「まったく、ウチはコンビが売りだって何度言ったら分かってくれるのかな」

ロイズさんに呼ばれてディスク前に行くと俺の顔を見た途端に疲れた顔をされた。
しかもコンビって言っているわりになぜかバニーはこの場にいない。
なんで俺一人なんだ?

「あのー、バニーは?」
「ああ、彼は今雑誌の取材で忙しいからいいの」
「えー……」

そりゃ、ずるくねえか?
俺が不満の声を上げようとすると先にロイズさんが机の上にファイルを出して見せた。
どうやらそれは俺とバニーを載せている記事のようだ。
びしりとロイズさんの指が記事の写真を差す。
そこには俺達の言い合っている姿や他の活躍しているヒーローの後ろで 頭を押さえているバニーや首が横に向いている俺の姿が映っている。

「こんな事をされては困るんだよ」
「はぁ、すんません」
「いいかい?君はバーナビーの先輩として彼を引っ張っていかなきゃいけないんだよ。 そして彼を目立たせる!こんな事じゃ彼の補佐にもおまけにもならないでしょ!」
「へーい……」

別に俺はアイツの補佐やおまけになりたくてヒーローやっているわけじゃねえんだけど。
適当に返事をしてその場を立ち去った。
俺とバニーの仲は現状維持のままだ。
俺が歩み寄ったってバニーがその分遠ざかるんだからどうしようもねえよ。
………。
…………。
だぁ〜っ!!考えるの止め止め!
こういう時はトレーニングに限る。
さっそく気分転換にジャスティスタワーに向かった。
トレーニングルームに入るとファイアーエンブレムとスカイハイがいた。

「あら、タイガーじゃない」
「やあ、ワイルド君!」

俺は、よっと手を上げた。

「今使ってんのお前らだけか?」
「そうよ。あら、ハンサムは一緒じゃないの?」

ファイアーエンブレムの言葉に俺は肩を竦める。

「あいつは取材だと」
「まあ、世間から相変わらずモテモテね」

それに比べて……と同情する視線をファイアーエンブレムから感じた。
ふんっと鼻息を荒くしてトレーニングを始める。
すると腰をくねらせながらファイアーエンブレムが近づいてきた。

「何怒ってんのよ」
「別に…」
「そうそう、最近感じたんだけど」
「何を?」
「貴方達の事よ」

貴方達って…俺とバニーの事か?
どうせ、あれだろ。
コンビなのに仲が悪いとかそういう事だろ。
ふんっとまた鼻息を荒くすると……。

「最初に比べたら仲が深まって来たんじゃない?」
「そんな事言われなくても……って、ん?」

聞き間違えじゃなければ今、仲が深まったって聞こえたんだが。
首を傾げつつもう一度聞き直す。

「だから、ハンサムの貴方に対する態度が少し柔らかくなってきてるように感じるの」
「は?どこが?」

俺の言う事や行動する事に対していちいち文句を付けたりしてきてんのにか?
ファイアーエンブレムが俺に人差し指を近づけて左右に振る。

「も〜う、タイガーったら気付いてないの?」

気付くも何もバニーの態度なんかコレっぽっちも変わってないだろ。
ファイアーエンブレムが頬に手を当て唇を突き出す。
俺は隣でトレーニングしているスカイハイに聞いてみた。

「スカイハイはどう思う?」
「私かい?君達コンビが仲良くなる事はとても良い事だと思うよ!」

親指を立てスカイハイは歯を光らせながらニカッと笑った。
……あ、うん。
こいつに聞いた俺がいけなかった。

「きっとハンサムは素直じゃないから本当の自分を出せないのよ」
「本当の自分?」
「そう、そんな時はぐでんぐでんに酔わせちゃうのが一番よ〜!」
「ぐでんぐでん……」

俺の脳裏に酔っぱらったバニーが蘇る。
あいつ酔うと絡んでくるからなぁ。
でも、一人だとか気になる事を言っていたな。
それに探しものは見つかったのだろうか……。
あーくそっ、俺らしくもねぇ。
ぐるぐる考えてんならひとまず行動だ!
気合いを入れて拳をグッと握りファイアーエンブレムとスカイハイの応援を背にトレーニングルーム を出る。
腕時計を見ると20時だった。
そういやバニーのやつ、ちゃんと飯食ったのか?
いつも気にして聞いてんだがおせっかいなんですよと冷たく言われんだよな。
こっちは心配して聞いてんのによ。
俺はスーパーマーケットに寄って弁当や総菜、酒を買いこんでバニーに連絡した。

『はい』
「よお、俺だよ。今どこにいる?」
『家にいますが……どうしたんですか?』
「今からお前の家に行っていいか?」
『僕の家に?』
「都合悪いか?」

少し黙った後、いいですよと返事をもらえた。
おお、よかったぜ。
住所を聞くとゴールドステージの高級マンションだった。
俺よりも若いのにゴールドステージか。
まあ、アイツのイメージとしてはお似合いだけどな。
タクシーを拾ってバニーのマンションに向かう。
俺が住んでいるブロンズステージとは違い高級感に溢れている。
タクシーから降りてマンションを見上げるとバニーが酔った時に吐露した声が頭に響いて来た。

「……。僕は一人…か」

一人暮らしのようだが……あいつも若いし寂しいのかね。
手にぶら下げているスーパーの袋をチラリと見てエントランスに入った。




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