その日もいつもどおり，車で会社に出かけました． 車中では毎朝PSTという地元のFMを聞いているのですが， 話の中に「ワールドトレードセンター」という言葉が出ていたものの， 特に気にも留めず9時ちょっと過ぎに会社に着きました． ちょうど日本の夜10時ちょっと過ぎにあたります．

　　後から聞いた話ですが，日本では多くの人が生中継で後半の映像を見ていたそうですね． こちらでは，新年度が始まって2回目の火曜日の朝でした． 会社にいた人は，テレビは見ていなかったと思います．

　　間もなくして，アメリカ人の同僚から 飛行機がトレードセンターに突っ込んだと言うニュースを聞きました． 「ジェット機じゃないよね？」と聞くと，「そうだ」と言います． 詳細を知ろうとYahoo! Japanを見ました． ワールドトレードセンターに2機，ワシントンにも．．ミサイルが発射された可能性が．．． 見ても良く分からないと知りつつCNNのサイトを開こうとしましたが， 混んでてかつながりませんでした． その後，日本の友人とメールでやり取りしながら それがテロだと分かるまで，１時間ぐらいかかりました． やはり，映像を見ないで限られた情報だけですと，状況が飲み込めません．

　　午前中は，皆インターネットの画面に張り付き， それぞれ憶測が飛んで仕事にならず． 11時過ぎに，トップの判断で帰宅して待機という事になりました． その時一番怖かったのは，ハイジャック機が11機で，まだ7〜8機は飛んでいるというものでした． 後に，ハイジャックされたアメリカンエアー11便の間違いでしたが， 誤報の訂正はしばらくされませんでした．

　　世界を揺るがす大事件のわずか７〜８０kmのところにいてもこんな状況でした． （アメリカ人は多分知らないと思いますが）日本とアメリカの情報の速さは驚くばかりですね． その後しばらくの間は，橋やショッピングモールが次のテロで狙われるなどの噂が流れたり， CIA長官からテロの可能性に対する注意喚起の声明が出たりしました．

　　それまでは特にこれといった混乱も無く過ごすことが出来ましたが， その後事件は炭疽菌テロへと発展し， 政府機関への手紙がNJトレントン近郊から発送されるという事態になりました． この郵便局が私の家から最寄だったのです． はじめは，直接炭疽菌の手紙をもらわなければ二次感染はしないということで， 周りの同僚や近所の人もそれほど不安に感じていませんでした． しかし，その郵便局の近くに住む（会社で郵便物を扱う業務をしていた）人が感染し， 不安は一気に高まり，プリンストンの支局が閉鎖されるに至りました． 実際，その頃に集められた郵便物は殺菌処理が行われ， ビニール袋に入れられ，１〜２ヶ月遅れで届けられています．

　　NJ唯一の日系スーパー「ミツワ」に買出しに行く際， 高速道路の上からワールドトレードセンターが見えてきます． マンハッタンのビル群の中でも遠くからでもすぐに分かる形でした． あそこを通る度に，「ああ，もう無いんだなぁ」と寂しい気持ちになります．

　　最後になりましたが，テロに巻き込まれ亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます．