昨夜は、行者小屋の一等席に陣取りゆっくりと休めた。もっとも、RSCGのM君らはテントで御就寝だった・・・来週の奥穂高、そして夏のアルプス遠征を意識してのものか?立派な若者達だ。今日のルートは、硫黄岳〜横岳〜赤岳〜阿弥陀岳だが「これからの天候と、メンバーの体調で変更する」との事。まずは、赤岳鉱泉へ向かう。中山乗越を経て、降りていくと数人の登山者とすれ違う。
赤岳鉱泉を後にして、北沢の上流部あたり(ジョウゴ沢か?)で木々がなぎ倒されて無残な景色に出合う、今年発生したデブリの跡だった。
グループのアイドルの“矢井田瞳=やいこ”と呼ばれるM代さんは、歌を口ずさみながら付いて来る。大学のワンゲル部出身で、その可愛い顔からは想像出来ない程、全く恐れを知らない。彼女は、一人だけでも行動するパワーの持ち主で、バイクで北海道ツーリングをしたり、一人でテントを担ぎ“熊注意”の場所にテント設営して、夜を明かすなど・・・度肝を抜かれる話が、次々に出てくる。
樹林帯のジグザグの後、林間から北アルプスを垣間見ることが出来る所で、小休止。再出発後、森林限界を超えて「真っ白の世界」が現れた。そこが赤岩の頭の尾根だった。雪に覆われた広いなだらかな尾根を辿ると、360度遮るものの無い硫黄岳の頂上にたった。頂上付近は、雪が無かった。巨大なケルンが続いている・・一体何個あるんだろう?火口壁を尻目に、大ケルンに導かれるように降ると硫黄岳山荘に着いた。
ここからは、横岳へと‘鎖場’や‘梯子’が連続するが、雪の付き具合でその様子は一変する。岩稜を右に越すと大天狗が右手に現れた。そして横岳への桟道をアイゼンでガリガリ言わせながら昇り、頂稜を一歩一歩慎重に登る。頂きは直ぐだった。ついさっきまで小さく見えていた赤岳もずいぶん大きくなって来た。
やがて、稜線を左から右に超えるとほとんど雪が消えた岩場だ。数箇所のクサリを過ぎ、今度は左へ越える。こちら側は雪が残っている。慎重に歩を運ぶ・・・と、ザイルを肩にした人とすれ違う。小尾根を越え少し降ると、雪の急斜面が現れた。
「フィックスザイルを張るから、カラビナを掛けて一人ずつ降りる・・・声を出す事!」・・・全員、無事通過。
そして、間もなくで昨日の下山路である地蔵尾根を過ぎ、赤岳展望荘に着く。
ここからは、昨日の逆ルートなので勝手知った道である。そして、頂上小屋で祝杯である。今日歩いたルートを振り返り、感慨に浸っていると、ヘリが飛んできた。正面に見える阿弥陀岳の中腹あたりに、人が見える。そして、ヘリに人が回収された。その時は、私たちがその場所に行くとは知らなかった。
赤岳を後に、阿弥陀岳へと向かう。そして、間もなく雪に覆われた中岳を過ぎ、細い稜線を中岳のコルに降りる。ザックが無造作に置いてあり、「さっきの登山者のだろう」と、転げ落ちないようにする・・・。リーダーは時計を覗き、疲労度を見て阿弥陀岳は止め此処から下山と決断した。
ここのルートは、雪崩が出易いので気をつけて降りる事・・・・との注意の後、下山開始。急斜面の降りに、一歩一歩慎重に足を運ぶ、前を行く相棒が滑った・・・が、上手に停止・・・・訓練の成果か?と、私も足を取られた。これまた、上手く止めれた。ホッとする。やがて、傾斜が緩んだ斜面にさしかかり「尻セードで降りる」との事で、雪遊び・・・
文三郎道と合わさると、行者小屋は目の前だった。
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