「新・日本語の現場」が、読売本紙で連載され、最近、新書に入つたが、そのルーツが本シリーズ。
漢字教育に見られるとめ・はねなどの嚴密主義、巷の出たら目な略字化の進行等々、「國語の現場」を社會部記者がレポートしてゐる。
記者が國語改革についてよく知らないで書いてゐるので、色々と變な記述がある。
第1集に引續き、漢字教育の問題と學校や塾で行はれてゐる漢字學習法の紹介があるほか、「当用漢字」の實施状況とその問題點の調査、字體整理についての檢討がなされてゐる。
卷末に、獨自に作成された「当用漢字の新旧字体対照表」がある。
コラムが幾つかある。
でも、漢字を特別に教え込むというのはどうでしょう。もっと基礎的なこと、話し方や言葉の味わい方などを教えた方がいいと思います。授業を一度見せてもらいましたが、たいへん寒々した思いがしたことを覚えています、なるコメントを最後に載せて、大變批判的に扱つてゐる。
文字學習についての報告も引續き載せられてゐるが、第3集では、歴史的な事實について、就中、表音主義運動の歴史について、多くのページが割かれてゐる。
卷頭に、岩淵悦太郎による序文「貴重な資料として」を載せてゐる。岩淵氏は、戰後の國語政策は國語の簡素化・統一化が狙ひであつたが、その狙ひ通りには行かず、却つて思わぬ問題
を惹起こしてしまつた、と書き、「日本語の現場」と云ふ新聞連載がさうした問題を記録した貴重な記事であると評價してゐる。しかし、本シリーズの記述は全體に國字改革を擁護する立場を採つてをり、思わぬ問題
を起してゐるのは改革に非協力的な守舊派の頑迷な態度が原因である、と云ふ事を暗示する文章がそこかしこに見られる。
なほ、第3集の卷末には、中田祝夫の作成した「古体の片仮名表」が附録として收録されてゐる。
編緝方針が甚だ曖昧だが、それなりに參考にはなる。
新聞社の出版物らしく「本音」ははつきり示してゐないが、國字改革に贊成の立場をとつてゐる事は明か。「細かい部分で問題はあるが、國字改革は全體として良いものであつた」「今、反動派の攻撃で、改革が挫折しつゝある」と云ふ印象を讀者に與へる文章が少くない。
はじめの頃の記事は、今一つ深みに缺ける。しかし、後半は、取材によつて記者の知識が向上した爲か、かなり詳しく書かれてゐる。
全體の氛圍氣が甚だ偏向してゐるのに注意すれば、國字改革や漢字教育に關する知識・情報を得るのには慥かに便利。