脇役意識」=「仕事に主体性を持たず、全て他人事だと思って取り組む意識」

 [以下略]

 
Bさんのこわばった文章で分かるように、後輩から見ると私は怖い先輩です。

送信者: 山田  日付: 2010/01/15 12:22 AM
宛先:  Aさん Bさん Cさん
cc:
bcc: Dさん F先輩 G先輩
件名:  Re: 当事者意識


 回答にリアリティがありません。

 リアリティのない話はお客さんなら聞いてもらえませんよ。

 身近な実例を出してください。

 固有名詞を出すことがリアリティに繋がることを覚えてください。

 しばらく早く帰らないといけないのは分かりますが、Aさん、Cさんとの話は朝、昼休み等うまく利用してちゃんと実施してください。

 やり直し。

 再回答期限1/25(月)夜まで。

 当事者意識をもって回答してください。

 本当に正解に至ろうとしたら、何をしますか?


 
若い人が会社を辞めていきます。

いろいろ事情もあるだろうから、辞めるのはしかたないのかもしれません。

でも、私たちが従事している仕事は、とても面白い仕事です。

辞めていく若い人たちは、その面白さを実感することなく辞めていきます。


「もったいない」と思います。「面白さを伝えたい」と思いました。

いろんな機会を捉えて面白さを伝えてきたつもりです。

勉強会もやってみました。

「こんなに面白い話をしているのに」、伝わっているという実感が得られません。


この授業も初めは「教えてあげるんだ」という意識で始めてしまいました。


ネットで知り合った人の影響から、それでは若い人には届かないと気づき、私の意識を変えることにしました。


『共感』です。

私になかったもの、世代を超えて言いたいことを伝えるために必要なものは。


上のメールのやりとりは、私が共感に目覚める前のもの、『夜明け前』のものです。

次のページからが本当の『授業』の始まりです。




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アップロード日 2010.09.26