「よっこらしょっと」

家に着きとりあえず、酔っぱらいバニーをソファーに寝かす。
ついでにジャケットも脱がしてやる。
ふいーっと俺は自分のネクタイを緩めた。
なんだかんだででっかい子供だな。
ま、ここで寝かしておけばいいか。
何かバニーに掛けるものが必要だな。
ロフトにある寝室に行き、ごそごそ探していると人の気配を感じて振り返る。
するとバニーが音も無く立っていた。
うおわっ!?
ビビった!!

「ビビらせるなよ」
「……ですか」
「は?」
「ここは……どこですか?」
「ここは俺んちだよ」

ふらふらとバニーが倒れそうなくらい揺れている。
まだこいつ酔ってんぞ。
傍まで行き支えようとして手を伸ばすと手を叩かれた。

「いてっ!」
「僕に、触らないで…下さ、い」
「危ねーだろ」

触れられる事を拒否するが俺はバニーの腕を無理矢理掴んで引き寄せる。
そうでもしなきゃバニーが階段から転げ落ちてしまいそうだった からだ。
離せと暴れるバニーと揉めていると勢いのままベッドに倒れ込んでしまった。
俺は素早くバニーの上に跨り押さえ付ける。

「……だ」
「え?」
「僕は……一人だ」
「バニー?」

揺れる瞳で俺をジッと見ている。

「一人って……お前何言ってんだよ」
「見つからない……こんなに探しても何も…見つからないっ!!」
「うおっ!?」

また暴れ出したバニーを力づくで押さえこむ。
それでもベッドの周りにあるものがふっ飛ばされてしまった。
ッダ!!
写真立てが!!

「バニー落ち着けって!!何を探してんのか分かんねぇけどお前は一人じゃないだろ!?」
「違う!違う!」
「違くねぇよ!えーっと…ほら、俺がいるだろっ」
「……貴方が?」
「ああ」

俺は大きく頷いてほほ笑んだ。

「この鏑木・T・虎徹がいる限りお前は一人じゃねえよ」
「………」

バニーが目を伏せ無言で俺の背に腕を回すと引き寄せて来た。
俺はバニーの上に倒れ込む。
ごろりと横になるともれなくバニーもひっついてきて俺の胸に顔を埋めたままジッとしている。
男同士でこの状態はおかしいがまた暴れ出す事のないように背をゆっくりと撫でた。
しばらくそうしていると寝息が聞こえてくる。
どうやら寝たようだ。
やれやれと息を吐いて身体の力を抜くと俺も眠くなってきていつの間にか寝てしまった。





「……ん」

目を覚ますと首に痛みが走る。
変な方向に首を曲げたまま寝てたらしい。
頭を動かそうとしてもバニーの胸に押し付けられていて動けない。
しかも俺の身体を拘束するようにバニーの長い腕と足が絡まっている。
ブルーローズの決め台詞じゃないがこりゃ、完全ホールドだな。
上手い事言っている場合じゃねえ。
マジで首がいてえ。

「バニー!バニー!起きろって!」
「……あ、れ?」

バニーが目を覚ました。
拘束していた腕が緩んで頭が動かせるようになったが横に固定されていた首は簡単に自由に 動かす事が出来ない。
それでもゆっくりと顔を正面にしようとすると激痛が走る。
つまり寝違えてしまったのだ。

「何で貴方が?ってなぜ僕がおじさんとひっついているんです?気持ち悪い」
「あぁ?気持ち悪いだぁ?それはこっちのセリフだ!」

首が正面に動かせないせいで横を向いたまま怒鳴る俺にバニーは眉をひそめる。

「……頭おかしくなったんですか?」
「ちげぇよ!寝違えたんだ!」
「それにしてもここはどこです?なぜ僕が……っ」

上半身を起こしたバニーが頭を押さえた。
どうやら二日酔いだな。
ま、相当飲んでいたようだし、当たり前っていえば当たり前だ。

「覚えてないのかよ。昨日バーで飲んでただろ?」
「そう言えば行きましたね。でもその後の記憶が……」
「酔っぱらったお前を介抱して俺んちまで連れて来たんだよ。感謝しろよ」
「おじさんの家?」
「そうだ」

いかに酔っぱらったお前が大変だったか教えてやろうと思ったその時、手首からPDAの音が鳴る。
あーそうだ、そのまま寝たから付けっぱなしだったんだ。

『ボンジュール、ヒーロー!出動よ!』

朝っぱらから事件かよ。
アニエスの声にバニーがベッドから立ち上がるが頭痛が酷いのか顔を顰めながら歩いて行く。
俺もその後に続くが正面を向けないせいかうまく歩けない。
ゆっくり階段を下りながらバニーに頭痛薬と水を勧めると素直に頂きますと言って来た。
よほど痛いらしい。
俺も薬箱からシップを取り出し首に貼る。
その間に薬を飲んだバニーは家を出て行こうとする。

「お邪魔しました」
「おい、バニーどこに行くんだよ」
「どこって、事件現場に決まっているじゃないですか」
「それは分かってるよ!俺も行くからちょっと待ってろ……」

俺が言い終わる前にバタンっと玄関のドアが閉まる。
くっそー。
俺も急いで行くがどうも首が横を向いたままだと上手く歩けない。
それでもなんとか現場に行ったのだが。
まあ、二日酔いのバニーと寝違えた俺がどう活躍したのかは想像にお任せするぜ……。




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