制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-11-01
改訂
2003-07-14

日本語關聯書籍の感想

日本語關聯

これからの日本語

「NHKことばの講演會」の記録。「國語のゆれ」をテーマにしてゐる。惡書。

目次

はじめに(小金澤一)

  1. 日本語の味わい(金田一春彦)
  2. ことば・ふれあい(吉沢典男)
  3. ことばと人づきあい(柴田武)
  4. ことばの中のこころ(外山滋比古)
  5. 女・ドラマ・ことば(平岩弓枝)

對談・ゆれる日本語をどうみるか(柴田武・外山滋比古)

あとがき──日本語の将来を考える(金田一春彦)

消えた言葉

橋本治編著・1990年2月20日第1刷發行・1990年3月31日第3刷發行・アルク

そのものは存在しても、それをさし示す言葉が存在しなければ、そのものは存在できなくなつてしまふ。

本書の「はじめに」(橋本治)はすぐれた文章である。おすすめの書。

国語という思想

イ・ヨンスク著・1996年12月18日第1刷發行・1998年2月10日第5刷發行・岩波書店

日本人の言語認識は「國語と云ふ思想」なるものに呪縛されてゐるとする書。筆者は特定のイデオロギーに偏つた視點に基き、「イデオロギーとしての國語」なるものを想定し、それを非難してゐる。

もちろん、ありもしない「天皇制」をでつち上げて非難するのと一緒で、ありもしない「國語と云ふ思想」をでつち上げて非難するのも間違ひである。はつきり言つて本書は「トンデモ本」である。かかる「トンデモ本」が賣れまくつたと云ふのは誠に殘念な事である。或は、國語と云ふ言葉すらもが言葉狩りの對象となる時代が到來したのである。

それにしても、國語改革に反對する人間には(敵の首魁の一人として)有名である保科孝一が、改革派の間では全然知られてをらず、この本でやつと「評價」されるやうになつたと云ふのは皮肉な話。

仁義なき日本語

千早耿一郎著・1994年9月30日初版發行・木耳社

國語の亂れを扱つてゐる善い本。『源氏物語』が讀みにくいのは、惡文で書かれてゐるからだと云ふ指摘にはなるほどと思つた。

目次

  1. 惡文『源氏物語』──序に換へて──
  2. この曖昧なもの──「けれども」の病──
  3. 花瓶を失つた花──修飾語の悲劇──
  4. さまよへる川──竝立しない竝立語──
  5. 國籍不明の言葉──カタカナ語の悲喜劇──
  6. 虚榮と不信──敬語の混亂──
  7. 絢爛たる混亂──自他混同から元號まで──
  8. 悲しき日本語──無知とごまかし──

言語のフォークロア

池田弥三郎著・昭和42年7月5日初版發行・桜楓社

「日本語の亂れ」と云ふ章の小見出しから──非難する前に/責められぬ誤讀/目にカド立てずに/ホウヒコン・オチケン/ことばのアイマイさ/歌は世につれ/歌のことば/漢字障害/漢字は厄介/ふりがななど、いまさらもう絶対におやめなさいということ/國語問題は病んでいるか/国字のあちらにある問題/休戦ラッパを吹き鳴らせ/<町名変更>この中途半端な合理主義/ことばの常識問答/放送とことば。

なほ本文中で池田氏は、福田恆存さんの『私の國語教室』について感情的だと非難してゐるが、非難してゐる當の池田氏こそ感情的ではないか。

近代日本語

杉本つとむ著・1966年2月28日第1刷發行・紀伊國屋書店

定家の假名遣の背景には「道理の感覚」があつた、宣長には深い日本語への愛情があつたと書いてゐる。一方で、明治以來の國語教育を「國家と直結した國語教育」であつたと斷じ、「内容面、形式面で天皇中心の國家意識・東京語の標準語化教育の線にそつて行つたとみることができる」と書いてゐる。イデオロギー的に偏向してゐる嫌ひは確かにあるが、あのあざとさを賣りにした『国語という思想』に比べると筆致は冷靜で、惡くはない書である。

日本の漢字

宇野義方監修・昭和41年10月23日發行・雪華社

はじめに漢字を使ふ利點をきちんと述べてゐる點、善い本である。

漢字は中國で發達した文字であり、假名は漢字を元にして日本人が創り出した文字である。漢字は學ぶには相當な努力を必要とするが、一旦記憶してしまつたものにとつては、これほど便利なものはない。それとは逆に、假名は學ぶにはたやすいけれども、假名で書かれた文や語句の意味を、一目で理解するといふ譯には行かないのである。(11頁)

日本語の特質

金田一春彦著・1991年2月20日第1刷発行・1997年2月10日第17刷發行・日本放送出版協會・NHKブックス617

「はしがき」より

本書は、私が昭和55年4月から9月まで、半年に亙つてNHK教育テレビのNHK大學講座のヒトコマとして、「日本語の特質」といふ題で放送したものを活字化したものである。

……

一體私はテレビで歌や音樂の放送をしたときは、多くのお手紙をいただき、新聞でもほめていただくことがあつたが、言葉、日本語についてしやべつて、今度のやうに評判を取つたのは初めてである。まことに冥利に盡きたことである。……

日本語七變化

加藤主税、中央公論新社

名古屋にある女子大の英文学の教授が、学生のつかう言葉を会話やアンケートから拾い出して整理する課程で発見したことを書いた新聞の連載コラムをまとめた本。どちらかというと正統的日本語ではなく、生まれては消えていく泡沫的日本語に焦点を当てています。

松風庵より

日本語の復權

加賀野井秀一著・1999年7月1日第1刷發行・講談社・講談社現代新書1459

第5章「日本語を點檢する」で、漢字の問題を中心に國字改革についての議論がなされてゐる。もつとも著者は單純に、ローマ字・カナモジのみによる表記よりは漢字假名交じり文の方がよいと言つてゐるだけである。

つまり、膠着語としての日本語は、言語類型學の進化論に反して、英語の未來にさへ先がける便利で分析的な言語と見ることもできるのである。

と著者は言つてゐるが、その論據として擧げられてゐる文獻は、國語改革派の急先鋒であつた金田一京助の『日本語の特質』である。

歐米語に比べて日本語は本當にあいまいか。「ムカつく」「キレる」に潛む若者言葉の落とし穴とは。劃期的視點で語る日本語論。

日本語相談シリーズ

囘答者・大野晋・丸谷才一・大岡信・井上ひさし、朝日新聞社、朝日文藝文庫(全4卷・囘答者別)

日本語の意味・語源・歴史・使ひ方などについて、週刊朝日の讀者から寄せられた素朴な疑問や、難問・奇問・珍問に、劇作家・國語學者・詩人・小説家と、四人の日本語の達人が答へます。