制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-10-19
改訂
2014-01-18

表音主義者

山本有三

山本有三は昭和20年12月、三鷹國語研究所を創設し、國語國字の改革運動を強力に推進しはじめた。

翌年4月6日、山本は「國民の國語運動聯盟」を設立。設立に當り3月に發行せられた「主意書」には以下のやうな文言が見られる。

國語國字は、國民全體のものです。だれにでもわかり、だれにでも使ひこなせるものでなければなりません。ところが、これまでの國語國字は、國民の多數にとつて、ただしく讀み書きができないほどむづかしいものでした。こんなことでどうして新らしい文化日本をうちたてることができませう。

この時の「聯盟」は、改革推進派の山本、金田一京助らと、改革反對派の時枝誠記、藤村作らの寄合所帶であり、じきに消滅した。

土岐善麿

續いて、土岐善麿が自ら委員長となり、昭和21年4月5日「ローマ字運動本部」を組織した。當日各方面に配布した「宣言書」にはまづ、「國語國字問題ノ最後的解決ガRomaziノ採用ニアルコトハ、最早理論的論議ノ時代ヲ飛ビ越エ、國民ノ實踐的採決ヲ待ツノミトナツタ」、とあり、次いでかうある。

飜ツテ終戰以來ノ輿論ノ動キヲ顧ルニ、ローマ字論者ハ聯絡不充分ノタメ長ク昏迷状態ヲ續ケテ居タノニ對シ、保守的勢力ハ漢語漢字ノ民主化ノ最高限度ヲ漢字制限ニ置キ、コノ一線マデ退キツツ凡ユル徹底的解決策ノ實現ヲ食ヒ止メルタメ、厚顏シクモ「民主主義」云々ノ假面ヲマトヒ、僞裝輿論ヲ釀シ出スコトニ成功シ、今日迄華々シクソノ論陣ヲ進メテ來タノデアル。

しかし、「當用漢字」制定以後、状況はどうなつたであらうか。上の文章の「ローマ字論者」と「保守的勢力」を入換へてみてほしい。聯絡不充分のため昏迷状態を續ける保守的勢力を相手に、結束したローマ字論者・假名文字論者は「當用漢字」といふ漢字制限を最後の砦に長い鬪爭を續ける事になる。現在、「厚顏シクモ『民主主義』云々ノ假面ヲマトヒ、僞裝輿論ヲ釀シ出スコトニ成功シ、今日迄華々シクソノ論陣ヲ進メテ來」てゐるのは渠等、表音主義者である。

參考