2月28日:独立記念館見学(天安)
日本と韓国の間には、20世紀前半に不幸な歴史があった。韓国人からみた、この時期の日本の行為についてを展示した資料館が、ソウルから1時間半ほど郊外にいった「天安(チョナン)」という街にある「独立記念館」にある。ここでいう「独立」とは、まさしく日本からの独立を意味している。ちょうど旅行期間に「独立記念日(3月1日、祝日)」があり、その日は入館料が無料になるとのことであったが、さすがにみんなが関心をもったまさにその日に、展示の対象である日本人としていくのは気がかりだったので、その前日(2月28日)に見学してきた。
ソウルから行くには、鉄道か高速バスだが、今回は鉄道を利用した。
ソウル駅の広いコンコースは金曜かつ連休前の帰省ラッシュ(?まだ午前中なのに)のせいかかなり混雑していた。軍服姿の若者も数多く見られた。当日券売場があるのでそこで購入する。料金は1人4900ウォン。直後の列車は空席がなかったようで、1時間後(11:45発)のムグンファ号となった(ムグンファは1時間に3〜4本出ている)。コンコース内にはファストフードなどのレストランや本屋もあり、早い昼食を取ったりして時間をつぶした。改札は発車の10分前くらいからホーム毎に行われる。列車は白地にオレンジのラインが入ったもので、ほぼ定刻に出発した。車内アナウンスは韓国語以外にも、英語、日本語、中国語が続けてあったのには驚いた。出発して5分くらいで車窓には汝矣島の高層ビル群が見える。しばらくは郊外のベッドタウンといった感じで、高層マンション群が続く。30分くらい走ると、まわりはのどかな田園風景に変わっていった。1時間強で最寄駅のチョナン(天安)駅に到着する(12:51着)。
チョナン駅を降りたら、駅前広場の地下道を通って、駅に直角に通る道にあるバス停から500番の座席バスに乗る。バス停の目の前にあるキオスクでバスの乗車券が買えるので、前もって買っておくと安心(1180ウォン)。なかなか来ないので心配になったが、20分くらい待って500番のバスが来た。バスに乗ったらできれば左側に座ると記念館が見つけやすい。バスの運転は非常に荒いし、クラクションの連発だった。韓国パワーのすごさに圧倒された(座席バスだからまだよかった)。途中25分くらいして高速道路との平走が終わり、左折して急に整備された道に出たら次の停留所が独立記念館になる。もちろんその時左に背の高いモニュメントが見えるはず。到着時間は1:45頃。降りた場所は、記念館の駐車場前で、そこからは一時的に目印の塔が見えないので一瞬心配になるが、道路を渡って駐車場の方へ行けばやがて見えてくる。
たまたま一緒に降りた初老夫婦の男性がいきなり韓国語で何か聞いてきたが、さっぱりわからず、日本人であると韓国語で言ったら、「ワタシ ニホンゴ スコシ ワカル」って言ってきて、挨拶と握手を求めてきた。場所が場所だけにちょっとビビっていたが、これでちょっと心が落ち着いた。
入場券を買い(2000ウォン/人)中に入るが、広大な敷地で、展示館まではかなり歩く。まず目につくのはバスの中から目印になっていた「民族の塔」である。通りすぎてしばらく歩くと、大きな屋根の「民族の家」がある。屋根の下には、民族の独立への気持ちを思わせる、巨大な人物の石像が置かれている。ここでは、翌日の独立記念日式典の準備が行われていた。「民族の家」の向こうに7つの展示館がある。1つめは日本に植民地化される前の朝鮮の歴史的な建物の模型や書物、ハングルの成り立ちなどについての展示があり、ふつうの歴史博物館と似た雰囲気である。2つめは日本ほか、列強が朝鮮半島の支配を強めた頃の展示である。3つめが日本によって植民地化されてからの展示で、特に日本軍による残虐な行為について強調されている。強制連行の様子や拷問の様子などが、リアルなロウ人形(これが動く…)と悲鳴の音でまざまざと展示されている。拷問体験館もあり、人が立つ空間しかない牢獄は、実際にあったものと同じもので、その「すき間」に人間がずっと入っていると、足の神経から麻痺して、やがては身体全体がおかしくなってしまうそうだ。座れない、横になれないことがいかに残虐であるか、というのを想像することができる。4つめからは日本統治に対する独立への運動の様子が示されている。海外の韓国人による運動の様子や、国内での運動について展示があるが、特に国内では命がけのことであったようだ。最後は韓国の未来への発展を描いた360度スクリーンの映画が上映されていた。
敷地内は展示館以外にも、殉職者の墓碑などが屋外にあり、すべてまわるにはまる1日かかってしまうほどだ。
開館(1987年)当時、日本での教科書問題など、日本の行為に対する不満の象徴として民族意識を高める意図もあったとのことで、日本語表記はまったくなかったそうだ。今では概要説明などには英語、中国語などと併せて日本語もあり、日本人でも特に心配せず見ることができる。また、館内売店では日本語のパンフレットも売られており、販売員と日本語でもやりとりができた。記念館側としても、もっと日本人にも見てほしいと思っているだろうし、日本人ももっと過去の歴史を直視して、これからこのような悲惨なできごとを二度と起こさないようにするために、何ができるかを真剣に考えるためにも、ぜひ見るべきだと思う。今は独立記念館を見るための日本人向けのツアーはないようだが、ツアーによって軽い気持ちで見に行っては失礼だし、かといって認知されないのも本意ではないし、複雑である。やはりしばらくは自力で行ける人が行って、クチコミ的に広めていくのがいいのだろう。
帰りのバスは駐車場すぐ横(来たときと違う場所)から乗れる。たまたま来たバス(一般バス)が駅まで行くとわかり(バス横にハングルで書いてある)、乗った(800ウォン)が、席に座れないと、加速やカーブがキツ過ぎるので、体力に自信がない人や疲れているときは500番を待ったほうがよいかも。
チョナン駅には夕方5時頃着いたが、駅の切符売場は超満員!!。帰りのムグンファ号は座席の空きがなく、立席券(4200ウォン)で直後の列車に乗り込んだ。ソウル駅には6時半ころ到着した。