制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-07-05

『國語學史』

書誌

内容

目次

はしがき
第一部 序説
  1. 國語研究一般と國語學史との關係
  2. 國語學史編述の態度とその方法
  3. 註釋語學より見た明治以前國語研究の一特異性
第二部 研究史
  1. 第一章 第一期 元禄期以前
    1. 研究の概觀
    2. 古典の研究
    3. 歌學並に連歌の作法
    4. 漢字漢語の学習並に悉曇學
  2. 第二章 第二期 元禄期より明和安永期へ
    1. 上代文獻學とその語學的研究
    2. 上代文獻の用字法の研究
    3. 假名遣の研究―語義の標識としての假名遣觀―
    4. 語義の研究―本義正義の探求
    5. 語法意識の發達
  3. 第三章 第三期 明和安永期より江戸末期へ
    1. 上代文獻及び中古の和歌物語の研究とその語學的研究
    2. 用字法研究の展開
    3. 假名遣の研究と假名遣觀の訂正
    4. 語義と文意の脈絡とに就いての研究
    5. 語法研究の二大學派
      1. 本居宣長のてにをは研究
      2. 富士谷成章の文の分析及び語の接続に就いての研究
    6. 鈴木朖の兩學派統一―活語の斷續の研究
    7. 本居春庭の活用研究―段の發見
    8. 東條義門の活用研究の大成―言の成立
    9. 中古語法の研究と上代文獻學との交渉
  4. 第四章 第四期 江戸末期
    1. 語學研究獨立の傾向
    2. 音義言靈學派
    3. 語法研究の繼承
    4. 和蘭語研究と國語に對する新考察
  5. 第五章 第五期 明治維新以後
    1. 明治維新と國語研究の新見地
    2. 國語國字改良の諸問題
    3. 改良問題の調査機關と國語研究
    4. 文典編纂の勃興
    5. 口語文法の編纂と方言調査
    6. 言語學の輸入と國語研究上の諸問題

はしがき

私はこの小稿に於いて、國語學史上の個々の研究内容を詳細に記述しようとは企圖しなかつた。併しそれは限られた紙面を理由として、記述を簡略に止めて置くといふことを意味するのでは決してない。私の企圖する第一の事は、日本に於いて、獨自に發達した國語研究が、從來或る歪められた角度から觀察せられ、剩へ、その要求せらるべき當然の地位さへも與へられずに、非科學的なもの、無價値なものとして、冷遇せられて來た事實に對して――若しそれが當然のことであるならば、致し方がないとしても――それが物を素直に觀察する態度の缺如によるものであることを知るに及んで、在來の國語研究に、それが持つ正當の地位を與へようとする事であつた。近世國語學については、それが所謂國學體系の内に有機的に位する正當な位置を要求する爲に、此の論稿の大半を費やしてしまつて居る。それは國語研究の内容そのものを明にする爲にも亦止むを得ない事であつたと同時に、私が今の場合爲さねばならぬ義務でもあつたのである。個々の研究の内容を詳に歴史的に記述することは、又他日の機会を是非得たいと思ふ。

西洋言語學の影響のない舊國語研究の築き上げた業績の正當の位置を理解するならば、讀者は恐らく國語學の爲し得た結果の上からのみ汲み取ることが出來る國語研究の最も大きな暗示を得ることが出來るであらう。私は自らの拙い研究にも拘はらず、讀者に期待する最も大きな點はそれである。

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