國語語法史の簡單な解説
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明治41年・寶文館
語法の史的認識の基礎として、文法的範疇を決定する必要があるといふ見解のもとに、明治四十一年、一般文法の範疇を論定した
もの。以下の研究書はこの範疇論を基礎に書かれ、奈良朝、平安朝、鎌倉等それぞれの時代の文法的事實を記述
してゐる。
──歴史的寶典の再版なる──
本書は明治三十五年先づ上卷を上梓し、後六年を經て合本出で、當時未だ一定の確立したる體系の無かりし日本文法學の爲に一石を投じたるもの、後數年ならずして其の眞價を認められ、最近に於ては當時定價四圓五拾錢のもの一躍して四拾圓の定價を呼び尚且つ世の需要の切なりしに鑑み、著者に要請して再び世に公にするに至れり。苟も日本文法學を學ばん者先づ本書を一讀再讀するを要す。
昭和10年5月15日第1刷發行・昭和15年12月25日第7刷發行・岩波書店・岩波全書58。
この小著が異常な寵遇を得た事については、ここに深く感謝の意を表します。それにつけても誤脱の少くないことを恐縮してゐます。ここにそれらの誤脱を取り敢へず訂して再刷に附しました。これについては直接間接にそれらを教示せられた諸氏又萬葉假名遣の元禄版をわざわざ惠與された岡田眞氏に篤く御禮を申します。
昭和十一年四月三日
昭和11年・寶文館
多數の研究を經て成つた文法研究の最高峰を成す名著。形容詞・位格等は『日本文法論』の不足をおぎなつた。
1913年・寶文館
1913年・寶文館
1954年・寶文館
本書は現代の口語文語を内容とし、往々古代文法の或るものにも論及せり。諸説精緻にして的確、前人未發の言多し。殊に句に人稱を説きたること、敬語に文法學上の説明を下したること、音便に合理的説明を與へたること等は本書の特色なり。
大正11年11月28日發行・昭和18年3月10日第13版發行・寶文館
現代の口語は複雜多端なるが、何人も習慣により大體その用法を誤らずと雖、その語法を説明せんは至難の業たり。本書はこれに關して精細の説明を與へたり。
昭和十三年九月二十五日初版發行・昭和四十五年二月二十五日復刻版發行・寶文館出版
五十音圖は漢字の反切を説明する爲に生じ、のち國語の説明に使はれるやうになつたと説く。
五十音図はいかにして生じたか、どのような歴史のあるものか、また国語の上にいかなるわざをしているか。本書は五十音図の知識の普及を目的として、写真図版五十余点を示してわかりやすく解説したものである。
五十音図の成立・錯乱・復古の歴史を実証しようとしたもので、大矢透の『音図及手習詞歌考』(……)が、悉曇起源説をとり、かなり軽く扱ったのに対し、本書では国語のため日本人の創意になったものであることを強調している。
資料は『音図及手習詞歌考』に、主としてよっているが、それを深く検討し直し、違った角度から立証しているのが注意される。
昭和14年7月1日初版發行・昭和45年3月20日復刻版發行・寶文館出版
假名遣の起源から、定家、復古、字音を經て現代に至るまでの變遷を敍述し、國語の正當な理解の一助とした。
定家假名遣復古假名遣を詳説して現代の假名遣に入り文部省案に嚴正なる批判を下して著者年來の主張を明にしたるもの。假名遣問題の喧しき今日何人も一讀を要す。
「上代特殊假名遣」ではなく定家以降の歴史的假名遣に關する論攷・解説である。
大正13年6月25日發行・東京寶文館
昭和6年6月20日訂正版發行・昭和18年9月10日訂正5版發行・東京寶文館
凡そ敬語の發するはもと社交の間にあり。敬語は實に人々相推讓する意を表明する一の方法なり。もとよりこの敬語は上下貴賤の區別をあらはすに適すといへども必ずしも階級制度の結果とのみいふべからず。人は人として相交る間に互にその人格を重んじ、その才能(、)知識、徳望、品格等を尊ぶに於て、それを言語によりて表明することこれ實に自然の人情にしてそれの存するはこれわが民族間に推讓の美風の行はるるによるものなれば、寧ろ嘉みすべき事なりとす。
敬語法を、口語・候文・普通文の三つに分ち、多數の例をあげて用法を説明し、文法上の法則を明らかにした。
本書は敬語法を口語、候文、普通文の三つに分ち、詳細にその用法を説明せるものにして、敬語法に關してかくも徹底したる研究を公にせるもの本書實に嚆矢たり。
1940年・寶文館
山田氏と秋田中學(當時)の小島好治が、可能な限り簡單に歴史的假名遣を學べるやうにと工夫して編纂した歴史的假名遣の教科書。山田氏の報告に據れば、中學生に一囘二十分の授業十囘で歴史的假名遣を習得させる事が出來たとの事。
國語問題協議會公認の正假名遣教科書として、企畫から半世紀を經て申申閣から復刻、發賣された。復刻版は山田忠雄(山田孝雄の長男)が訂補を行なつてゐる。
昭和7年10月29日發行・昭和7年11月27日再版發行・東京寶文館
昭和18年12月11日發行・白水社。
昭和31年1月5日第1刷發行・平成5年3月10日第13刷發行・寶文館出版
「君が代」の歌の古代から現代に至る千二百年間の歴史と變遷、本質を研究解明。(著者は昭和32年文化勲章受章)
大化から明治まで、すべての元號の正しい讀み方を、その當時の古文書の假名書き例などで明確にした字典。
昭和16年5月初版・昭和17年4月再版
再版時、「櫻の種類」及び地名索引を増補。
山田忠雄校譯・1990年3月10日第1刷發行・1995年1月25日8刷發行・講談社
「櫻の種類」と地名索引は割愛された。
昭和15年11月15日發行・昭和18年7月3日第4刷・中央公論社
近時萬葉集に關する著書尠からずと雖、本文語辭の解釋の穩健にして引證的確人をして言々首肯せしむるもの殆ど有るなし正確に萬葉を學ばんとする者は本書を措いて他に求む可らず。
平家物語は一面通俗歴史たる外、他面文學上の著作及び語り物として古來もて囃されたる書なり。その文優雅にして而も遒健、莊重にして而も豪宕、句々金玉の響あり。凡そ歴史文學に從ふ者皆讀まざるなし。唯現今流布の諸本は何れも「一方檢校以吟味令開板之者也」の奧書ある略本にして、記事の脉絡を失ひ、しかも誤脱杜撰少からざるは遺憾なり。校訂者は我が文壇の爲に是等の俗本を驅逐し、眞正の本を呈供せんと欲して爰に本書を公刊せられたり。本書の底本は一方流平曲中興の祖と目せらるゝ沙門覺一の奧書ある所謂覺一本の別本にして、此外東京美術學校所藏の古活字本その他の善本を參考して嚴密に校訂し、読者をして眞正平家物語の如何なるものなるかを知らしめたり。讀者これに因りて安じて平家物語の研究に從ふを得べくその學會を益するの多大なる知るべからず。尚卷末には事實としての索引及文學としての索引を添へて披讀に便せり。
昭和18年6月15日發行・昭和18年11月3日2版發行・寶文館
雅樂資料の寶庫、源氏物語と共に枕草子、平家物語の音樂記事を摘出し、分類、解説を加へた特異の名著。
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昭和17年11月17日發行・畝傍書房
日露戰爭歐洲大戰以來、人心放縱に流れ、危險なる外來思想襲來して人心に動搖を來せる折柄、大正十二年九月一日關東地方の大震災あり、於是乎、同年十一月十日大詔渙發、切に國民精神の作興を促さる。山田先生謹嚴の筆を以て之を奉釋し、此の大詔の眞精神を闡明せらる。國民必讀の寶典として諸學校の賞與品として絶好の讀物たり。
大禮に關しては何人も知らんと欲する所なれども、世間之に關する詳細の記述あるなく僅にその時々の新聞雜誌等の記事に因りてその大體を知るべきのみ、山田先生この缺陷に鑑み、往年謹嚴の筆を揮つて本書を著され、斯界唯一の權威書として好評あり、其後久敷絶版となり居りしが、今囘訂正を加へ面目を新たにして再び江湖に見ゆることゝ成りたり。前者と同じく戸々必備の寶典、諸學校の賞與品として推奬す。
明治四十三年時恰も日露戰役終を告げ、世は昌平に狃れて鼓腹撃壤の樂を縱にする時、思想界には種々の思想横流して百鬼白晝に跳梁し、未曽有の盛世動もすれば將來衰亡の因たらんとするの勢顯然たるものあり。山田先生慨する所あり、椽の筆を揮つて我が國體を闡明せられたるもの本書なり。今囘字句内容に改訂を加へて再び世に公にせらる。國民一般殊に育英家の一讀再讀を望む。
世に國民道徳を説くもの少なからずと雖、多くは道徳を標榜してその實我が國を利せんとするものに外ならず、明治天皇が往年教育勅語を下し賜ひて「之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」と宣ひし宏遠なる聖旨と相距たる遠しと謂ふべし。本書は三種の神器によりて表象せらるゝ至誠・愛・敬の三徳を基礎として、我が國民の均しく遵守すべき道徳を謹嚴に而も痛快に述べられたるもの、萬人必讀を要す。
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一般國民の國體に關する認識が十分でない事をつねづね遺憾に思ひ、國體觀念を養成するに足る資料方法もがなと考へてゐたのであるが、七月三十日夜中央放送局仙臺支局より放送せられた山田孝雄先生の「國體の淵源を教ふる國生の物語」と題する講演は、國體の尊嚴なる所以を説いてあます所なく、論旨又平明明快にして、何人にも理解せられた事であらうと感じたのであつた。この放送に接して感激に堪へず、直ちに仙臺なる先生の許に赴いてその成功を祝したのであつたが、更にこの講演の趣旨を活字に附して一層廣く弘める必要を痛感したので、先生の御快諾を得てここに印行し、一人でも多くの人に、否國民の一人も殘さずすべての人に、この先生の講話を理解して戴きたい念願を以てこの小册子を世に送る。