本格的な旅の再開の前に、旧修道院跡地で宝探しとレベルアップをしてるんだけど……。
魔物との戦闘で、自分でも呆れ返るくらい、皆と息が合わない。
基本的に、一匹ずつ確実に敵の数を減らしていく戦法なのに、皆が一匹に集中攻撃してる時に、僕だけが全然違う魔物に斬りかかったりしてしまう。
だけどそれなんて、まだマシな方だ。

皆でほとんど倒しちゃって、残りは一匹って状態のハエ男にギラなんて唱えてしまい、おまげにそれで仕留められてなかったりすると、かなり気まずい。
咄嗟に呪文から武器での攻撃に切り替えるとかって、出来ないんだよね。
マホトーンかけられたのに途中で止められなくて、不発だとわかってる呪文を唱えてしまった時とかになると、自分で自分を殴りたくなる。

でも、それよりも最悪なのが、ククールと回復の連携が全く上手くいかない。
僕が誰かを回復しようとするより早く、ククールの方がホイミをかけてくれるとする。
その場合も僕は、やっぱり途中で対象の切り替えが出来なくて、全く意味の無いホイミを同じ相手にかけてしまう。
基本的にククールの方が僕より素早いから、かなりの高確率で、これをやっちゃってる。

ククールが加わった事で戦力が増えたおかげで、どれも致命的にはならずに済んでるけど、もっと強い敵を相手にする時、こんなことじゃあ、絶対にマズい。
リーザス像の塔に向かう途中でポルクに言われた『空気読めない』って言葉が、何故か思い出された。


「ねえ、次の土地へ進む前に、もう少し魔物の弱い土地で経験を積みたいんだけど……ダメかな?」
何とか、刻一刻と変わっていく戦況を読めるようになって、皆と息が合うようにならないと、このままじゃあ間違いなく僕が足を引っ張ってしまう。

「アッシは、兄貴の行く所なら、どこへでもお供するでがす」
ヤンガスは多分、そう言ってくれるだろうと思った。
甘えて悪いとは思うけど、ヤンガスは本当に僕に付き合ってくれるためだけに、この旅に加わってくれてるから。
「オレも新参だから、旅の方針に口出しする気は無いぜ。どこに行くは、エイトに任せる。確かに今のままの力じゃあ、ドルマゲスに追いついたとしても、返り討ちにされるのがオチだしな」
ククールも、冷静な判断で賛成してくれた。
後はゼシカなんだけど……。
「いいわよ、私も」
「そうだよね、あんまりモタモタしたくないっていうのはわかるけど……って」
初めからゼシカは反対するだろうって決めつけてた僕は、ここでもやっぱり、言おうと思ってた言葉を途中で変えられなかった。
「……今、いいって言った?」
「何よ。私だって、そんなに突き進むばかりが能じゃないのよ。ドルマゲスを見つけたところで、勝てなかったら意味が無いのはわかってるわ。今の状態での足手まといは、どう考えても私みたいだし、強くなる必要は一番感じてるわよ」
「いや、ゼシカは足手まといなんかじゃないよ」
マヌケなことしてるのは、僕なんだから。
「いいえ! 魔法使いのくせに、ヤンガスの次にMPが少ないなんて、問題外よ! この修道院の探索だけでもうMP尽きちゃってるし、こんなんじゃダメよ」
「エイトはオレと回復分担してるから、消費が半分で済んでるだけで、ゼシカはゼシカにしか使えない呪文が多いんだから、気にする事無いんじゃないか?」
さすがククール。女性に対してのフォローは早い。
「慰めてなんていらないわよ。だってエイトは、あんなに意味の無い魔法の無駄撃ちしてるのに、まだMPに余裕があるのよ? それを思うと自分が情けなくて……だから、少しでもレベルアップしたいのよ」
あ、何か今、ナチュラルに痛いトコ突かれた気がする。
「確かに、オレも自分一人で回復全部引き受けられるように、ベホイミくらいは真剣に覚えた方が良さそうだってのは感じてる」
ククールも遠回しに、『お前は当てにならない』って言ってる?
ヤンガスは何も言わないけど、物凄く不自然に遠くを見て、何も聞いてないフリをしてるってことは、やっぱり僕が無駄なことしてるって思ってるんだよね。

……ごめんなさい。
何とか頑張って、少しでも早く、空気読めるようになります。

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