俳句と、やきものと、季節の話題のサイトです。花や鳥のこと、染付、色絵、赤絵の四季折々の器のことなど、ごゆっくりどうぞ。「うつわ歳時記」は、2001年4月1日に開始しました。「今月の表紙」は毎月第一月曜日に、「工房より」は毎月曜日に更新します。 石川県加賀市 橋本薫(おるか)、橋本俊和(オットセイ)

うつわ歳時記

「さんまさんま秋刀魚苦いかしょっぱいか」 さんまをみればおもいだす、佐藤春夫の詩の一節。詩人の故郷の和歌山では、詩中にあるとおり青い蜜柑をしぼってかけるのだとか。おいしそうです。「あはれ秋風よ情あらばつたへてよ」とはじまる秋刀魚の詩。よっぽど一人で秋刀魚を食べるのが寂しかったんだろうなと同情します。さんまの句もたくさんあります。



   荒海の秋刀魚を焼けば火も荒ぶ    相生垣瓜人



荒海の中を元気に泳ぎまわっていたろう秋刀魚に、思いを寄せているようです。この俳人に関しては何も知らないのですが、荒海と火が秋刀魚という一点を通して共振しているような、全にして一、一にして全という禅的な世界観を感じます。


ちょうど酢橘をいただいたところだったので、贅沢に絞ってみました。さんまさんま秋刀魚苦くてすっぱくて。  


秋刀魚ののっている赤絵八寸皿。その手前に、絵がほとんど見えませんが赤絵竜虎飯碗に栗おこわ。右側の染付唐草カフェ・オ・レ・ボウルにキノコのスープ・浮き実は加賀麩です。左の馬上盃にもエノキタケと生湯葉。その向こうの手つき鉢に、戴き物の野菜とかお菓子とかありあわせいろいろ。  


手付きの鉢は、手があって便利、というものでもありませんが、どことなく野趣があって、それを持ってどこかピクニックでもしているような心持になれます。ちょっと紅葉狩りの気分ですね。  


台風が列島を通り抜けて、昨晩はこわかったけれど、ようやく日が射してきました。家の前の川も激しい水音を立てています。川底の苔の類が洗い流されてきれいな岩肌がのぞけます。急に牙をむいて怖ろしいこともありますが、水は、美しいものですね。紅葉の頃の渓流の景色は華やかさに厳しさもあって格別です。



   水澄むや水底見つめをるままに  おるか

   

2018年10月1日