藪漕ぎの楽しみ

水なし山へ行こう・・【2012年6月23日(土)】

 先日(9日)、かいなぎ山へ行った。しかし、小生が歩きたかった路は小田深山からの路だったのだ。その路は、“かいなぎ山”のページでも触れた通り『愛媛の山と渓谷(中予編)』を引用したのだが、ここでその全文を載せよう。

 『愛媛の山と渓谷(中予編)』(p.162/163)には、『かいなぎ谷コース・・・落合から桶小屋まで約19㌔、桶小屋から東の谷に入り、谷沿いの道を登る。二度谷を渡り、しばらく進むと、谷は勾配を増して急流となり、樹林の間に水音を響かせ、小瀑が連続していて、変化に富んだ渓谷美を見せている。谷に降りる道はワサビ田で終わっているので上の道をとる。やがてこの道も谷へ降り、二つの小さい滝を越すと、谷を渡ってかいなぎ山の登り道となる。登山路の下の谷に、高さ20mに近いみごとな滝が掛かっている。谷を渡り右折して小道を登ると、尾根伝いの道となり、五十年生くらいのブナ林に入る。ブナ林が尽きるとすぐに稜線が見え、」やがてかいなぎ山頂上にに近い笹原に出る。桶小屋から三・一㌔、標高差約620m、登り二~二・五時間を要する。』  

『みずなし谷コース・・・みずなし谷入口まで、落合から約20.5㌔水無谷合流点の丸木橋を渡り、しばらく谷の右岸を登り、谷を越して植林地帯に入る。谷に直径二㍍に近い大きなカツラの木がある。左岸の植林地をゆくと、やがて登り道となり送電線の下に出て急坂となる。伐採跡で見晴らしがよい。稜線まで標高差五一〇㍍、約三・〇㌔、登り約一・五~二時間。稜線の鉄塔の下に出、みずなし山・かいなぎ山を経て、笠取山・大川嶺に行くことが出来る。』との記述である。  

 今回の課題には、当時の登山道や送電線と稜線にある鉄塔の確認が含まれている。

 

 25,000図を別画面で開く  愛媛の山と渓谷(中予編)より 

 22日から相棒は、奈良の写真クラブの写真展へ行ったのだ。帰宅は月曜日になるので、釣りを考えていたのだが・・。前述の“みずなし山”の様子が気に掛かっていたのだ。梅雨の最中、雨の合間というと土曜日しかなかった。一応の下調べをするのだが、書籍の記述は古いし(もう~随分、林道が延びているだろうし~)、ネット検索でも余りヒットしなかった。取り敢えず、地図を持参して(久々の事)の山行を実行なのだった。

貝渚林道 8:27 8:37 出発 一つ目の橋

 愛車にガソリンを補給しコンビニに寄り、“小田深山”を目指す。R33号線から砥部・陶街道を利用し、旧広田村から旧小田町へと入る。このルートは、道路の拡幅工事も進み、新しいトンネルなども出来上がっていて、随分と時間短縮されているし、新しくなった道路のせいもあり運転も楽になった。桶小屋にある入山口の林道の鎖には、9時過ぎに到着。缶コーヒを飲み、9時25分には出発だ。昨日からの雨のせいか、右手の貝渚(かいなぎ)谷の水音が良く聞こえる。15分あまりで、コンクリート製の橋が架かった谷を渡る。

石垣が積まれている 林道標識 二つ目の橋 9:07

 林道脇の法面には石が積まれている。また、写真でも判るとおり未舗装である。谷の音は随分と下の方から聞こえていたが、だんだん大きく聞こえてくる頃、道端にs56年の銘板の標識があった。やがて谷は小滝が連続している様子が垣間見えてきて、前方に二つ目の橋が現れた。ここまでも15分ほどである。この貝渚谷は地図によると、北東へと延び、笠取山の南面へと上がっているようだ。

 登山口 9:23

 ここで、貝渚谷と貝渚林道と別れ、この先は、みずなし林道との案内がある。勾配はさほど急ではなく快適に歩けるし、雑草に行く手を遮られる事も無い。左手にあるだろう登山口を見逃さないよう、注意しながら歩く。そして尾根部を大きく左へ回り込むと、赤テープと山道を発見である。ここまで15分ほどだ。結局、林道歩き45分だった。ここで一息入れ、気合を入れて出発である。

急坂 

 山道はいきなりの急坂だった。この路は、かいなぎ山の西へと延びる尾根を辿ることとなる。刈り払われた笹の下は滑りやすい土だ。そんな急坂も直ぐ自然林の山道になった。先日も同様に見た、森の木に何の為の印か赤いテープが付けられている。この辺りでは、比較的なだらかな路が続いていた。

大ブナ 9:50 蔦

 林道の入口(登山口と呼ぶ?)から25分ほどで大きなブナに出会った。ここで小休止とした。再出発後、辺りは大木の間に小ぶりの自然林に囲まれているなんとも形容しがたい雰囲気の森を行く。大木に絡まる大きな蔦には目を瞠るものだ。顕著な尾根部も長くは続かない。左手は、先ほど離れた貝渚谷が遥か下方だろうが確認不能だ。

先日の場所 10:06 笠取山が

 森の中に付けられた路を暫らくで、先日の最終地点の木に出会った。その折は辺り一面の濃いガスで、見通しが利かなかったのだが、今日は笠取山の南面が枝の合間に見え隠れしている。僅か二週間前の事、あれだけ沢山あったギンリョウソウ達も僅かに認めるのみだ。

10:19 かいなぎ山から笠取山 南に水なし山

 濃い緑に覆われた稜線へは10時19分に着いた。少し先に1422mの三角点がある。ここがかいなぎ山だ。今日は周囲が見渡せる。天気予報では、20~30%の降水確率だそうだが、午後からは確率が高くなる。先ほどから虫が纏わりついてきた。森の中では全く無視できたのだが・・。この纏わりつく蚋(ブユ)は、ウィキペディアに拠ると【特に春から夏(3月~9月)にかけて活発に活動する。夏場は気温の低い朝夕に発生し、昼間はあまり活動しない。ただし曇りや雨など湿気が高く日射や気温が低い時は時間に関係なく発生する。また、黒や紺などの暗い色の衣服や雨合羽には寄ってくるが、黄色やオレンジなどの明るい色の衣服や雨合羽には比較的寄ってこない。】らしいが、私のカッパの色は黄色である。ザックの天蓋にある虫よけスプレーを取り出すのが面倒だったので、一路、南に延びる不明瞭な路が続く稜線へと笹の中へと突入した。

森 境界杭?

 笹をかき分ける度に、寝ていた蚋を起こしているかのように、ビンブンと纏わりついてくる。そんな虫たちを手で払いながら進む。不明瞭な路でも、稜線に設置されている境界杭は、笹が疎らになった場所では良い目印だ。そんな路でも森に入ると、古びた赤テープに出会う。もっとも、笹にテープを付けても何の目印にもならない。数十年前に付けたと思われる目印は、一体何人の登山者を見たのだろう。

笹原 ねぐら?

 みずなし山までは、3個ほどの突起を上り下りするが、高度差は大したことは無く100m程度なのだが、なにしろ虫が鬱陶しい。突然、稜線沿いの笹の中に綺麗に刈り払われた塒(ねぐら)に出会った。森の中じゃなくて、わざわざ笹原に寝床を作るのはどういう習性なんだろうか?雨が降れば濡れてしまうだろうに・・・。

また..森 腰を超える笹

 暫らくで顕著な突起部の森で稜線は、少し右(西)方向へと振っていた。笹原を歩く場合、下りは笹を踏みながら歩けるので良いが、登りは疲れる。足を踏み出すのに力が必要だ。また登りの場合、笹の丈が胸を越す場合があり、笹を掴んで進むので腕まで疲れて来る。もう既に、カッパの胸あたりまでビッショリと濡れてきた。

水なし山頂 11:01 山頂標識?

 11時に三角点のある“水なし山”へ着いた。笹原へ突入してから40分ほどだった。笹原の中にある標柱には山のマークが刻まれ、水無山の標識が括られていた。ここでも記念撮影だけで終え、稜線を暫らく進む。前方にあるだろう鉄塔は確認出来ない。また、眼下にあるだろう水なし谷は、笹原の遥か下方で確認出来ない。そして、すぐ先にあるだろう鉄塔も送電線も確認出来ないまま降りる方策は皆無だ。そんな策を、今日は(10年前だったらどうかな?)取らない。前述の本の記述は、s48年なので、既に40年の年月を経ているので仕方無い。

頂上からの展望みずなし山頂からの360°展望スライドショー     

  

    

 つぶやき

 前回の“かいなぎ山”の項で、原発問題をつぶやいたのだが、6月22日の『原発再稼働に抗議する』行動は、TV・新聞がだんまりを決め込みました。首相官邸を取り囲む45,000人の声は、官邸で会議中の野田首相も「聞こえていた」とインタビューに答えていたが、都合の悪い事は聞こえていても無視するようだ。ちなみにこの行動は、首都圏に住む27歳の青年がツイッターのみの手段にて呼びかけ(団体の動員などはお断り)、毎週金曜日を行動日としているそうだ。今回のツイートは、以下のようだった。

【日時】6/22(金)18〜20時予定
【場所】首相官邸前(国会記者会館前、国会議事堂前駅3番出口出てすぐ)
【呼びかけ】首都圏反原発連合有志

 この日の模様は、【原発 デモ 6/22】の検索でヒットする。ここでは、You Tubeにアップされている【徒歩で1周しながら撮った首相官邸デモの状況】を張り付けておきます。この映像を見れば、小生が、あ~だ、こ~だとは言いませんし、言えません。

 

 

 

 

 【みずなし山からの帰路】

 頂上を踏んでザックを降ろし、最初に取り出したのは、虫除けスプレーである。しかし、スプレーを吹き付けても虫のほうは無視して纏わり付くのだった。そっちが無視するのだったら、こちらも無視して昼食だ、っとは言ってられない。ここはじっと我慢・・・ガマン。おにぎりと一緒に虫を腹に収める訳にはいかないのだった。

 

 手で纏わり付く虫を払いながら、デジカメでグル~ッ、カシャカシャカシャと360°シャッターを押す。その確認出来る範囲で人工物と判別できるのは、笠取山の肩の辺りの電柱や、なだらかな山容の天狗高原辺りの風車が僅かに望まれる程度である。また、中津明神山のレーダードームなどは、見て来た人じゃないと判別出来ないだろう。もっとも、肉眼で確認できるだけで写真には写らない筈だ。周囲の様子の観察を終えれば、下山の途に着く。11時20分頃だった。高度差が僅か10m程度なので、往き帰りにさほどの違いはない筈だが、帰りの方が息が上がってしまう。が、マッタリとする暇は無い。相変わらず、虫が纏わりついてくる。さっさと、笹原から抜け出す必要があった。笹原の中、足を置くと50cm程高くなったので、足元を見ると笹に覆われた境界柱の上に乗っていたりしながらの下山である。

11:55 再びのかいなぎ山 大ブナ

 再びのかいなぎ山頂は、11時55分だった。どうしてここには虫が少ないのかは判らないが、そんな事より昼食だった。昼食と言っても、所要タイムは知れている。5分程だった。さて、下山であるが、先ほどまでの笹薮と違い刈り払われた路の歩き良さは、どれほど~。辺りの様子も適当に窺うのみで、往きとは随分違う。さっさと降りるのである。

12:22 下山 

 そんな降りで、林道に降り立ったのは、12時22分だった。30分も掛からない。我々は今こうして林道を利用した山行をしているが、良し悪しはともかくとして、随分と、変わってしまった。これも、モータリーゼーションのなせる業なのだ。

 

 

 

   

 おまけ

 林道を奥まで観察しておこう。と、先へと歩を進めた。小生の持参の地図はs40年測量の国土地理院25,000図(現地調査・h2年、h.3.10.1発行)なので、林道の記述も途中までと考えている。その確認が今日の命題なのだ。

みずなし山が・・ みずなし谷

 みずなし山頂付近から、林道らしき形跡を認めたのでその確認もしたかったのだ。そして、林道から特徴あるみずなしの稜線が確認できた。山頂付近の笹原と、山頂から顕著に谷が落ちている様がその特徴である。そして、しばらくで、その谷に出遭った。みずなし谷である。『その名のとおり、水は流れていなかった』との報告にはならない。世の中、そんなに甘くはないもんだ。先日からの雨のせいか、大きな音を出して水は流れていた。

崖になっている 12:52 何度目かの登山口 13:19

 みずなし谷から15分ほど林道を進んだが、埒があかない。結局、送電線&鉄塔のある尾根は未だ先だと判断した。今日は林道の最終地点を確認出来ないままだが、林道歩きが一時間を超えるのではこのアクセスは使えない・・そして、引き返す決断を下したのだった。今日、何度目かの登山口まで淡々と戻った。13時19分だ。

   

 疲れてはいるものの、足を踏み出すのに余分な力を要しないし、傾斜のユルイ林道は、歩くのには安易だ。辺りの様子を窺う必要のない歩行は淡々としたもんだ。しかし、谷の水の音だけには敏感なのだ。平水時の様子は判らないのだが、梅雨時の今、水量が多い事だけは推し量られる。

林道起点 14:01   

 結局、林道の最終地点から一時間弱で林道入り口に戻って来た。

 今日の山行の命題は、宿題になってしまった。帰宅後、『愛媛の山と渓谷(中予編)』の記述と地図を睨めっこし推測した結論は、1360mピークから派生する尾根が怪しいという事だった。当初推測した、みずなし山の南隣の尾根では無かったという事だ。そんな推論も、いつか確認出来る日が来る・・と信じる。

 

 

 大体、私が留守の間には藪に行くのねぇ~。2001年9月23日~24日の五代の別れ~五代が森縦走のあわや遭難の話を聞いた時はピックリしたんじょ、今回はあれから10年経って、体力がなくなり・分別がついたって事かな~。とにかく私はブナ林には行きたいけどね。