「とにもかくにも、ククールがどの程度腕が立つのか。そこらへんを見極めねえといけません。ドルマゲスに逃げられたうさ晴らしもしてえし、ここはひとつ、魔物でもやっつけに行きやしょう!」

人死にが出て、ちょっと気分を盛り上げようと軽い気持ちで言った言葉なんだが、エイトも兄貴は快く承知してくだすったんで、こうして昔の修道院の跡地で経験値を稼いでいる。
エイトの兄貴はお若いのに、本当に人間が出来てなさる。
それに比べて、この若造は……。
「ホコリまみれだわ、泥水で足場はすべるわ、おまけに死体だらけ。……あんたら、こんな所よく通ってきたな。感心するよ」
ククールのヤロウ、こんな事をヌカしやがる。
『よく通ってきたな』も何も、お前がここを通れって言ったんだろうが!
トロデのおっさんと肩を並べるくらいの、ワガママ野郎だぜ。
これで腕が立たなかったら、即効でパーティーから叩き出してやるところだが、これが結構器用なヤツで、特別ここが凄いって部分も無いが、苦手も特に無いらしく、剣も魔法も、攻撃も回復も、一通りは何でもこなしやがる。

だけど、魔物を相手にする時は冷静なのに、辺りに転がってる死体を見る時だけは、ほんの僅かだが、身体が固まるみてぇだ。
男のくせに情けねえとは思うが、人間誰にでも苦手なもんはある。
「ククール。ちょいと顔色が悪いようでがすが、大丈夫かい?」
オレがそう言うと、ククールのヤロウは、冷めた目でこっちを見やがった。
そして、こんな事を言ってきやがる。
「こんな薄暗いとこで、他人の顔色なんかわかるのかよ」
何て、可愛げのねえヤロウだ!!
人がせっかく心配してやってるってえのに、全く、親の顔が見てみてえもんだぜ!

……親の顔っていやあ。
確かドニの町で、ククールの親は二人とも、流行り病で死んじまってるって話を聞いた覚えがある。
そしてこの修道院も、流行り病のせいで滅んだんだったな。
その二つがもし同じ病気だったとしたら……顔色の一つや二つ、悪くなっても仕方ねえか。
さっきからの可愛げのない言葉の数々も、強がってんだと思うと、大目に見てやれないこともない。


まったくよお。
それならそうと最初から言ってりゃあ、何もわざわざ、こんな大したお宝の無さそうな場所を選んだりしねえのにな。
ゼシカの姉ちゃんも相当な意地っ張りだが、このククールも、大概やせ我慢するタイプみてぇだ。
……先が思いやられるぜ。

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