中編2




大きさの合っていない服を気にする事もなく少年の姿になった事に対しても慌てないジルは無表情のままだったが綺麗な深紅の瞳が俺を捉えた途端、スッと目を細める。
他人を寄せ付けない冷たい視線を向けられて動揺しながらも状態を聞いた。

「えっと……大丈夫か?―――っ!!」

本能が危険を察知して咄嗟に首を横にずらす。
俺の首の横すれすれで赤く光る刃がベッドに突き刺さった。
ナナナ、ナイスっ!俺の条件反射、本日二回目!!
というか危ないだろうが!

「おい、いきなり攻撃してくるとはどういう事だ!!」

まさか、俺のした事にかなり怒っているのか?
いや、それにしたってさっきの攻撃は絶対俺を殺そうとしたよな!?
その事にちょっとだけ、ショックを受けた。
……。
…………。
本当は……結構、ショックだけど。

「怒る気持ちは分かるけどさ、本気で攻撃する事ないだろ!?」

俺の上に未だに乗っかっているジル少年に文句を言うと、あれ?
手がバチバチと光っている。
ヤバイっ!!
ジル少年を火事場の馬鹿力で跳ね退けてベッドから下り、距離を取る。

「少し落ち着けって!大人げないぞ!」

ごめんと謝ろうとしたがそれは出来なかった。
なぜならジル少年の手から放たれた光弾が俺に向かって飛んで来たからだ。

「うわーーーっ!!」

その後も次々と光弾が飛んできて必死に避ける。
止めろと訴えても攻撃は続けられ、このままでは俺がヤバイ!
ジル少年からひしひしと殺気を感じられる。
これではまるでジルと会ったばかりの頃を思い出す。
あの時もひどかったもんだ。
……うん、あれはかなりひどかった。
なんだか当時の事を思い出してだんだん怒りがこみ上げてきた。
また攻撃を仕掛けて来たジル少年に向かって叫んだ。

「いいかげんにしろ、この変態危険馬鹿男ーーーーー!!!」

叫ぶと同時に俺の中にあるレヴァの血が覚醒したようでドクンっと心臓が跳ね目が熱くなる。
そしていくつもの光弾を発した力で相殺させた。
次の攻撃の為に構えているとジル少年はその場に立ったままジッと俺を見ているだけだった……が、 一瞬にして目の前から消えた。
気付いた時には遅く、目の前に突然現れたジル少年は俺よりも小さい手で首を締めながら すごい力で押す。
俺は耐えきれず床に倒れ、背中を強打して息が詰まる。
その上、首を締め上げてくるので息が出来ない。

「…ふ…っ、くぅっ」

なんとか引き離そうとしても子供の力とは思えない程の強い力で俺を押さえつける。

「…ル、…ジ、ル」

しかし俺がその名を呼んだ時、なぜか締めていた手を離した。
ごほごほと咳込みながら俺の上に跨っているジル少年を見上げると感情なんて持ち合わせていないような 顔で俺を見下ろしていた。
そしてゆっくりと覆い被さって来る。
近づいて来る事にビクリと身体が強張った。
ジル少年の顔が俺の首筋に埋まった。
何をする気なんだ?と考えている暇があったなら何が何でも逃げだせばよかったと すぐに後悔する事となった。
俺の耳元でブツッと嫌な音が聞こえ、同時に血が体中を駆け巡って力が抜けていく感覚に襲われた。
つまり俺はジル少年に吸血されているのだ。

俺の首筋から口を離そうとせず逆にしがみつく力は強くなっている。
精気が失われている感覚を感じるのに身体は熱くなる。
ひとしきり堪能したジル少年が上体を起こし目を細めペロリと赤く色付く唇を舐め上げた。
思わず見入ってしまう。
その光景はとても妖艶で子供が醸し出せるような雰囲気ではない。
あ、ジル少年を見ている場合じゃない、早く離れないと。
だけどめまいがひどくて力が入らないので起き上がる事が出来ない。
それもこれもジル少年が精気をたっぷりと吸ってくれたおかげだ。
少しは遠慮ってものを知っとけ!
はぁーっと息を吐き出し精気の枯渇に耐えているとふわっとした浮遊感に襲われる。

「え!?」

なんと俺よりも小さいジルに軽々とお姫様抱っこをされていた。
色々とショックを受けている間にベッドの上に下ろされた。
言いたい事があったけど精気が無さ過ぎて話す事も目を開けている事もできない。
力無く目を閉じていると血の気が下がって指先が冷たくなっていく感覚がした。
精気が欲しいと本能が訴えている。
俺は精気を与えてくれるその名を無意識に呼んでいた。

「ジル…ジル…」

するといい匂いがして唇に何か押し当てられる。
同時に口の中へ精気がじわりと入って来た。
思わずそれを掴み夢中で吸う。
薄っすらと目を開けるとそれがジル少年の手の甲だと分かった。
そしてそこがざっくりと切れている事も。
心配するよりも先に俺は本能のまま血を啜った。
身体が足りないともっと多量に欲しいとひどく訴えている。
手の甲から口を離し虚ろな目が見た所は――。
太い血管が脈打つ白く柔らかな肌。
俺はジルの首筋に噛みつき足りない分だけの精気を取り戻すかのように 思う存分に吸い上げた。

「はぁ…」

息を吐き、満足した俺は顔を上げて……サーッと血の気が引いていく。
それは精気が足りないせいではない。
微動だにしていないジル少年に慌てて大丈夫かしきりに聞いた。
相手はジルだけど大きさが違う。
俺よりも小さい子供なのだ。
それなのにめちゃくちゃ血を吸ってしまった。

「ごめん!!気持ち悪くなったりとかしてないか?」

とりあえず、ヴィーナとセバスさんの名を再び叫んだ。

「ヴィーナ!!セバスさんー!!」
「なぜ」

…お?
今、しゃべったよな。

「身体、大丈夫か?」
「なぜ、その名を呼ぶ」
「へ?」

ジル少年はまだ変声期が訪れていない綺麗なアルトの声を出し不満気そうな顔をした。

「名を」

……名?
名がどうしたって?

「俺の名を言え」

?なんで??
ジッと見てくるジル少年に俺は名を望み通り言う。

「ジル」

今まで人形のようだったジル少年の瞳が少し揺れた。
ジル、ともう一度呼べば熱い眼差しで見つめられた。
その変化をもっと見たくて調子に乗った俺はジルの名をさらに言うと、ふいに 手が俺の身体を這った。
ん?

「おい、ちょっと待った!!」

怪しく動いている手を握って動きを止める。
何を考えてんだ。

「ジル、自分の姿を見てみろ!」

12歳くらいの少年の姿でやろうとするな!
しかし、さすがはジル。
ゴーイングマイウェイ。
小さくなったってそんな事気にしない。
服の下に手を入れようとしてくる。
さ、させるか!!
今は俺の方が体格いいんだ。
絶対に、負けな……あれ?
しまった力はジル少年の方が断然上だった。
くっそー、俺の方が大きいのに!
結局、好き勝手に触りまくられ阻止出来ず。

「冷静に考えろよ!俺、小学生とやるなんてヤダーー!!」

外見小学生のジルにやられるなんて……絶対無理!!
傍から見たらこれ、色々と問題ありだぞ!
ジル少年の手が下半身に伸びる。
ぎゃーーーー!!
ヴィーナー!!セバスさ―ん!!もう、レイグだって構わない!!
誰かこいつを止めてーー!!

「ジル、ストップー!!……ん?……あれ?」

今まで動いていた不埒な手が止まった途端、ジル少年の身体が俺の上に覆い被さるように 倒れて来た。
しゅうしゅうと煙がジル少年から出て来てそれはさっきと同様に繭状に包み込む。

「え!?まさか…」

まさか、ジルの身体がもっと小さくなってしまうのか?
この後ジルがまたどうなってしまうのか不安になった俺はぎゅっと煙に包まれたジル少年を抱きしめた。
すると、グンッと少し大きくなった感覚が腕に伝わって来る。
その後も連続でグンッグンッと段々大きくなっていく。

「ジ、ジル……?」

やがて、煙が薄れて姿が現れる。
それは元通りの大きさに戻ったジルだった。
おおお、良かった!
元に戻った〜!
でも顔は俺の胸に伏せていて動かない。

「大丈夫か?」

心配になって背を擦りながら声を掛けるとジルがもぞっと身動きをした。
お、動いた。
背を擦っていた手を止めジルの顔を見ようとしたが……。

「……と」
「え?」

何か言われたけど聞き取れない。

「もっと」
「もっと?」

何がもっと?

「背」
「……もしかしてこれか?」

俺は再び背を優しく擦った。
ジルは俺の胸に顔を擦り付けて満足そうに目を閉じ、 このまま寝る気配を見せる。
寝てもいいんだけど上に圧し掛かられたままだとちょっと重いんだよな。
せめてベッドの上に移動してくれないかな。
それに身体がどこかおかしいところがないか聞きたいし。
俺はそっとジルに声を掛けた。

「ジル、身体大丈夫か?」
「……」

おい、シカトかよ。
手を止めてもう一回聞く。
しかしジルは俺の質問には答えず、また「もっと」とねだった。
こ、こいつ……俺が心配してるのに。
背を擦らないでいるとジルは顔を上げ不満そうな目を向けた。
すると俺を見て何かに気が付いたジルは急に殺気立ち深紅の瞳に怒りを湛えた。
ジルの恐ろし過ぎる殺気に身体が委縮して思わずひゅっと息が詰まる。
もしかしてさっきの出来事を思い出して怒ってんのか?

「これは何だ」
「え?これ?」

ジルが触れたのは俺の首筋だ。
……。
あっ!
吸血された時の噛み痕を言っているのか?
でもジルが吸っておいて「これは何だ」はないだろ。
あんだけ大量に吸った事を忘れたとか言わせないぞ。
文句を言ってやりたかったけど、ジルの威圧の前にそれは出来ず 渋々答えた。

「これは吸血された時の噛み痕だよ。――っ!?」

部屋の空気が一段と重くなり それに比例してさらに息苦しくなっていく。
うまく呼吸が…出来ない。
額に汗をかきながら浅い呼吸を早く繰り返していると「誰に」とジルが 聞いて来た。
誰に……って。
はぁ!?
俺は数倍の重力が圧し掛かっているんじゃないかと思わせる腕を何とか上げジルを叩いた。
うまく動かせないのでポスっという軽い音しかしなかったけど。

「誰かって?マジで聞いてんのか!?」
「答えろ。誰に」

本気で言っているらしいジルをポカンっと見つめていると……。

「聖司」

ビクッと俺の身体が揺れた。
くっそー、ここで名前を呼ぶなんて卑怯だぞ。

「聖司、答えろ」

うぐっ!!
俺はギュッと下唇を噛んだ。
このヤロー知りたいなら教えてやるよ!

「お前だよ!お前がやったんだよ!!」
「……」
「何黙ってんだよ!ふざけんなよ!確かに子供にしちゃったのは俺も悪いけどさ!! 怒るのも分かるけどっ!何もっ……何もさ、あ、あんな……」

本気で殺されそうになったりとか冷たい視線を向けられたりとか思い出した途端にどうしてか、 ジワリと目が熱くなって視界が悪くなった。
うーっ、こんな事で泣くもんか!
目を擦ろうとしたら手を掴まれ、こぼれ落ちる寸前の涙はジルの舌に拭われた。
ジルが怪訝そうな声を出す。

「俺だと?」
「……そうだよ、ジルだよっ!!」

無表情なジルが俺を見下ろす。
目を逸らしているとジルは俺の頬に手を当てた。

「お前は一体何の事を言っている」
「は?」
「誤魔化そうとしているのか」
「――っ!!?」

反論しようとして開けた口をジルの唇に塞がれる。
舌が入り込んできて俺の舌が絡め取られ強く吸われる。

「は…っ!ふぅ…っ」

キスをしながらジルの手が俺の服の下を自由に這いまわり俺の弱いところを徹底的にしつこく 攻められる。
我慢できなくて下着の中は吐精したもので濡れてしまった。
ずるりとズボンと下着を取られ、身につけているものはシャツと靴下のみとなった。
そのシャツもボタンが1、2個ついている程度だ。
自分の恥ずかしい格好にカッと顔が熱くなって身を捩って逃げようとしたが ジルはそんな俺を簡単に押さえつけシャツの間から覗かせる胸に口を寄せた。

「んっ…や、…ひあっ!!」

ジルが胸を吸う音が耳に入って来る。
同時に感じている俺がいて、その事がとても恥ずかしい。
羞恥心に耐えているとジルの指がずぶりと尻の間の穴に侵入して来た。
広げるように指を動かし内壁を擦られるだけで俺の意思とは別にそこはジルを迎え入れようと 柔軟に変化を示した。
上はジルの口で胸を弄られ下は増やされた指で掻きまわされて俺の息子の先端からは もう我慢が出来ないとばかりにさっきからだらだらと雫が溢れ出ている。

「ジ、ル…っ!!もう…イクっ!」

指が引き抜かれ俺の中に熱くて硬い大きなジルのモノがグッと入って来る。
その衝撃で俺は白濁を自分の胸に撒き散らした。
息つく暇もなくジルの律動が始まり俺はされるがまま身体を揺さぶられ声を上げ続ける。
ジルの腰が俺の尻に当たって肌がぶつかる音とそれに負けないくらい 繋がっている部分からぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなる音も部屋に大きく響いている。
とっくにジルから与えられる快楽に流されて理性を半分以上無くしている俺もまた 喘ぐ声を部屋に響かせた。
俺の足を大きく広げさせ抱えていたジルが覆い被さって来て――。

「あっ…あああーーーっ!」

俺の首筋に歯を立て噛みつき血を啜った。
身体から精気がなくなる感覚がするのと同時にますます身体が燃えるように熱くなる。
思わずジルにしがみ付いた。
いつもは体温の低いジルもこの時はとても熱くてくっ付いていると一つに溶け合っていくような そんな感じがした。
最奥に叩きつけられたジルの精気が体中に駆け廻って来る。
隅々まで行き渡る精気にとても気持ちが良くてうっとりと目を閉じた。




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