藪漕ぎの楽しみ

 

     

 六部堂越えの道

明治XX年と刻まれたお地蔵さん

 

【アクセス】

 六部堂越えは、久万高原町の六部堂と上畑の川・河之内を結ぶ峠越えの道である。今回辿った河之内側の林道は荒れ果てていた。赤テープも何も目印らしきものが無いし、林道を使われていたのも何年前の事か不明だ。そんなこともあって、畑の川側から辿るのは困難だろう。

 

国土地理院 1/25,000図を別画面で見る。

 

【古の道は】(2015年9月26日)

 この計画は、一昨年“六部堂越え”を通った際に、峠越えの路に興味を覚えて何時の日か辿ってみたい、と思っていたのだった。そして、今回の実行に至ったのだった。

  

 10時5分、風穴の駐車場を出発した。いつもの通りの皿ヶ嶺行の出発である。

  

 

 

 もうそろそろシコクブシが咲く時期だが、今は時期が早いのかあまり見ない。シカも食べないシコクブシだが、植生の変化は我々人間で測ることはできまい。しかし、季節の移ろいは木々の紅葉にも現れるもので、もう既に色づいている葉もある。

 

   

 そして、季節の移ろいは様々なキノコの出現でも解る。先週には見れなかったツキヨタケが、そろそろと枯れ木に出現である。そんなキノコに目を奪われながら、10時50分、ベンチに着く。ザックを下すと間もなく「わいわいさん・・」と、女性が上がってきた。“カタックリさん”とは久しぶりの再会だった。小生の退院後、山では初めての出会いのせいか話は尽きない。「明日は石鎚の沢登りに行く予定なので、今日はチョット足慣らしで・・」らしい。そして一緒に竜神平へと出発だ。竜神平には11時16分に着いた。土曜日だというのに、常連さんが三名いただけだった。我々は10分余りの休憩で再出発したのだが、カタックリさんは昼休のようだった。

 

  

 今日はガスっているせいか、そんなに暑くは無い。今の時期、春と違って花は咲いていないので、目につくのはキノコくらいだろう。皿ヶ嶺の頂上には12時前に着いた。二組の登山者が休憩していた。我々の食事は15分もあれば終わる。12時10分、頂上を後にして目指すは上浮穴側にある“六部堂越え”だ。

 

   

 一昨年、六部堂越えから上がってきたときに、頂上直下の登山道脇に作業道が作られていたのに驚いたのだった。軽トラも通行可能な道幅の作業道は、勿論、ここ何年も使われていない。そして、登山道が造られている尾根にはアカマツが生えている。そんなこともあって、相棒は“茸”探しに時間を食う。ふと見ると、道端に紫のリンドウが今にも咲こうという勢いだ。

 

 

   

 案内標識は、ここかしこに建てられていた。そして、そこかしこにドングリや栗が落ちている。また、弾けた栗のイガが落ちているのだが、中身が無い。さて、誰が食べにきたのだろうか。

 

   

 普通の栗に混じってシバグリまでも落ちている。暫くの下りで、13時8分、お地蔵さんが二体祀られている“六部堂越え(@地点)”に着いた。下方を見て、向かって右手は先日辿った“六部堂”からの路だ。そして、左手が今日辿る道である。

 

 

 足を踏み出した途端、路はおぼつかなくなった。古の路は“獣道化”していたのだ。一帯は植林されているのだが、間伐の手が入ってからもう何年もの年月を経ているのだろう。直前に“猪”が通ってかのような路である。この先、滝にでも出合わなければ良いが・・と不安も過ぎる。

 

 

 暫く歩くと、行く手を倒木に阻まれて下に見えた作業道へとエスケープした。A地点で、13時20分だった。地図に記された道は未だ少し先の筈。しかし、壊れた古の路を探しながら辿るより、作業道を辿る方が少しはマシの筈である。

 

 

 少し降りると、水がチョロチョロと流れるようになって、すぐ先で沢の様相となった。右手にも作業道が伸びているが、その沢の左手に踏み跡を見付けた。作業道は荒れ放題で、猪のブルドーザーが入っていて掘り返されている。そんな路をしばらく進むと、右手の沢から猪の“警戒音”がしている。急いで、枯れ枝を掴んだが、小生の足は無意識のままに急ぎ足となっていた。

 

 

 左手から小沢が流れ込む場所を通過。路は左岸に続いていた。13時40分、道がやっと“林道”らしき装いになってきた。先ほどまでの、“猪のブルドーザー”が通った跡が無くなってきた。しかし、車の轍には雑草が伸びてはいないが、左右から伸びている雑草は路を覆っている。暫くすると沢の音が遠くなってきて、路が沢を渡るように右岸へと別れていた。しかし、ここは左岸を辿るのが正解なのだ。

 

   

 陽が差し込むような場所に、ミゾソバと言う花の蕾が付いていた。登山道も同様なのだが、道端の陽が差す場所には可憐な花々が咲くものだ。淡々とした林道歩きでは、道端に咲く花や指導標などの人工物に目が行くものである。また、ツルニンジンも咲いていた。

 

 

 道端で、先日の引地山周回路の帰路にも出合った“真っ赤な実”を付けた植物を見付けた。13時53分、林道脇に造林小屋だろうか、もう古ぼけていて使用可能かどうかは不明だ。

 

  

 黄色い花はヤクシソウと言うらしい。林道の右・左にお花畑が現れると、14時7分、最初の民家(現在は空き家)が現れた。ここが地図のB地点だ。

 

  

 黄金の稲穂が見えてきた。河之内集落の最奥に位置する場所だ。ここから見える田圃は全部に稲が植えられているようだ。そしてこの集落にはまだまだ人が住んでいるようで、一安心だ。道端、民家の人が手入れしているのだろうか、シュウメイギクが咲いていた。集落の間の路をクネクネと降りて行くと、稲の刈り取りをしているコンバインが働いていた。

 

  

 14時半、上畑野川の河之内集落を走る県道に出合った。以前、ペンキで名水の案内が書かれていた石垣だが、その案内も今は消えてしまっている。この道を辿れば朝の出発点の風穴へと着くのだが、我々はすぐ先の道端でコーヒータイムである。再びの道路歩きは、14時45分に再出発だ。

 

   

 出発して直ぐに、県道209号“美川・松山線”から上林林道“上林〜河之内線”へとの表示がある。林道の総延長は12q余りの表示がある。道路歩きは単調で面白くない。一方、林業の作業は道路脇だと安易なもんだ。林間の道端に咲くオタカラコウに季節外れ?のアサギマダラが取り付いていた。ハギの花が今の時期、唯一の木に咲く花なのだろうか。さて、道路歩き一時間を前にして、道路脇の広場で小休止である。

 

   

 16時丁度、畑の川登山口の脇に立て看板が設置されていた。『平成27年度 美しい森林づくり基盤整備交付金事業 林道上林河之内線改良工事』と書かれて、法面の工事が行われていた。10月30日までの工事のようだ。16時15分に着いた上林トンネルはガスに覆われていた。ザックからヘッデンを取り出して歩き出すと、四輪駆動車が近付いてきて「どちらへ行かれてましたか。陣ヶ森ですか?」と問われたが、「いや・・、ちょっと」と、曖昧に応えたのだった。正直に「六部堂越えへ降りてきて、林道歩き」と言っても旨く伝わるとは思えなかったからである。

 

  

 トンネルの上林側は、ガスは無かった。トンネルは15分ほどで通り抜けたが、結局、二台の車とバイクが通り過ぎただけだった。林道脇には“ジンジソウ”も咲いていた。

 

  

 ハガクレツリフネは次々と花を付けるのか、花期が長い。そして、朝の駐車場に着いたのは16時45分だった。今日の歩きは6時間40分で、その内、道路歩きが半分近くの3時間余りだった。“上林森林公園”の一角にはテントが張られていた。また、数台の車の人らしい数名が見えたので、今晩は宴会が始まるのだろう・・と推測する。

 

【追記】

 ツリフネソウの花は、葉に隠れていない。四国で見るのは初めてだった。

 

 いや〜(^^; おっちゃんの藪歩きが復活したのは良い事なのか・・・、マダニの活動が活発なのは今頃だし・・・、猪には長〜くブヒブヒ言われるし、ちょっとビビったんじょ。立ち止まる度に、ズボンの裾の点検は怠りなくね。!