俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記

 北陸の空、今日は鈍色に曇っています。花曇りというのでしょう。灰色の中に仄かに光を含んでいます。ほころび始めた庭の木の花が先をあらそって満開を迎えようとしています。辛夷、やオガタマノキの丈高い白い花。水辺にはトサミズキや山茱萸の黄色い花。 そして橋のたもとの枝垂れ桜。

 どの木も小さな苗の時分に植えて、今では屋根を超えるほどになりました。「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」とは、唐代の詩人劉希夷のよく知られた詩の一節ですが、花も変わりますよね。すべては移り変わる。うつろい、消えゆく。だからこそ今年の花は去年よりも美しい。

 さて、テーブルの上。山里にようやく来た春を寿いで器は桜の花尽くしです。 花の御膳でまずは一献。手前の小さな赤いぐい飲みの見込みには「花」の一文字。 真ん中の「緋桜向付け」には春キャベツのおひたし。菜の花も少し混ぜてあります。春キャベツっておいしい。たんなる御ひたしも器が華やかなので、にぎやかに見えますでしょう?同じ緋桜の蕎麦猪口にはモズクの酢の物。海藻も春は美味しいですね。海の中にも春は来にけり!

  左の板皿に小さなおにぎり、一応、桜茶にする塩漬けの桜花をまぜて朧昆布で包んで…花も朧の雰囲気をねらったんですが、なんだかボロッちい感じになってしまいました。 奥の、染付桜川菓子鉢、やや大ぶりな鉢です。桜川に桜餅ではちょっとしつこかったですね。

 お昼ご飯を食べる間に草花も木の花も夢のように開いてゆきます。「時よ止まれ。おまえはあまりにも美しい!」とファウストならずともさけびたくなります。そして、こう応け加えたい。「しかし、行くがよい。二度と帰らぬ後ろ姿はもっと美しい!」と。

     人かん(ウ冠に環のつくり)や青花の壺の花曇り  おるか     

2018年4月2日