中編2





「帝人っ」
「起きるな寝ていろ!」

マンションに帰った壱は強制的にベットに寝かされて起きようとすると怒られる。
その間に東条は濡れたタオルを用意して体温計を壱の口に突っ込み、大量の薬を持ってきて どれを呑ますか考え込んでいる。

「壱、どこが痛い」
「だからどこも痛くないし」
「では悪寒がするとか吐き気は」
「それもない」

体温計を口から出した壱は上半身を起こして額から落ちて来たタオルを キャッチした。
ベットに腰かけた東条の手が壱の額や頬に触れる。
念入りに熱がないか確かめている東条に壱は小さく笑った。

「本当に、何ともないって」
「だったらなぜあんな顔をしていた」

あんな顔と言われても壱には自分がどんな顔をしていたか分からない。

「俺、そんな心配されるような顔してた?」
「ああ、今にも消えてなくなるような」

その言い方に壱は笑いそうになったがあまりにもつらそうな表情を していたので思わず東条の手を握った。
東条が今と同じような顔をした事が過去にある。
それは東条と出会った日、無理矢理やられた壱が忘れると言った時だ。
そしてその後に東条が叫んだ言葉。

『俺の前から消えるのか!あの時のように!』

壱は抱きついて来た東条に大丈夫、消えないよここにいるよと背中を優しく撫でてやる。
しばらくそうしていると東条が顔を上げまだ匂いがする呟いた。
壱は匂い?と首を傾げ腕を持ち上げてすんすんと嗅ぐがよく分からなかった。

「あいつの匂いがお前に付いているなど忌々しい」
「うわっ!」

ベットに倒された壱の上に東条が覆い被さってくる。
制止の言葉を口に出す暇もなく壱の身体は東条に溶かされていった。
何度も下から突き上げられ絶え間なく壱の口から喘ぎ声が漏れる。
僅かな理性が口を覆うとするが両手とも頭上に東条の手によって一括りされた。

「はっ、あぁ…あ、ん、んっ!」

急速に腰を動かしていた東条が自身を壱の中から引き抜いた。
そしてすでに壱が自ら吐精して濡れている腹や胸の上に東条の精が放たれる。
はあはあと息を吐いて上下している胸に東条の手が這った。

「あ…っ」

壱と東条の精が混ざり合っていく。
かあっと顔を赤くした壱は流れるように移動した人差し指と中指が自分の突起をキュッと掴む所を見た。
刺激を与えられたそれは食べてと主張するようにプクっと起った。

「おしそうに実っているな」

東条に収穫するように摘ままれると快感が身体に回って下半身に溜まっていく。

「こっちも食べごろだ。果汁が溢れて来てるぞ」

再び起ち上がった壱のモノの先端から雫がこぼれ落ちて行く様を見て東条がニヤリと笑う。
雫を指で掬った東条の指が下りて奥の入り口をトントンとノックした。
返事をするようにそこはヒクヒクと動いた。

「下は食べたがっているな」

羞恥心を高める東条のセリフに壱は我慢できなくなってボカボカと東条を叩いた。
思い返せば東条と出会う前は普通に女の子が好きだったし男を恋愛の対象に見た事はない。
東条に無理矢理やられたときだって抵抗した。
それなのに今はどうだろう。
何度も何度も肌を重ねてそれを受け入れている自分がいる。
しかも自ら欲しいと思う時だってある。
なぜ?問いかければそれはきっと…。
ふいに東条の手が止まって壱を見ている。
壱も叩いていた手を止めて東条を見た。
待っているのだ。
壱の言葉を。
唇を震えさせながら壱は小さく言葉を紡いだ。

「て、帝人…胸…な…めて」

満足そうに笑った帝人の笑顔に見惚れてしまった壱だったが胸の突起を舌で弄られると 声を漏らした。

「あ、ああっ…!」

吸いつかれて舐められ壱は無意識に胸を突き出す。
溜まり込んだ下半身の熱を吐き出したいがそれにはもっと強い刺激が必要だ。

「下も…っ、帝人っ!…ああーっ」

すっぽりと咥内に包まれ強く吸われた途端、壱はすぐ達した。
東条は当たり前のように口で受け止めたものを嚥下する。
濡れた赤い唇を半分開けながら目を瞑っている壱を今すぐにでも抱きたい衝動に駆られた東条だが その気持ちを抑える。
壱の頬を撫でながら問うた。

「壱、ここはいいのか」
「…あっ!!」

ズズっと東条の長い指が壱の奥の入り口に侵入した。
柔らかくなっているそこは抵抗を見せずむしろ歓迎するように呑み込んだ。
ゆっくりと挿し抜きされフルフルと壱の身体が喜びに震える。
何度か繰り返されると壱はそれだけでは物足りなくてもっと大きくて太いモノが 欲しいと強く思った。
もじもじと身体を揺らす壱に東条は何を求めているのか分かったが敢えて何も言わず 同じ行為をし続けた。
とうとう壱が我慢できずに懇願した。

「て、いとっ!……れ、てっ!」
「聞こえないぞ。壱」
「も、い…れてっ、入れて!」
「何を?」
「――っ!?」

わざと聞いている事は分かっていたがここであれやこれや文句を言ってもその分だけ時間 が延びるだけだ。
はっきりと言わない限り東条は何もしてくれないだろう。

「帝人、の……」
「俺の何だ」
「〜!!帝人の、帝人のっ」

具体的に言うのはどうも抵抗がある壱は言葉を詰まらせ最終的には身体を震わせて黙ってしまった。
東条はフッと笑って望むモノを与えようとしたが急に起き上がった壱に強く押された。
油断していたせいで簡単に東条の身体がベットの上に仰向けに倒れた。
その上に壱が跨る。
目を瞬かせる東条は上半身を中途半端に起こした状態で壱の行動に目を見開いた。

壱が自らの双丘を東条のモノに擦り付けたのだ。
これが欲しいと分かってもらう為に壱が考えた行動だったがそれがどんなに東条を煽るものかまでは考えていなかった。
壱の腰を掴んだ東条はそのまま自らの熱く猛ったモノの上に落とした。

「あっああああー!」

望んだモノを与えられた壱は身体を反らして声を上げた。
下から容赦なく突き上げられさらには自分の体重でいつもより奥まで到達している東条に 攻められる。

「ひあっ!お、おくっが」
「いいか。壱」
「お、おく」
「もっとだな」
「…ちがっ!あ、あっあ!」

上下にガクガクと揺さぶられ何度も奥を突かれもうとっくに満足している壱は奥は止めて と言いたかった。
体力の限界が来てぐったりとしている壱の中から東条が出ていった。
壱はベットの上に寝かされる。
やっと終わったとホッとしていると脚を開かされズンっとまったく衰えをみせない 東条がまた侵入して来た。
当然、壱は拒否する。

「や、やだぁ!もういい…っ!あ、や、ああっ!んあっ」
「壱、壱っ!愛している」

朦朧としてきた壱の耳に東条がお前は…?と聞いて来た気がした。
パクパクと口を小さく動かした壱だが声に出す事までは出来ずそのまま眠りの世界に 踏み込んだ。










朝、だるい腰を擦りながらリビングに行くとテーブルの上にメモがある。
それを手に取ると東条の字で『朝食は用意した。身体が辛かったら無理をせず休め』 と書かれている。
どうやら東条は外せない講義があったようで先に大学に行ったようだ。

「…朝食?」

初めて東条の手料理を見てから食材がもったいないとの理由で壱はあれから作らせなかった。
まさかまた炭の塊が…と思いながら見てみると。

「あれ?」

白い皿の上に握り飯のようなものがある。
三角でもなければ丸でもない指の跡がくっきりとついている米の集団といった方が正しいかもしれない 。
さらに言えば。

「でかい」

拳3つ分くらいの大きさだ。
壱はそれを見ている内にだんだんと笑いがこみ上がって来た。

「あははは!本当に帝人、料理ダメなんだなっ」

笑いながら両手で持ち上げる。
ずっしりとした重みを感じる。
大学で憧れの目を向ける学生たちはきっと知らない。
壱もそうだったように料理が出来ると勝手に思いこんでいるのだろう。
大きくて歪な握り飯にカプッと噛みついた。

ーガキンッ!!

「ーいっ!?硬っ!!」

歯を痛めた壱は口を手で覆い涙目になった。
かつて米があんな音をさせた事があっただろうか。
壱はゴトリと鉱物の塊を皿の上に戻した。
料理の基本的な事以前の問題かも…とその場で項垂れた。







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