柳田國男は戰前、文章をやさしく書かうといふ山本有三の意見に贊成してゐた。ローマ字運動に親近感を抱いてゐたらしい樣子もある(『國語の將來』參照)。
對談集を見ると、國字改革をやつた山本らに、柳田は當てこすりを言つてゐる。さすがに「当用漢字」と「現代かなづかい」には好感を持てなかつたらしい。
存命中に刊行した單行本はどれも正字正かなである。晩年の『海上の道』も、最初の單行本は正字正かなである(筑摩書房刊)。
角川文庫や筑摩叢書に再録された著作は、ほぼ全てが略字略かなに改められてゐる。例外的に、『遠野物語』だけは、文庫でも正假名遣のままである。文語文である事が幸ひ(?)したらしい。
かつて柳田の著作は角川文庫に澤山入つてゐた。現在、殆どの著作は筑摩版『柳田國男集』(正字正かな)、ちくま文庫版全集(新字新かな)で讀める。
以下、取敢ず、國語國字問題に關聯するもののみ列記する。
專ら若い女性を讀者に豫想して、書いて見たもの。
國字問題には必ずしも關係がないものだが一往擧げておく。