俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記

 春はゆっくりゆっくりやってきますが、秋はある日不意に来ている。 古今集秋の部一番の有名な「秋立つ日に詠める」、という歌を思い出します。

 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる   藤原敏行朝臣

 まったくそのとおりです。よくわかりますね。空を見上げればもう羊雲,鰯雲。今朝は昨夜の夕顔がまだ白々と咲き残っていました。方丈記じゃないけど「残ると言へども夕べを待つことなし」。物悲しいな。きがつけば、草木はすでにきちんと秋の準備をしています。私にとっての、秋の準備といえば、それはお月見準備、ということです。月の句はいろいろありますね。

     月天心貧しき町を通りけり  与謝蕪村

 この感覚モダンですね。パリの裏通りの光景みたい。月の句はすごいのがいっぱいありますね。

     能面のくだけて月の港かな  黒田杏子

 隠岐の島か佐渡島あたりの光景でしょうか。配流の貴人を慰めるためだった能楽など芸能の盛んな土地柄ですから、古い能面が残っていることでしょう、。面を打つ方もいらっしゃると聞きます。月の波間に、砕けた古面の記憶が立ち上がるのか。それとも能面の神秘的な面影が、波間に砕ける月影にかさなってきた、ともとれます。

 さて写真右側の染付鼎紋様八寸皿には小さながんもどきのお月さま。鼎は前にも書きましたが「鼎の軽重を問う」という格言のあの鼎です。王権の象徴だとか。  

 真ん中の赤絵の馬上盃にモツァレラチーズ。丸い形が可愛かったので前菜に。左側の鉢に小籠包。模様が全然見えませんが見込みにも吹き墨に兎が跳ね、外側も兎の群れが描いてあります。うさぎはかわいらしい動物なので描くのが楽しくて、ついつい描きすぎてしまいます。

 真ん中の小茄子向う付けは丸い小紋が描いてあるのに合わせて丸いもの尽くし。今回は丸いもの(月のつもり)と兎がテーマです。その上はもちろん月見そばです。青御須の小ぶりの菓子鉢は意外に使い勝手の良い大きさなので何にでも使いまわします。

 手つき鉢にはサトイモの煮転がしとモロヘイヤのおひたし。ちいさな角皿にはお芋のきんとんです。これも兎さんと秋草紋様。

 小さな月がそれぞれの器にいっぱい。田ごとの月の風情ということにしましょう。それにしても今月もまた作りすぎたみたいですね。

     読み溺れまた夕月を逃しけり  おるか

2017年9月4日