今日は休日で遅めの昼飯を食べた後、家でくつろいでいるとPDAのコールが鳴り出てみればアニエスが怒鳴って来た。

「あ?何だって?」
『だからもう少しコンビの仲を深めなさいって言ってんのよ!』

そのセリフはな、バニーの方に言ってくれよ。

『せっかくのコンビが台無しじゃない!昨日の二人なんかTVで放送出来るわけないでしょ!』
「あのな、俺は別にTVに映る為にヒーローやってんじゃな……」
『人気急上昇中のバーナビーが映せないなんて視聴率に関わって来るのよ!とにかく、次の放送が 始まる前にバーナビーとコミュニケーションを取る事!いい!?』

そこまで言ったアニエスは一方的に通信をブチ切った。
顔を顰め、ぼりぼりと後頭部を掻きながらなんで俺が……と思い、ソファーの背もたれに 寄り掛かる。
コミュニケーションって言ってもなぁ。
昨日、取ろうとして失敗してるし…。
それに絶対あいつの事だ。

『なんで僕が休日におじさんと二人で出掛けなきゃ行けないんですか』

ほらな!
やっぱりなっ!
バニーに携帯で連絡をしてどこか行こうぜと誘った途端にこのセリフ。
かわいくないっ。

「だから、ほら、もっとお互いの事を知っておいたほうがいいだろ?」
『別に』

すげなく否定される。
くっそー。

『用件はそれだけですか?忙しいので切りますよ』
「ちょちょちょ、ちょっと待ったー!」

えっとー、えっとーって、何で俺がこんなに一生懸命になってんだよ。
何だか理不尽じゃないか?

「忙しいって何してんだよ」
『………』

俺が問うとバニーは黙ってしまった。
不審に思った俺はバニーの名を呼ぶ。

「バニー?」

すると小さな声で呟いた。

『探しものをしているんです』

探しもの……?

『そういう事なんで切りますよ』
「あ、おい」

携帯を切られてしまった。
手に持っている携帯をジッと見ながら考える。
さっきバニーの声の他に多数の人の声や車の音も聞こえていた。
ということは外にいるのか?
外で探しものか。
何を落としたか言えば俺も手伝ってやるのに。
結局バニーを誘うのに失敗した俺は気分転換に外に出掛ける事にした。
天気もよく散歩するにはうっけつけだな。
シルバーステージの道を歩いているとヒーローカードが売っている売店を見つけた。
ちらりと売れ行きを見てみるとスカイハイのカードは売り切れだった。
その次にバニー、ブルーローズ、ファイアーエンブレム、折り紙、ロックバイソン……そして俺の 順で売れている。
なんで俺のカードがこんなに残ってんだよ。

「おばちゃん、これちょうだい」

俺はワイルドタイガーのカードを10枚購入した。
その場を立ち去ろうとした時、順番待ちをしていた子供と目が合う。
ニッコリ笑って今買ったばかりのカードを差し出した。

「ほら、やるよ」

すると子供は首を横に振る。
なんだ、謙虚なやつだな。
遠慮する事ないのに。

「いいから、やるって」
「いらないよ!」
「え?」
「僕が欲しいのはバーナビーの方だもん」

俺を押しのけて子供はバニーのカードを買っている。
かわいくない子供だ。
心の中で舌打ちしてポケットにワイルドタイガーのカードを突っ込み歩き出す。
ふと、何気なく見た先、車が行き交う道路を挟んだ反対側の歩道にバニーがいた。
バニーは紙を片手に歩いている人を呼び止めて何か訪ねている。
もしかして落としもの探しか?
走行する車を上手く避けつつ横断する。
あ、良い子のみんなは真似しちゃだめだぞ。
渡りきった所でバニーを探すがすでにいなかった。
あれ〜?おかしいな。
どこに行った?

「ピーピーッ!」
「何だ?うるせえな…」

ピーピーッと笛を鳴らしている誰かが後ろから肩を掴んで来た。
振り返ると口に笛を咥えた警官が腰に手を当てて俺を睨みつけている。

「ちょっと君。今、この道路渡ったね?」
「え?」
「え?じゃないでしょ。危ないっていうのは分かるね?」

あー……しまった。
この後、がみがみとお説教が始まり項垂れながら聞いていた。
ホントなんだか最近ついてねえなぁ。
結局あの後、日が暮れてもバニーを見つけられず俺は行きつけのバーに足を運ぶ。
カウンター席に座って焼酎のロックを頼んだ。
食事も兼ねつつ酒を嗜んでいると周囲から上がった黄色い声が耳に入って来た。
テーブル席に付いている若い女の子達が頬を赤く染めて右側を見ている。
俺もそっちを見てみると……。
あれは。

「バニー?」

丁度俺の反対側のカウンター席で酒を飲んでいるバニーを見つけた。
自分のグラスを持ってバニーの隣へと移動する。

「おい、バニーお前もここに来てたのか。さっき歩道でお前を見つけて探してたんだぜ」
「……」
「バニー?」

ゆっくり俺を振り返ったバニーの目が虚ろだ。
バニーの目の前で手をひらひらと動かし名前を呼んでも反応はない。
……もしかして酔ってる?
俺の手に持っているグラスを見たバニーがそれを奪おうと手を伸ばしてきた。
おっとっと。
手を上げてバニーに取られないようにする。

「なんで……ですか…」
「え?」
「どうして……邪魔をするんですか」
「邪魔って、これ以上酒を飲むのは止めろ」
「僕に命令、しないで…下さい…」
「ちょっ、バニーっ」

ぐらりと揺れてバニーが倒れる。
慌てて俺は受け止めた……は、いいけど、どうすんだコレ。
俺の肩に頭を乗せ、すうすうと寝てしまっている。
ったく、しょうがねえな。
バニーの腕を俺の首に回して引きずりながら運んで行く。
くやしいがバニーの方が身長がちょーっとだけ高いし見た目細そうだが しっかりと筋肉が付いているから重いんだよな。
店の外でタクシーを拾いどうにか後部座席に乗せて一息吐くと運ちゃんが振り返った。

「どこまで?」
「え、あー……」

そう言えば俺、こいつの家知らねえわ。
しょうがない、バニーを俺の家に連れて行く事にした。





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