制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-06-15
改訂
2005-04-30

『電脳社会の日本語』

日・中・韓の漢字は統合されてしまふのか……。歐米アルファベット文化圈との熾烈な攻防!

文字コードの基本原理、文字コードの成立及び日本の文字コード制定に關する經緯、國語國字改革の齎した國語の混亂、各國の思惑が交錯して混亂したUnicodeの規格策定、等の解説書。現在の混亂した状況がどのやうな經緯で出來したかをまとめた著作。

筆者・加藤氏は「コンピュータの世界に於る互換性を重視する」立場であり、ユニコードには贊成してゐない。

書籍では素人向けに記述が簡略化されてゐる部分があるので、依然、技術的な解説は筆者のウェブサイト(ほら貝)の方が詳しいところもある。一方、日本の文字コード制定に關する經緯については、ウェブサイトでは未公表の事實が書籍に記載されてゐる事もある。

本書の意義の一つは、文字コード問題を含む國語の問題に關して、日本人が異常なまでに感情的になる、と云ふ事實を記録した事である。言論による批判ならともかく、ある業界關係者からJIS支持派のホームページの内容を三日間にわたつて送りつづけるといふ嫌がらせを受け、JIS委員の方にをさめてもらふといふ經驗もした、と云ふ報告は、案外活字として殘らないものであり、後世の重要な資料とならう。

餘談

本書及び後に出版された『図解雑学文字コード』の内容については、批判が少くない。

漢字袋安岡孝一氏曰、正直なところ、加藤弘一の文字コードに関する著作『電脳社会の日本語』『図解雑学文字コード』は、このような一次資料をちゃんと読んでおらず、適当なことを想像で書き散らかしているだけだという印象を受けます。

その安岡氏の著書『文字コードの世界』(東京電機大学出版局)については、池田証寿氏が文化的背景を語るために―安岡孝一・安岡素子『文字コードの世界』に寄せて―で書いてゐて、以下のやうに述べてゐる。

実を言えば、

「文字コードは文化的背景を投影している」→「じゃその文化的背景を語りましょう」

という具合にやろうと思えばやれるだけの材料を安岡御夫妻はお持ちである。

福田恆存も言ふやうに、國語國字問題については國語改革反對派の側に「專門家がゐない」のであり、それが改革反對派の主張に細かい誤を含ませる原因となつてゐる。しかしながら、總體として「國語改革は誤」と云ふ結論は搖るがないのであり、その結論に説得力を持たせる爲にもマニア的な研究者に據る誤のない國語改革批判が必要である。

安岡氏には是非とも文字の問題に關する體系的な解説書を書いていただきたいものである。

目次

  1. 電腦時代のS・カルマ氏
  2. アルファベット世界への參入
  3. 國際文字コードとしての漢字
  4. 漢字制限論爭の亡靈
  5. グローバル・スタンダードをめぐる攻防
  6. 文字コードの現在

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