制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2010-11-28

『随想集 生命と言葉』

書誌

目次

I 癌、医療など
癌十話
(一)病原体
(二)タール癌
(三)二本の柱
(四)続・二本の柱
(五)自律と放浪
(六)原因と治療
(七)たばこの煙
(八)吉田肉腫
(九)化学療法
(一〇)民間の役割
日本の医療制度
医学と医療
II 日本語をめぐって
民族意識の回復
未熟な日本人の民族意識
民族は言葉の伝承の上に成立
過去と断絶した道徳はない
分裂的な戦後日本の躍進
個人の自覚による民族道徳を
日本語は日本民族のもの
国語問題の実体と性格
孤独の日本語
「国語」に潜むもの
漢字教育は日本語教育
日本語にかへらう
漢字と仮名――ライシャワー氏の日本語論を読んで――
失はれゆく日本語
眼で見る文字
科学と文字
俳句と漢字
国語審議会に於ける提案(資料)
III 教育二題
学生の自由
入試の改善を急げ
IV 日々随想
還暦に思ふ
人間の進歩について
空白地帯
研究のアマとプロ
定焦点鑑賞
人の頭の中
夢と記憶
ある年の夏――孤独地獄――
みみず鳴く
V 一年百句
一年百句
蜘蛛の子よ

「国語審議会に於ける提案」について

吉田富三は、昭和三十七年十二月十三日の第六期国語審議会に於て、一つの提案を行つた。ところがこれは主流派(国語改革の推進派)の委員に握り潰されてしまふ。

吉田氏は昭和三十九年三月十三日の第七期国語審議会に於て、改めて提案を行つた。「国語審議会が審議する「国語」を規定し、これを公表することに就いて(提案(一))」は第六期に於る提案を改めて行つたもの。之に加へて氏は「現代かなづかい」制定の基本方針について(提案(二))」、「小学校の漢字教育について(提案(三))」、「国語に於ける伝統の尊重について(提案(四))」を提出、国語審議会にその立場を明かにするやう迫つた。しかし相變らず審議会主流派はまともに取合はうとしなかつた。

本書には是等の國語問題史上大變に有名な所謂「吉田提案」と、昭和四十年十二月九日の総会に於る「提案(一)の趣旨について再度の説明」が收録されてゐる。

提案(一)

議案
国語審議会が「国語」に関して審議する立場を、次の如く規定して、これを公表する。
「国語は、漢字仮名交りを以て、その表記の正則とする。国語審議会は、この前提の下に、国語の改善を審議するものである。」

提案(二)

議案
「現代かなづかい」は、日本語の新しい仮名遣ひを創造することを企図したものか、歴史的仮名遣ひを基準として、その不合理、不備の点等を正すことを方針とするものか、何れであるかを明かにすること

これら吉田氏の一聯の提案や五委員脱退事件を經て、當時の国語審議会の閉鎖的な體質と偏向が問題となり、「国語改革の推進=漢字の廃止」と云ふ「明治以來の大方針」が見直される事となる。「吉田提案」は、「漢字制限」の性格が強かつた「當用漢字」が、「目安」としての性格を賦與された「常用漢字」へと改正される機縁となつた。

外部リンク

Web日本語 −小学館 国語辞典編集部− 国語100年
Web日本語|立ち読みコーナー 【目次】
Web日本語|立ち読みコーナー 【はしがき】
Web日本語|立ち読みコーナー 【いわゆる「吉田提案」とその成果】